父の死後「葬儀代300万円」を引き出しました。“本人の葬式代”でも、税務署から「追徴課税の通知」が来るって本当ですか?“口座凍結前の引き出し”の注意点とは
葬儀費用は相続財産から控除できますが、領収書のない支出や余った現金の申告漏れは税務調査の対象です。本記事では、故人の口座引き出しに関する注意点や、使用用途として正当性を証明するための適切な管理方法を解説します。
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目次
口座凍結前の引き出しに注意!
親など家族が亡くなった直後には、お葬式や手続きのためにまとまった現金が必要になります。銀行は、預金者が死亡した事実を知ると口座を凍結して出金を停止するため、その前に急いで現金を引き出す人は少なくないでしょう。
しかし、国税庁や税務署は、亡くなった人の過去数年間にわたる預金口座の動きを正確に把握しています。2001年に納税者の申告に関する全情報を一元的に管理するコンピューターシステム「KOKUZEI SOUGOU KANRI(国税総合管理、通称KSK)システム」が導入されました。
亡くなる直前や直後に引き出された300万円という大金は、税務署のコンピューターシステムで即座に検知され、何に使われたのかチェックされる対象となるでしょう。
「亡くなった本人の葬儀代だから問題ない」といった勝手な判断は避けるべきです。使い道を客観的に証明できなければ、相続人が財産を隠し持っていると疑われる可能性があります。
葬儀費用として認められるものとは?
引き出した300万円のうち、相続税の計算で財産から差し引ける葬儀費用には基準があります。
お寺への読経料や戒名料、葬儀会社への支払い、火葬費用などは正当な控除対象として認められるため、安心して使えるでしょう。一方、香典返しの費用や初七日以降の法要にかかる費用、さらに墓石や仏壇の購入費用などは、葬儀そのものに直接関係しない支出とみなされ、控除の対象から外されます。
例えば、引き出した300万円のうち控除対象となる葬儀費用が200万円だった場合、残りの100万円は相続すべき現金財産として扱われます。この残金を申告に含めなければ、申告漏れとなるため注意が必要です。
領収書がないお布施の証明と余った現金の申告漏れに注意
葬儀にかかる支出のなかでトラブルになりやすいのが、お寺へ支払うお布施など領収書が発行されない出費です。しかし、領収書がないからといって、証明できないわけではありません。
いつ、誰に、何の目的で、いくら支払ったのかをノートやメモなどに詳細に記録しておけば、税務署に対する証明資料として認められます。反対に、こうした記録を一切残さず現金を使ってしまうと、税務調査が入った際に使い道を証明できず、個人的に流用したとみなされる恐れがあるでしょう。
また、葬儀費用を支払った後に余った現金は、相続財産に計上しなければなりません。これを怠ると、過少申告加算税や延滞税といったペナルティーが課される可能性があります。
現金の流れを明確にしながら払戻し制度を活用しよう
税務署からの追徴課税を防ぐためには、引き出した現金の流れを明確にしておくことが重要です。引き出した300万円は専用の管理用ファイルを作成し、葬儀関連の請求書や領収書、お布施のメモなどをすべて時系列で保管しておいてください。
また、現在は口座が凍結された後であっても、遺産分割協議を待たずに一定額までを引き出せる「預貯金の払戻し制度」が整備されています。
各法定相続人は、亡くなった人の口座預金額の3分の1に、自分の法定相続分を掛けた金額で、かつ1つの金融機関につき上限150万円までを引き出すことが可能です。例えば、相続人が長男と長女の2人で1つの口座の預金額が500万円だった場合、「500万円✕1/3✕1/2=83万円3333円」となります。
慌てて凍結前に大金を引き出して税務署に疑われるよりも、こうした公的な制度を活用しながら、透明性の高い資金管理を行うことが結果的に自身を守ることにつながるでしょう。
引き出した現金の使い道はすべて記録に残すこと
亡くなった人の口座から引き出した300万円の葬儀代は、適切に申告しなければ追徴課税の対象となります。葬儀費用として控除できる項目とできない項目を把握し、お布施などの領収書が出ない支出は詳細なメモを残すことが重要です。
また、支払いを終えて余った現金は、相続財産として忘れずに申告してください。公的な払戻し制度を活用しながら税務トラブルを防ぐためにも、現金の流れを明確に記録しておくようにしましょう。
出典
国税庁 No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
一般社団法人全国銀行協会 遺産分割前の相続預金の払戻し制度
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
