派遣社員のための雇用保険。もし失業したら、手当てはいくらもらえる?
配信日: 2020.03.30
今回は、このようなケースで適用される雇用保険の給付について解説します。
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
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派遣社員に対する雇用保険の適用とは
派遣社員は、派遣元の企業に以下の条件で雇用される場合、雇用保険の被保険者資格を得ることができます(※1)。
(1)31日以上雇用されること
(2)1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であること
そして、雇用契約期間が満了するまでに次の派遣先における就業を指示しない場合、かつ派遣社員が同一の派遣元企業で継続して就業することを希望しない場合は、その時点で被保険者資格を喪失して失業することになります【例1】。
一方、派遣社員が同一の派遣元企業で継続して就業を希望する場合は、1ヶ月以内に次の派遣先が確定すれば、被保険者資格を喪失することなく継続することができます【例2】。
失業者の生活を支える基本手当とは?
離職した雇用保険の被保険者が、失業中の生活を心配しないで、新しい仕事を探し、1日も早く再就職するために支給される給付が、失業手当といわれる「基本手当」です。
特に、本人が更新を希望したが合意が成立しなかった場合、「特定理由離職者」として、一般の離職者に比べて給付条件などが優遇されます(※2)。
基本手当を受給することができる要件と手続き方法は?
派遣社員が雇用保険の基本手当を受給するためには、契約期間の満了などにより離職して、次のいずれにも当てはまることが要件となります(※3)。
(1)ハローワークに赴いて休職の申し込みを行い、積極的な就職意思を持ち、就職する能力があるにもかかわらず就業できない「失業の状態」にあること
(2)特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間(注)が通算して6ヶ月以上あること
(注)被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1ヶ月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1ヶ月と計算します。
したがって、基本手当を受給するための手続きの第一歩は、ハローワークに赴いて求職の申し込みをすることから始まります。受給要件と手続き方法の詳細については、関連記事「失業した時のために知っておきたい、ハローワークの上手な利用方法って?」を参照してください。
基本手当の受給期間と支給額は?
基本手当を受けることのできる日数(所定給付日数)は、離職した日における年齢、雇用保険の被保険者であった期間および離職の理由などによって決められますが、一般の受給資格者(定年・自己都合など)の場合に比べて、雇用期間満了に伴う特定理由離職者は【表1】のとおり給付日数が優遇されています(※3)。
【表1】
また、基本手当の日額は、原則として離職前6ヶ月の賃金を平均した1日分の45%から80%を乗じて得られる額となりますが、下限額と年齢区分に応じた上限額が定められています。くわしい金額を知りたい方は、厚生労働省の資料(※5)を確認してみてください。
まとめ
期限の定めのある労働契約の下で働く派遣社員は、期限満了に伴う失業、求職活動、再就職のサイクルで働くケースが考えられます。失業中の生活を支える雇用保険制度を活用して、求職活動に集中できるようにしましょう。
[出典]
(※1)厚生労働省「「派遣元事業主の皆さまへ 雇用保険の適用範囲が拡大されました!」
(※2)ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
(※3)ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
(※4)ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
(※5)厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります ~令和元年8月1日から~」
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士