代償分割について―生命保険の活用
配信日: 2020.01.28 更新日: 2023.09.13
代償分割はどのようなケースで行われるのかをはじめ、代償分割へ向けた資金準備に生命保険を活用する際の注意点等について解説してみたいと思います。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
代償分割はどのような場合に必要か?
例えば、2人の子が相続人である中小企業のオーナーがいて、会社の株式、土地や建物を後継者である長男に相続させたい場合です。会社に関する財産をすべて長男に相続させると次男に対する相続財産がほとんどなくなってしまいます。
しかし、会社の株や土地・建物の一部を会社の経営に携わらない親族に相続させると、会社の経営に支障をきたすことが起こり得ます。
ではこの場合どうするのでしょうか?長男が会社に関する財産をすべて相続する代償として、長男が代償交付金として、自らが所有する現金を次男に渡すことで相続問題を解決する方法があります。
上記以外にも次のような場合も考えられます。被相続人の相続財産が、現在住んでいる住居しかなく、長男夫婦と同居している場合、被相続人には現金資産がないので、次男への相続分が渡せません。この場合も長男が次男に対し代償交付金を渡すことにより、相続問題を解決することができます。
代償分割をするための資金はどうするか?
では、代償分割のための資金はどう準備したらよいでしょうか?長男に現金資産がある場合はそれを使えばよいのですが、そうでない場合は生命保険を活用するのも有効です。
生命保険を活用した方法にはいくつかありますが、いずれも被相続人(父)を被保険者とします。
【方法1】契約者:長男、被保険者:被相続人、保険金受取人:長男
保険料は長男が支払い、被相続人である父の死亡保険金を原資として長男から次男に現金で代償交付金を支払う方法です。この場合、長男が受け取った保険金は一時所得扱いとなります。
【方法2】契約者:長男、被保険者:被相続人、保険金受取人:長男
保険に関する契約関係は【方法1】と同じですが、長男に保険料を支払うだけの余力がない場合、被相続人である父が毎年、保険料相当額を長男に贈与する方法です。
保険料の贈与に関する契約関係は次の通りになります。
贈与者:被相続人、受贈者:長男
【方法3】契約者:被相続人、被保険者:被相続人、保険金受取人:長男
被相続人である父が、長男から次男に支払う代償交付金を考慮して生命保険に加入する方法です。この場合、死亡保険金は長男が受け取り、それを原資にして次男に代償交付金を支払うことになります。この場合は相続税の課税対象となります。
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注意事項
代償分割を成立させるためには、遺産分割協議書に長男から次男に「代償交付金をいくら支払ったか」を明記する必要があります。そうでないと、代償交付金は長男から次男への贈与として扱われるおそれがあるので注意が必要です。
まとめ
代償分割は相続資産の現物分割が困難であるときに使われる方法です。その場合、被相続人を被保険者とした生命保険を活用することによって、無理なく現金を準備することができるでしょう。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー