父が亡くなって、”母と私の2人”が相続人です。父名義の預貯金を私名義に変更する予定ですが、このとき「相続税」はかかるのでしょうか?
本記事では、相続税がかかる場合とかからない場合の違いを整理し、注意点や対策について解説します。
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名義変更しただけで相続税はかかるの?
故人名義の口座を母や子どもの名義に変更するだけで、すぐに課税されることはありません。ただし、その預金が実際には「被相続人の財産」と判断される場合には、名義変更後であっても相続財産とみなされ、相続税の対象となることがあります。つまり、相続税がかかるかどうかは、名義ではなく「相続で得た財産の総額」が基準になるのです。
相続税の計算では「基礎控除」という非課税枠があり、計算式は次のとおりです。
・基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
今回のケースでは相続人が母と私の2人なので、控除額は 3000万円+600万円×2=4200万円 です。基本的には財産の合計額が4200万円以下であれば相続税はかからず申告も不要ですが、例外として特例適用のため申告義務が残る場合もあります。
このため、名義変更の有無よりも「遺産の総額」が相続税の有無を決める大きなポイントとなります。
“名義預金”と判断されるとどうなる?
注意が必要なのは「名義預金」という考え方です。名義預金とは、通帳や口座の名義人と実際にお金を出した人が異なる場合に使われる言葉です。たとえば、子ども名義の口座に父が入金し、管理も父が行っていた場合、そのお金は「子どもの財産」ではなく「父の財産」とみなされます。
相続税の計算においては、このような名義預金も相続財産に含められます。つまり、「父の口座を私名義に変えた」ように見えても、もともと父のお金であれば相続財産として扱われるのです。
国税庁は、以下の点を確認して名義預金かどうかを判断します。
・通帳やキャッシュカードを誰が管理していたか
・預金の原資(給料・退職金など)が誰の収入か
・名義人本人が入出金の意思を持っていたか
もし「形式だけ子どもの名義だった」という預金が見つかれば、相続税の対象になるため注意が必要です。
相続税がかからない基準と非課税枠とは?
では、実際にどのようなケースで相続税がかかるのでしょうか。ポイントは次の2つです。
1. 財産の合計が基礎控除を超えているかどうか
相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。財産の総額がこの額を超えると相続税が発生し、例えば相続人が2人なら基礎控除は4200万円となります。預金、不動産、保険金などすべての財産合計が対象です。
2. 死亡保険金の非課税枠
生命保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、法定相続人が2人なら1000万円までは非課税です。受取った保険金がこの枠を超える場合、超過分に対して相続税が課されます。
相続財産には基礎控除のほかに、小規模宅地等の特例や配偶者控除など複数の優遇制度があり、控除や非課税枠を適用することで相続税がゼロになるケースも少なくありません。
まとめ
父名義の預貯金を母や私の名義に変更すること自体で、相続税が自動的にかかるわけではありません。相続税の有無は「遺産総額が基礎控除を超えるかどうか」で決まります。
ただし、名義と実質が異なる「名義預金」と判断されれば、その預金は相続財産として課税対象になります。証拠として残せる書類(給与明細、振込記録など)をしっかり保管し、誰の資金かを明確にしておくことが重要です。
相続の手続きは感情面のトラブルも起こりやすいため、財産額が控除枠に近い場合や名義預金の疑いがある場合には、税理士や専門家に相談することをおすすめします。事前に正しく理解し、余計な税負担や家族間のもめ事を避けることが、安心した相続への第一歩となるでしょう。
出典
国税庁 財産を相続したとき
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー