現在82歳、独身です。親の遺産と自分の貯金を合わせて2000万円ほどあるのですが、私の死後、このお金はどうなるのでしょうか?

配信日: 2026.02.27
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現在82歳、独身です。親の遺産と自分の貯金を合わせて2000万円ほどあるのですが、私の死後、このお金はどうなるのでしょうか?
「独身で子どももいない。自分が亡くなった後、今あるお金はどうなるのだろう」
 
82歳になると、老後資金の心配よりも、「自分が死んだ後のお金の行き先」が気になり始める方は少なくありません。遺産が宙に浮いたり、望まない形で処理されたりすることは避けたいというのが人情です。
 
日本の法律では、相続人がいない場合のお金の行方は、すでに明確に決められています。
 
本記事では、何も対策をしなかった場合と、準備をした場合とで何が変わるのかについて解説します。
柴沼直美

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

何もしなかった場合、お金は最終的にどうなるか

法定相続人が1人もいない場合、遺産は最終的に国のものになります。これは民法で定められており、配偶者・子・孫・親・兄弟姉妹など、いずれの相続人も存在しない、または全員がすでに亡くなっている場合が該当します。
 
この場合でも死亡後すぐに国に移るわけではありません。家庭裁判所が関与し、「相続財産管理人の選任」や「債権者・受遺者への公告」が行われ、一定期間(原則10ヶ月以上)の手続きを経たうえで、残った財産が国庫に帰属します。2000万円という金額でも例外はありません。
 
なお、自分には法定相続人はいないからといって、自ら家庭裁判所に出向いて相続財産管理人の選任を請求することはできません。相続財産管理人はあくまで「亡くなった後に相続人がいない場合の制度」であり、生前に本人が申し立てることはできません。
 
ここまでの話をまとめると「何も決めずに亡くなる=国に寄付する形になる」となります。
 

「お世話になった人」に自動的に渡ることはない

よくある誤解に、「長年付き合いのある親戚や、面倒を見てくれた人がもらってくれるだろう」という考えがあります。しかし、血縁や婚姻関係がない人には、原則として相続権はありません。
 
たとえ、長年介護をしてくれた知人、身のまわりの世話をしてくれた近所の人や、内縁関係に近いパートナーがいたとしても、遺言書がなければ法的には1円も渡らないのが原則です。
 
「気持ちは分かってくれるはず」という期待は、法律の前では通用しません。前述したとおり、生前に自分が相続財産管理人の選定に関わることもできないとなると、気持ちを「形として実現させる」には、事前準備が必要になります。
 

お金の行き先を自分で決めるには「遺言書」が必須

では、事前準備としてどんなことができるのでしょうか。生前に講じることができる現実的な手段は「遺言書の作成」です。遺言書を作成すれば、2000万円の行き先は本人の意思で自由に指定できます。特定の親戚、友人・知人、介護や医療でお世話になった人や福祉団体・NPO法人・自治体など、法定相続人でなくても問題ありません。
 
独身で相続人がいない場合、遺留分(最低限保証される取り分)も存在しないため、全額を自由に配分できます。遺言書のおすすめは「公正証書遺言」です。公証役場で作成するため、形式不備で無効になるリスクが極めて低く、紛失や改ざんの心配もありません。
 

判断能力が低下する前に備えよう

82歳という年齢では、将来的な認知症リスクも無視できません。遺言書は「内容を理解し、自分の意思で書いている」ことが前提です。判断能力が低下すると、遺言そのものを作成できなくなる可能性があります。
 
そのため、以下を元気なうちにまとめて行うのが理想的です。
 

・遺言書の作成
・必要に応じて任意後見制度の検討

 
「まだ早い」ということはなく、今が最も「若くて元気な」タイミングだと認識しましょう。
 

「国に残す」か「思いを残す」か

何も準備をしなければ、2000万円は最終的に国庫に帰属します。そのこと自体が悪いというわけではありませんが、「誰かの役に立てたい」「自分の人生の延長として使ってほしい」という思いがあるなら、遺言書の作成は必須です。
 
遺言書は「死の準備」というより、人生の総仕上げととらえ、お金の行き先を自分で決めておくことが、残される社会や人への最後の意思表示ともいえるでしょう。
 

出典

デジタル庁 e-Gov 法令検索 民法 (相続財産の保存)第八百九十七条の二
 
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

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