父が亡くなって5年…私がすべて遺産相続したのですが、今になって姉から「遺留分をもらえるはずだ!」と請求されました。支払うべきでしょうか?
今回は、遺留分で渡す財産の割合やいつまで請求できるか、遺留分による税額の例などについてご紹介します。
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遺留分は最低限保障されている相続財産の割合
遺留分は、民法第1042条で「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける」と定められている相続の最低保障分のことです。
遺言書で「全財産を長男に譲る」と記載してあっても、ほかの兄弟姉妹以外の相続人は民法で定められた遺留分を請求できます。受け取れる遺留分の割合は以下の通りです。
・相続人が直系尊属(両親や祖父母など)のみのとき:3分の1
・相続人に直系尊属以外もいるとき:2分の1
例えば、姉と弟の子ども2人のみが相続人で6000万円の相続財産があり、遺言書で「弟(長男)に財産をすべて残す」と書かれていたとします。遺言書通りであれば、弟は全財産を受け取れます。しかし、遺留分の定めにより、姉は請求をすれば1500万円の相続財産を弟から受け取れるでしょう。
ただし、遺留分は権利のため、自分から請求しなければ受け取れません。
遺留分はいつまで請求できる?
遺留分を請求できる期間は民法第1048条で定められており「遺留分があることを知ってから1年」もしくは「相続開始から10年」です。期間を過ぎると時効が成立し、遺留分を請求できなくなります。
今回のケースでは、姉が父の死亡から5年後に請求しているため、相続開始時点で遺留分の存在を知っていれば請求できません。しかし、相続開始時点で遺留分の存在や相続財産そのものの存在を知らず、あとになって遺留分の存在を知ってから1年以内である場合は、時効になっていないため遺留分を請求できるでしょう。
遺留分を受け取ると相続税も課される
遺留分を受け取ったあとに遺留分の相続税の支払いが必要になるかは、最初に財産をすべて相続していた方が更正の請求を行うか次第です。更正の請求は払いすぎた税金の還付申請のことです。遺留分を請求されたことで相続総額が変わると、負担すべき相続税額も変わります。
以下の条件で姉が遺留分を請求したときの相続税額を求めましょう。
・6000万円の相続開始があった5年後に遺留分を請求
・相続人は姉と弟の子ども2人
まず、相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人数」のため、今回は4200万円です。基礎控除を差し引いた1800万円に対して税金が課されます。相続税の負担割合は、法定相続分通りに按分した場合の税額を求めたあとに、税額を合計して実際の相続割合に応じた相続人ごとの税額を計算します。
法定相続分通りだと2分の1ずつのため、900万円ずつ相続したとすると1人あたりの税率は10%、税額が90万円です。2人分の税金を合計すると、180万円になります。
次に、180万円の税金を実際に受け取った相続財産の割合で分けるため、姉は4分の1の45万円、弟は4分の3の135万円が支払う相続税額です。なお、当初相続財産をすべて相続した人が税金の支払いを終えており更正の請求もしなければ、遺留分の請求をした人に負担はありません。
時効になっていなければ遺留分を渡す必要がある
遺留分とは、民法により規定されている相続財産の最低保障割合です。時効になる前に請求をすれば、財産をすでに相続した相手から遺留分を受け取れます。請求を忘れていると受け取れません。
ただし、遺留分を請求すると、金額によっては相続税の支払いも発生します。今回の例では、遺留分として姉は45万円の相続税の納付が必要です。そのため、弟が更正の請求をすれば、相続財産は減るものの税額負担が軽くなるでしょう。
出典
e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第五編 相続 第九章 遺留分 第千四十二条 (遺留分の帰属及びその割合)、第千四十八条(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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