相続を「放棄」したいのですがお金がかかるって本当ですか? どのくらいの金額がかかるのでしょうか?
配信日: 2025.05.08

例えば、被相続人の資産がプラスの資産よりマイナスの負債が多いような場合に、負債の承継を回避するためなどに使われます。
本記事では、相続放棄の手続きの方法や費用などについて確認していきます。

執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
相続放棄の手続きの流れ
相続放棄は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内と期限が定められており、これを「熟慮期間」といいます。ただし、財産を調べるのに時間を要する場合などには、相続放棄の期間伸長の手続きをすることもできます。
3ヶ月という期間は、思った以上に短く、相続開始から葬儀、法要などに忙しく対応していると、いつの間にか期限を迎えてしまったなどの事例をよく聞くことがあります。また、その間に被相続人の財産(プラス、マイナス)を全て把握することが困難な場合もあるでしょう。
ご自身で相続放棄の手続きを進めることが難しい場合や、判断に苦慮する場合などには、弁護士や司法書士、税理士などの専門家に早めに相談することをお勧めします。ただし、その場合には通常依頼のための報酬(費用)がかかります。
ご自身で手続きを進める場合の相続放棄の手続きの流れは、以下のとおりです。
(1)相続放棄申述書をはじめとする必要書類の準備
(2)家庭裁判所への申述(相続の開始を知った日から3ヶ月以内)
(3)家庭裁判所から届く照会書の返送
(4)相続放棄申述受理書の受領
相続放棄にかかる費用
相続放棄は、個々の相続人が単独で申述することができます。また、被相続人の資産をプラスの範囲内でマイナス分も承継する「限定承認」は、相続人全員で家庭裁判所に申し出る必要があります。
ご自身で相続放棄の手続きを進める場合、一般的には以下のとおり3000円程度の費用がかかります。
(1)収入印紙代:800円(申述人ひとりにつき)
(2)郵便切手代:約400~500円(管轄の裁判所によって異なる)
(3)被相続人死亡の記載がある戸籍謄本:750円
(4)被相続人の住民票除票(または戸籍の附票):300円
(5)申述人の戸籍謄本:450円
上記の手続きを弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合には、一般的には別途費用がかかります。正確な費用は個々の専門家に確認する必要がありますが、申述人ひとり当たり数万円程度の費用がかかるようです。
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断
相続放棄に関するよくあるトラブル
相続人の範囲について、被相続人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
●第1順位
被相続人の子
●第2順位
被相続人の直系尊属(父母や祖父母など)
●第3順位
被相続人の兄弟姉妹
前述のとおり、相続放棄をした場合、その人は初めから相続人とならなかったものと見なされます。その場合に、次順位の相続人がいると、相続権がその人に移ることになります。
相続放棄をした人が、「私は初めから相続人ではないのでこの相続は全く関係ない」として、次順位の相続人に伝えていない場合などに思わぬトラブルとなるケースもあります。次順位の人が全く想定していなかった状態で、突然相続人となることに困惑する恐れや、ましてや多額の負債を思いもよらぬタイミングで負うこととなるケースなどもあり得ます。
また、2023年4月施行の民法第九百四十条では、「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない」として、たとえ相続放棄しても全く関係ないとはいえず、一定の管理義務(第三者に迷惑をかけた場合などに責任を問われる恐れがある)が生じる場合があることを明確としています。
まとめ
相続放棄の手続きは、申述人が単独で実施することができます。ただし、いったん相続放棄を選択した場合には取り消すことができません。相続や法律などの専門的な知識のないままに手続きを進めてしまうことで、必要書類の不備や却下となってしまうケースもあり得ます。結果として、手続きが遅延してしまうこともあるでしょう。
相続放棄を選択することに迷いがある場合や資産の調査などに時間を要する場合などには、早めに専門家のアドバイス、支援を受けることをお勧めいたします。
出典
デジタル庁 e-GOV 法令検索 民法
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー