亡くなった父に「金額不明の借金」があったそうです…。相続財産もあるそうなのですが、“相続放棄”はしない方がよいのでしょうか?
負債の総額が分からないときは、相続放棄だけでなく、財産の範囲内で負債を相続する方法(限定承認)も選択肢のひとつです。今回は、負債の金額が分からないときの対処法や、限定承認の概要、また限定承認をしたときの相続税などについてご紹介します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
負債の金額が分からないときはどうすればよい?
負債の金額が分からない場合、亡くなった人の通帳や郵便物などを確認しましょう。
負債がある場合、借用書や返済の履歴、請求書など負債の証拠が見つかる可能性があるためです。必要に応じて、信用情報機関への開示請求も行うとよいでしょう。
おもな信用情報機関は、全国銀行協会、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、株式会社日本信用情報機構(JICC)です。信用情報機関へ情報開示請求を行うと、クレジットカードの履歴や返済状況などを確認できる可能性があります。
ただし、情報開示請求をできるのは、基本的に法定相続人のみです。JICCのみ、法定相続人か2親等以内の血族の人が請求できます。父親が亡くなった場合、子どもは法定相続人となるため、情報開示請求が可能です。
しかし、祖父母が亡くなったケースで情報開示請求をしたい場合、法定相続人ではない孫はできないケースもあるため注意しましょう。
また、信用情報機関ではクレジットカードや消費者金融などの履歴を把握するのみであり、税金や公共料金の滞納は分かりません。これらの滞納は、滞納に対する通知が届いていないか探す必要があります。
自分だけでは分からない場合は、司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。
限定承認も選択肢のひとつ
今回のケースのように調べても負債額が分からない場合、相続放棄ではなく限定承認を行う方法もあります。最高裁判所によると、限定承認とは「相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ」ことです。
つまり、預貯金や不動産といったプラスの財産と借金や滞納といったマイナスの財産を比較し、マイナスの財産が多い場合でも、相続した財産の範囲内でのみ返済すればよいとされています。自分の財産から追加で補う必要はありません。
限定承認のメリットとして、負担できる以上の負債を抱えずに済む点が挙げられます。プラスの財産の範囲内で相続するため、負債があっても自分が持っていた財産は守れます。また、相続放棄ではすべての財産を相続できなくなりますが、限定承認だとプラスの財産を相続できる可能性も残ります。
一方、デメリットとして限定承認には相続人全員が共同での申述が必要です。相続の内容によっては、ほかの相続人が限定承認を拒否する可能性があります。
また、限定承認における不動産の相続は、亡くなった人が相続人へ不動産を売ったと判断されます。不動産の金額によっては、亡くなった人に譲渡所得税が課されることとなり、場合によっては相続人が代わりに亡くなった人の確定申告をする「準確定申告」が必要となります。
さらに、手続き自体も用意する書類が多く難しいと言われているため、メリットとデメリットをよく理解したうえで、限定承認にするか判断しましょう。なお、限定承認の申述期限は、自分のために相続が開始したのを知ったときから3ヶ月以内です。
限定承認した場合の相続税
限定承認でも、プラスの財産の方が多く、かつ基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人数)も超えている場合は相続税の申告が必要です。
負債が想定よりも少ない、プラスの財産が多いときなどに課税される場合があるため、申告と納付を忘れないようにしましょう。今回は、次のような条件で相続税額を計算しましょう。
・負債が2000万円
・プラスの財産が7000万円
・法定相続人数は子ども1人
・遺贈を受けている人もおらず、遺産を受け取ったのは法定相続人の子どものみ
まず、相続税の計算ではプラスの財産からマイナスの財産を差し引いてから、基礎控除を差し引きます。今回の条件で計算をすると、「7000万円-2000万円-3600万円」で1400万円です。
そのため、1400万円が課税対象となります。このとき、相続税率は15%、控除額は50万円のため、相続税額は160万円になります。
相続放棄ではなく限定承認にするとプラスの財産の範囲内で相続できる
負債の金額が分からないときは、まず通帳や郵便物を確認したり信用情報機関へ情報開示請求をしたりして、負債の内容を把握できるか確認してみましょう。それでも分からない場合、相続の限定承認という方法があります。
限定承認はプラスの財産を超えない範囲で負債を相続できるため、自分の財産から負債の負担をする必要がありません。ただし、相続人全員で申述が必要など、デメリットもあるため、専門家に相談するなどしてよく考えてから限定承認にするか、相続放棄をするか判断するとよいでしょう。
出典
最高裁判所 相続の限定承認の申述
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和7年度版) 財産を相続したとき
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
