亡くなった母の通帳から、なぜか「生前に妹が毎月10万円引き出していた」履歴が……。これは贈与になるのでしょうか?

配信日: 2025.08.08
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亡くなった母の通帳から、なぜか「生前に妹が毎月10万円引き出していた」履歴が……。これは贈与になるのでしょうか?
親族が亡くなった場合、その方の遺産相続は好むと好まざるにかかわらず、行わなければなりません。そのときに、今回の「亡くなった母親の預金を子が引き出していた」ケースなど思わぬことが発覚し、検討しなればならない場合があると思われます。
 
本記事では、贈与とは何か、どんな場合に贈与税がかかるのか、そして、亡くなった母親の生前に身内がお金を引き出していた場合、贈与になるかどうか解説します。
堀江佳久

ファイナンシャル・プランナー

中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。

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贈与とは何か? どんな場合に、贈与税がかかるのか?

贈与とは「当事者の一方が他方に対して、無償で財産を与える契約」です。贈与は「契約」なので、双方の合意が必要となります。贈与を行った場合には、基本的に贈与税を納付する必要があります。
 
つまり、贈与税とは、財産を取得したときにかかる税金のことをいいます。ただし、個人ではなく法人から財産を取得した場合には、贈与税ではなく「所得税」となります。
 
贈与税の課税方式には、次の2つがあります。
 
1. 暦年贈与
 
1年間(その年の1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の価額の合計に贈与税がかかります。
 
具体的には、取得した合計額から暦年課税に係る基礎控除額110万円を引いた金額に対して贈与税がかかります。したがって、取得した額の合計が110万円以下なら贈与税はかかりません。
 
2. 相続時精算課税
 
60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに財産を贈与した場合、所定の手続きを行うことによって選択できる贈与税の制度です。
 
贈与税の額は、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計から、基礎控除額110万円を控除し、限度額2500万円である特別控除額を控除した後の金額に、一律20パーセントの税率を乗じて算出します。
 
なお、この制度を選択した場合には、暦年贈与の制度を活用することはできませんので、注意してください。
 

亡くなった親の預金を子が引き出していたケースは「贈与」になるのか?

贈与とは、当事者の一方が他方に対して、無償で財産を与える契約です。
 
したがって、子がなくなった親のお金を引き出していた場合、相談者の妹と亡くなった母との間で、どのような合意があったのか、お金の使い道はどうだったのかが、贈与とみなされるのか否かの争点となります。
 
以下、今回の妹のケースはどうなるかを解説してみます。
 
1. 贈与とみなされる可能性が高いケース
 
亡くなった母親が、「妹にお金をあげたい」という明確な意思表示をしていた、あるいはそのように解釈できる状況があった場合には、贈与となる可能性が高いです。
 
しかし、すでに亡くなった方の意思表示の有無を証明することは難しいかもしれません。また、引き出した10万円が妹の生活費や娯楽費など、妹自身の用途に充てられていた場合、贈与とみなされる可能性が高いです。
 
2. 贈与とみなされない可能性のあるケース
 
毎月引き出された10万円を妹さんが母親の代理人として、母親自身の生活費(食費、光熱費、家賃など)や医療費、介護費用などに充てるために引き出していたのであれば、贈与とはみなされません。この10万円は母親のためのものだからです。
 
もしくは、妹が一時的に母親のために立て替えていたお金の清算として引き出されたものであれば、贈与ではありません。
 
以上見てきたように、贈与となるかどうかは、当事者同士の約束の内容やお金の用途がポイントとなります。
 
したがってまずは妹に、亡くなった母親とどのような約束をしていて、何のために、そしてどのようにお金を使ったのか、詳しく確認する必要があります。そして双方の合意の証拠として、お金の使途が分かるレシート、領収書、医療費の明細、介護サービスの契約書などがあるとよいでしょう。
 

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まとめ

「贈与」とは、双方の合意の下、当事者の一方が他方に対して無償で財産を与えることをいいます。そして、贈与をした場合には贈与税を納付する必要があります。
 
本記事で取り上げたようなケースで「贈与」になるかどうかは、妹と母親の合意内容と、お金の使用目的により判断されます。まずは、妹に事実確認をしましょう。
 
なお、今回のケースは相続が絡んでいるので、贈与に当たるかどうかの法的な判断に加えて、引き出された金額が相続財産に含まれるかの判断をする必要があります。したがって、相続人間で合意が難しいようであれば、トラブルを防ぐためにも、税理士や弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。
 

出典

国税庁 贈与税がかかる場合
国税庁 NO.4103 相続時清算課税の選択
法務省 私法と契約
 
執筆者 : 堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー

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