取引先に行く途中、階段から足を踏み外して骨折しました。社内でのけがではないので、「労災申請」はできないのでしょうか?

配信日: 2025.03.19

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取引先に行く途中、階段から足を踏み外して骨折しました。社内でのけがではないので、「労災申請」はできないのでしょうか?
取引先にいく途中に階段から足を踏み外して骨折したAさん。社内での出来事ではなかったので労災申請はできないのか、とのご質問です。労災申請とはどのような制度か、申請するにはどうすればいいかといったことも併せて確認しましょう。
柴沼直美

執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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2つの条件が満たされていれば申請可能

労災保険とは、業務中や通勤中に労働者が負傷した場合に、治療費や休業補償などを受けられる制度です。労働者を雇用しているすべての事業所が加入義務を持っています。
 
そして労災「労働災害」に該当するかどうかの判断基準は以下の2点です。この2つが満たされていれば労災保険の適用対象です。

1. 業務遂行性(業務の一環として移動していたか)
2. 業務起因性(業務とけがの発生に因果関係があるか)

Aさんは、「会社の業務」として取引先に向かう途中で階段から足を踏み外し、骨折してしまいました。このような場合、会社の指示のもと、業務として取引先へ向かう途中だったため、「通勤災害ではなく業務災害」として労災申請できる可能性が高いです。
 

業務災害と通勤災害の違い

ここで、あえて「通勤災害」ではなく「業務災害」と強調したことには理由があります。

業務災害には「補償」という言葉がありますが、通勤災害にはありません。この違いは「労働基準法で会社に補償が義務付けられているか」の違いから来ています。
 
具体例として、以下のような違いがあります。

●業務災害の場合、自己負担金はありませんが、通勤災害の場合は自己負担金(200円)があります。
●業務災害の場合は3日間の待期期間中の休業補償を会社が行わなければなりません。一方で、通勤災害は待期期間中に休業補償を行う必要がありません。
●業務災害は療養のための休業期間とその後30日間は解雇制限がありますが、通勤災害には解雇制限がありません。

 

具体的な申請方法

具体的な申請手順は以下のとおりです。
 

1. 会社に報告

会社の担当者(人事や総務)にけがの状況を報告します。
 

2. 労災保険給付申請書の作成

「療養(補償)給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」を記入します。
 

3. 労働基準監督署へ提出

会社の協力のもと、必要書類を労働基準監督署に提出します。
 

4. 治療費・休業補償の受給

労災保険が適用されると、治療費は全額カバーされ、休業した場合は賃金の80%相当が補償されます。
 

まとめ

労災保険適用になった場合、会社にとっては、労災事故の発生が保険料の増加につながる可能性があるため、安全管理対策の強化が求められます。こうした措置や労働保険料が値上がりすることを懸念して、労災申請に協力しないというケースが見られることがあります。そんな場合でも、自分で申請することが可能です。
 
また、事業主が労災申請を拒否した場合でも、労働基準監督署が判断しますので、ちゅうちょする必要はありません。最初に紹介した、「業務の必要上の移動によりかぶったけがなのか」「業務遂行上にかぶったけがなのか」という2点が満たされている場合は、きちんと申請しましょう。
 

出典

厚生労働省 労災保険給付の概要
 
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者

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