祖父が亡くなり、小規模な葬儀をしました。思ったよりも参列者が多く「香典」の総額が葬儀費用を上回った…… 差額に税金はかかりますか?

配信日: 2025.08.19
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祖父が亡くなり、小規模な葬儀をしました。思ったよりも参列者が多く「香典」の総額が葬儀費用を上回った…… 差額に税金はかかりますか?
葬儀を行い、参列者から香典を受け取る場合、香典には税金はかかるのでしょうか? また、葬儀費用を上回った場合、差額に課税はあるのか確認していきましょう。
柴沼直美

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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香典には“原則として”税金はかからないが……

香典は、日本の慣習として行われる「お悔やみの気持ちの表現」として渡されるもので、所得税や相続税の課税対象には「原則」なりません。
 
国税庁の見解でも、「社会通念上相当と認められる香典、花輪代、供物料等は非課税」とされています。つまり、常識的な金額・目的で受け取った香典については、税務申告の必要はないと考えてよいでしょう。
 

葬儀費用を上回った差額は?

では、今回のご相談のように“香典の総額 > 実際の葬儀費用”となった場合、その「差額」はどう扱われるのでしょうか?
 
基本的には、非課税のままと認識して大丈夫です。香典はそもそも葬儀費用の補助という性質が強く、余剰が出たからといって、それだけで課税対象になるわけではありません。
 
例えば、香典を喪主(遺族代表者)が受け取って葬儀費用に充て、差額が出た場合は原則非課税です。また、香典帳や香典返しなどの必要経費を含めて精算した結果差額が出た場合であっても、 差額を相続財産とみなす必要はありません。
 

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注意すべきケース

注意すべきケースとしては、以下のような例が考えられます。
 
1つ目は、香典の名目・渡し先が遺族ではなく「事業者(寺院・葬儀社など)自身」であった場合」に注意が必要になります。その場合、「雑収入」として所得税の対象になる可能性があります。
 
具体的には、以下のようにお布施・香典が「寺院や葬儀社名義」で渡された場合などは、誤解を招きやすいケースです。

宛名:〇〇寺住職様、〇〇葬儀社様 など
 
目的:葬儀の運営や読経への謝礼・サービス提供に対する対価
 
処理:寺院や葬儀社が直接金銭を受け取る

上記のように「業としての対価」「サービス報酬」とみなされる場合は、所得税法上の「雑収入」として課税対象となる可能性があります。寺院が受け取った「お布施」や「読経料」は、宗教法人でないかぎり課税対象です。葬儀社が直接「香典」名目で金銭を受け取った場合も、それが「施行料に含まれる」ものであれば、収入計上すべきということになります。
 
2つ目としては、故人の遺族が受け取った香典だったとしても、その金額が、数百万円単位、数千万円単位など明らかに高額かつ異常な場合は、税務署から確認が入る可能性があります。
 
3つ目として、香典の差額を相続人で分けた場合、実質的に「財産分与」とみなされると相続税の対象となる可能性があります。
 

まとめ

ここまで確認してきたように、香典は基本的に“非課税”であり、余った差額についても税金はかかりません。ただし、「高額すぎる」「収入として扱われる」「相続財産に加える」などの場合は注意が必要です。
 
遺産分割に関係させないよう、香典は「喪主の預かり金」として処理するのが望ましいということ、そして家計管理の一部として、香典の出入りも記録しておくということを心掛けておくとよいでしょう。
 

出典

国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
 
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

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