両親が実家を売却して施設に入る予定です。実家じまいにどれくらいお金がかかるものなのでしょうか? 費用を抑える方法も知りたいです。
もし親が事前に実家の処分をしていれば問題ありませんが、そうでない場合は、子ども自身が実家じまいに関わるさまざまな手配や作業を行わなければなりません。
それでは、実家じまいを行う際には、どんな作業や手配が必要で、費用はどのくらいかかるのでしょうか。本記事で解説します。
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。
実家じまいに苦労する点は?
実家じまいは、時間と労力がかかることが少なくありません。
例えば、次のようなことで苦労することがあります。
1. 実家にある親の荷物や大型家電品などの処分
2. 売却先を見つけること
3. 売却先が見つかるまでの維持・管理
1. 実家にある親の荷物や大型家電品などの処分
前もって親が処分していれば別ですが、そうでなければ実家に残された親の荷物や、洗濯機、冷蔵庫などの大型家電品をどのように処分するのかを検討しなければなりません。
2. 売却先を見つけること
売却先を見つけるには、不動産仲介会社に依頼することが一般的ですが、実家の所在地や条件(がけ地や農地など)によっては、売却先探しに難航することもあります。
3. 売却先が見つかるまでの維持・管理
よほどの好立地、もしくは事前に購入希望者がいる場合を除き、売却先はすぐには見つかりません。その間、空き家となった実家をそのままにしておくと、防犯や景観上、問題が起きかねません。どのように維持・管理するかも考えておく必要があります。
実家じまいの作業・手配と費用は?
実家じまいにかかる費用には、次のようなものがあります。
1. 不用品処分、引き取りにかかる費用
2. 家の維持・管理費用
3. 解体費用
4. 家の売却にかかる費用
1. 不用品処分、引き取りにかかる費用
実家に残された不用品を全て自分で処分するのは大変です。その場合、処分業者に依頼するのが一般的ですが、当然費用がかかります。いくらかかるかは、次の内容によって変わります。
・依頼する業者
・処分する不用品の量
・実家の場所や、運び出し用トラックの駐車スペースの有無
・間取り、部屋の広さ
・引き取り家電がリサイクル、もしくは買い取り対象かどうか
・その他(エアコンなど据え付けの設備や、スズメバチ等害虫の有無など)
あくまで一例ですが、目安として、中規模程度の一軒家(家屋面積100平方メートル程度)で、ひと通り自分で整理・片付けを行った後の処分費用は図表1のとおりです。
図表1
出典:筆者調査により作成
なお、業者に依頼する場合は、事前に実家を内覧してもらい、見積書を作成してもらうのがよいでしょう。また、自分で業者を探すのに自信がない場合は、不動産仲介会社を通じて紹介してもらうのも手です。
2. 家の維持・管理費用
実家をすぐに処分できなかったり、売却までに時間がかかったりする場合は、防犯や景観上の対策が必要になります。遠方に住んでいるなどの理由で自分では難しい場合は、業者に依頼するのが無難でしょう。
費用の目安としては、草むしりや家の簡単な清掃、通水・換気などで月1万円前後が目安です。
サービス内容は業者によってさまざまですが、オプションでさらに手厚いサービスを受けることも可能です。
3.解体費用
極めて古い建物などの場合は、さら地にしたほうが売却をスムーズに進められることもあるため、解体も視野に入ってくるでしょう。
解体費用は、前述の中規模程度の一軒家(家屋面積100平方メートル程度、木造)で、90~150万円といったところです。費用は、実家の住所、立地や築年数、隣家との距離、前面道路の広さなどによって変わります。
もし、解体が必要になった場合、解体費用は実家じまいのなかでも比較的高額になりやすい項目の一つです。したがって、そもそも解体が必要かどうかは、売却を依頼する信頼できる不動産業者を通じて解体業者から複数見積もりを取るなど、慎重に検討することをお勧めします。また、自治体の補助を利用できる場合もあります。
4. 家の売却にかかる費用
家を売却する費用には、以下のものがあります。
(1)不動産仲介手数料
家の売却を不動産仲介会社に依頼し、家が売れた場合にその報酬として支払う費用です。売却代金が400万円超の場合、法律によって代金の3%+6万円までと定められています。
例えば売却代金が2500万円の場合、仲介手数料は「2500万円×3%+6万円+消費税」で89万1000円が上限になります。
もしこれを超える金額を請求された場合は、宅地建物取引業法に違反している可能性があるため注意が必要です。
(2)測量費用
隣家との境界が不明だったり、または境界標があっても壊れていたりした場合などは、売却金額の確定前に確定測量が必要になる場合があります。
費用は、隣地の件数や土地形状の複雑さによっても変わりますが、目安として20~90万円といったところでしょう。
(3)登記費用、印紙代
住宅が売れた場合、その所有権を売り主から買い主へ移転するには登記が必要になります。登記は自分で行う、もしくは司法書士へ依頼することになりますが、この費用は買い主が通常負担します。
しかし、元々の登記簿に記載された住所や氏名が現在のものと違っていたり、住宅ローンがあったりした場合は、売り主自身で登記費用を負担しなければならない場合があります。
もし、これらの手続きを司法書士に依頼した場合は、費用は依頼先によって異なりますが、おおむね数万円程度が目安です。
また、不動産売買契約書に貼る印紙代もかかります。売買代金が5000万円以内であれば、おおむね数千~1万円がかかります。
(4)税金
税金とは、土地や建物を売って利益が出た場合にかかる所得税や住民税です。
いくら利益が出るかは、購入時(相続の場合は、相続前の元々の購入額)の価格と売却した時の価格、不動産の所有期間などに応じて変わります。
ただし、いわゆるマイホーム買い換え時の3000万円特別控除など、税額を抑える仕組みがあります。複雑な点も多々あるため、不動産仲介会社に売却を依頼する場合は、契約している顧問税理士などに相談するのもよいでしょう。
なお、親名義のまま住宅を売却した場合は、税金は親が負担します。しかし、親自身で納税手続きができない場合は、子が資料を集めたり、申告書の作成(またはその手配)をしたりしなければならない負担が生じます。
実家じまいの費用を抑える方法は?
実家じまいの費用を抑えるには、以下の方法を検討しましょう。
1. なるべく事前に自分で物を処分する、またはクリーニングしておく
物の処分を業者に依頼する場合、その費用は家に残された物の量によって変わってきます。遠方に住んでいる場合は通うのも大変ですが、業者へ依頼する前に、自分で処分できる物は処分しておいたり、クリーニングしたりしておくことで、費用を抑えることができます。
2. 早めに売却することを検討する
思い入れのある実家であれば、解体や売却などに気後れするのも仕方ありません。しかし、空き家の状態が長引くと、管理・維持費用や固定資産税がかさみます。売却や処分は早ければ早いほど、費用の節約につながります。
3. 見積もりは複数社から取って比較検討する
実家じまいの作業や実家の売却を依頼する場合は、複数の業者から見積もりを出してもらい、比較検討するようにしましょう。ただし、ただ安いからといって選ぶのではなく、信頼できる業者か、担当者は親身に相談に乗ってくれるかなど総合的に検討したうえで判断してください。
実家じまいへの心構えとは?
ここまで、実家じまいにはどんな作業や手配が必要か、また費用とその抑え方について解説しました。ご紹介したとおり、多くの作業を要し、場合によっては多額の費用が発生することが分かります。
まだ実家じまいに直面していない方は、親と実家じまいについて、事前に話し合っておくことをお勧めします。
すでに直面している方は、本記事などを参考に、どの作業を自分で、もしくは他者に依頼して進めるかを考えつつ、不動産売買の専門家等に相談しながら進めるようにしてください。
執筆者 : 酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。
