契約者・被保険者・受取人が誰になるかによって変わる死亡保険金への課税

配信日: 2021.05.26

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契約者・被保険者・受取人が誰になるかによって変わる死亡保険金への課税
死亡保険金は相続財産ではありません。そのため、契約者と被保険者、そして保険金受取人の人間関係によって、課税される税目が異なってきます。本稿では、人間関係によって異なる死亡保険金の税目を整理します。
 
なお、本稿における死亡保険金とは一時金で受け取ることを前提とします。
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

契約者と被保険者が同一で、受取人が異なる場合

まずは、契約者が自身に生命保険を掛ける場合についてです。この場合は、契約者は受取人になることはできません。生命保険の受取人は被保険者が亡くなることで、死亡保険金を受け取る権利が生じるからです。
 
契約者と被保険者が同一の生命保険の場合、本来、相続財産ではない死亡保険金も「みなし相続財産」とされ、課税される税目は相続税です。
 
なお、死亡保険金の受取人は原則として被保険者の二親等以内の親族(=保険商品によっては被保険者の三親等以内の親族も可能な場合もある)を受取人に指定できますが、受取人が誰であれ、死亡保険金に相続税が発生します。
 
ただし、死亡保険金の受取人が相続人の場合、「500万円×法定相続人の数」の額までは非課税となります。つまり、すべての相続人が受け取った保険金の合計額が先の算式によって計算した非課税限度額までは、相続税はかからないということです。
 

契約者と受取人が同一で、被保険者が異なる場合

子どもが契約者であるとともに、死亡保険金の受取人でもあり、被保険者が親などの生命保険の契約の場合です。この場合、課税される税目は所得税と住民税、所得の種類は一時所得です。
 
課税される一時所得の額は、以下のように計算します。
 
(死亡保険金の額 ― 払い込んだ保険料の総額 ― 特別控除の額50万円)÷2
 
上述の計算式に基づいた一時所得の額がプラスなら、他の所得(例えば、給与所得や事業所得、雑所得など)と合算して、所得税や住民税の額を計算します。しかし、算出した額がゼロかマイナスですと、死亡保険金は課税されません。
 
また、他に一時所得に該当するものがあれば通算します。特に、プラスの一時所得とマイナスの一時所得を通算すること(=内部通算)もできます。
 
死亡保険金に課税される税目が相続税ではありませんので、死亡保険金の額がいくらであろうと、死亡保険金を相続財産から切り離すことができます。
 

契約者と被保険者、受取人のすべてが異なる場合

契約者と被保険者、そして受取人のすべてが異なる生命保険の契約の場合、死亡保険金に対し課税される税目は贈与税になります。
 
例えば、契約者が父、被保険者が母、受取人が子どもの契約の場合です。
 
贈与税の計算は以下のとおりです。
 
その年の他の受贈財産 + 死亡保険金の額 ― 基礎控除の額110万円
 
上述の計算式に基づいて算出した額がプラスなら贈与税の課税対象ですが、ゼロかマイナスの場合には非課税となるのは、他のケースと同じです。
 

相続税と贈与税には控除額に違いがある

仮に、死亡保険金を受け取る人が相続人だったとします。そして、受け取る死亡保険金が「みなし相続財産」に該当するとします。
 
この場合ですと、死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税額があり、さらに相続税の基礎控除額(3000万円+600万円の数)を差し引くこともできます。もちろん、死亡保険金以外の相続財産があれば、それらの財産の評価額を合算しなくてはなりません。
 
同じく死亡保険金を受け取るのが相続人で、受け取る死亡保険金に課税される税目が贈与税とします。受け取る死亡保険金から差し引くことができるのは贈与税の基礎控除(=110万円)しかありません。しかも、その年に、他に受贈財産があれば、他の相続資産と合算します。
 
相続税に比べると、贈与税の場合、基礎控除額(差し引くことができる額)が少ないのが分かります。そして、相続税の税率は「法定相続分に応ずる取得金額」が1000万円まで10%ですが、贈与税の場合、10%の税率適用がされるのは基礎控除後の課税価格が200万円までです。
 
同じ課税額でも、相続税に比べると贈与税のほうが税率が大きいのです。
 

保険期間の途中で契約者が変わった場合

保険期間の途中で契約者が変わった場合はどうなるのでしょう。
 
例えば、契約当初は、契約者と被保険者が父、受取人が子どもだったとします。その後、契約から6年たったところで、契約者を母に変更、被保険者は変更できませんので父のまま、受取人は子どものままだったとします。
 
なお、契約者の変更が「契約者の相続が理由ではない」という場合、契約者の変更時点では課税は生じません。契約者の変更は、生命保険会社への手続きだけで済みます。
 
契約者を変更してから4年、つまり契約から10年後に、被保険者の父が亡くなり、受取人である子どもが死亡保険金を受け取ったとします。死亡保険金には、どのような税目が課税されるのでしょうか?
 
受け取った金額は保険期間を案分して、課税する税目を分けます。契約してから6年間は、契約者と被保険者が同一(=どちらも父)でしたので、子どもが受け取った保険金の額の6割が相続税の対象です。そして、契約者を変更後、被保険者(=父)が亡くなるまでの4年間は、契約者は母でした。
 
つまり、子どもが受け取った保険金の額のうち、4割が贈与税としてそれぞれ課税されます。もちろん、受け取った死亡保険金の額(=他の契約の死亡保険金の額も含む)にもよりますが、相続税と贈与税の両方の申告と納税が必要になる場合もあります。
 

まとめに代えて

保険の見直しや保険相談というと、家族のライフプランニングを基に、必要な保障の額と保険の種類(生命保険、医療保険、学資保険など)、そして保険料の金額を検討することが多いのではないでしょうか。
 
もちろん、上記のような検討もとても大切です。ただし、同じ保険金の額でも、契約者と被保険者、そして保険金受取人が誰になるかによって、課税される税目が異なりますので、注意する必要があります。
 
死亡保険金が「みなし相続財産」なら非課税なのに、死亡保険金が「受贈財産」に該当するために贈与税を納めなくてはならず、死亡保険金の手取り額が減ってしまう、という可能性もあります。
 
死亡保険金を受け取るのは受取人であり、遺族です。遺族が税金の申告と納税で戸惑うことがないように、保険の見直しや保険相談では、受取人が保険金を受け取るときの課税にまで配慮するべきではないかと、筆者は考えます。
 
(参考)
生命保険文化センター「税金に関するQ&A/Q.死亡保険金が相続税の対象となる場合、必ず税金を負担するの?」
生命保険文化センター「受け取るとき、税金はどうなる?」
国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
国税庁「NO.4155 相続税の税率」
生命保険文化センター「税金に関するQ&A/Q.契約者や受取人を途中で変更した場合の税金は?」
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役

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