両親から「生前贈与」、節税には、一度に受け取るのと、毎年少しずつもらうのとではどちらが有利?
贈与は親が生きている間に財産を子どもたちに無償で渡す合意をすることです。贈与にはいくつかの方法がありますが、ここでは「生前贈与」について学んでみましょう。
ファイナンシャルプランナー CFP
家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。
贈与と相続
贈与とは、本人が生きている間に、他者に自分の財産を無償で渡し、相手が受け取ることを合意することです。贈与には、暦年贈与・定期贈与・負担付贈与、死因贈与などの種類があります。
一方、相続は本人(被相続人)が死亡後に、法定相続人や遺言書に基づく相続人に被相続人の財産を相続させることです。
贈与には贈与税、相続には相続税がかかりますが、この2つの税は課税するしくみも異なっており、一般的には贈与税は相続税より割高になることが多くなります。そのため、贈与には、さまざまな特例があり、子どもや孫に財産を贈与する際に節税できることになっています(※)。
暦年課税を利用した生前贈与
暦年課税とは、個人から贈与された財産額に対して、1年間(1月1日~12月31日)分を計算して、贈与税が課税されることです。暦年課税には年間110万円の基礎控除があります。
したがって、年間110万円までの贈与を受けた場合は、贈与税はかかりません。一般的に、これは暦年贈与枠の活用といわれています。
仮に、暦年贈与枠110万円を利用して10年間贈与を続けると、1100万円が非課税で贈与できることになります。贈与する子どもが2人いる場合は、子ども1人あたり毎年110万円まで非課税なので、10年間続ければ1人1100万円、2人で合計2200万円まで贈与税がかからない計算になります。
暦年贈与枠を利用する場合の注意事項
暦年贈与枠を利用する場合は、以下の点に注意する必要があります。
・毎年贈与契約書を作成する
(あらかじめ「5年間、毎年110万円を贈与する」と一括で約束していると、定期贈与とみなされ総額に課税されるおそれがある)
・金融機関の振り込みを利用する
・贈与を受ける本人が日常的に利用している口座が好ましい
(名義だけ贈与を受ける人の口座は名義預金と判断される懸念がある)
・110万円を超える部分は贈与税申告をする
■相続税 生前贈与の加算のルール変更
2023年の相続税法の改正により、暦年贈与した贈与額が相続時から7年さかのぼって相続財産に加算されることになりました(従来は3年)。なお、経過措置により段階的に延長されます。
したがって、贈与を受ける子どもたちが比較的若い場合や、孫や法定相続人以外に生前贈与をする場合は、暦年贈与は有効な節税策といえることになります。
相続時精算課税制度
生前贈与時の暦年贈与と並んで利用されるのが、相続時精算課税制度です。
相続税と贈与税では、課税の方式が異なるので一概にどちらが高くなるとはいえませんが、相続税と贈与税の基礎控除には差があり、相続税が有利になっています。
・相続税基礎控除(相続財産合計に対して):3000万円+法定相続人数×600万円
・贈与税(贈与を受ける個人ごとに):毎年110万円
相続時精算課税制度は、一定額まで贈与税を抑えつつ、相続時に贈与分を相続財産に加算して精算する制度です。この制度を利用すれば、最大2500万円までの贈与について相続発生時まで、贈与税を先送りすることができます。
なお、同一の特定贈与者から同一の受贈者への贈与について、相続時精算課税を選択した後は、その贈与者からの贈与を暦年課税に戻すことはできません。
終わりに
生前贈与の財産を一度に受け取るのと、毎年少しずつ受け取る(暦年贈与)場合の税金は、相続時精算課税制度や暦年非課税枠を利用すると一定額までは非課税になります。
ただし、相続税との比較になるとさまざまなケースが想定され、実際のケースに当てはめてみないと結論は出せません。自身のケースに基づいて、計算してみるか専門家(税理士)に相談するのがよいでしょう。
出典
(※)国税庁 財産をもらったとき
国税庁 相続税のあらまし
国税庁 令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
執筆者 : 植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP