妻が退職したので私が加入している健康保険の「被扶養者」にしたいのですが、妻の収入はすでに「130万円」を超えています。被扶養者にできますか?
配信日: 2025.04.15


執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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被扶養者の範囲
被扶養者になれるのは次の場合です。
1. 被保険者の直系尊属(父母・祖父母)、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
2. 被保険者と同居して家計をともにして、主として被保険者の収入により生計を維持されている被保険者のおじ・おば、おい・めい、配偶者の父母など三親等内の親族
健康保険の被扶養配偶者の収入基準
被扶養者として認定されるには、主として被保険者の収入によって生計が維持されていることが必要です。なお、75歳以上の方は後期高齢者医療制度の被保険者になるため、被扶養者の認定を受けることはできません。
1.被保険者と同居の場合
配偶者の年間収入が130万円未満(配偶者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。
2.被保険者と別居の場合
配偶者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上、またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となります。
「130万円」の収入に含まれるもの
障害年金・遺族年金・雇用保険の失業給付等、非課税のものも「収入」に含まれます。通勤手当、傷病手当金等、非課税の手当も「収入」です。
ただし、死亡保険金、退職金、健康保険の出産育児一時金・家族出産育児一時金など「その年にしか得られないことが明らかであるお金」は収入に含みません。つまり、継続的に入ってくるお金は収入に含まれます。
なお、従業員51人以上のパート先では、「週20時間以上働く」「月額賃金が8万8000円以上(年収換算約106万円)」「学生ではない」といった要件をすべて満たすと社会保険への加入が義務づけられていますが、この場合、契約上の賃金以外は収入に含まれません。
妻が仕事を辞め、雇用保険の失業給付を受給する場合
会社を辞めたあと失業給付を受給する予定の方は、基本手当日額の金額によっては被扶養者になれない場合があります。待期期間および給付制限期間等、失業給付の受給がスタートするまでの期間は、被扶養者となれます。
しかし、受給が始まると、「雇用保険受給資格者証」に記載の基本手当日額が3612円以上(60歳以上、または障害年金受給要件該当者は5000円以上の場合)は、被扶養者となれませんので、受給が終了するまで、再び被扶養者から外れます。
逆にいうと、失業給付の受給期間中であっても、60歳未満の場合は基本手当日額3612円未満、60歳以上または障害年金受給要件該当者は基本手当日額5000円未満であれば、被扶養者としての認定が可能です。
まとめ
従業員50人未満の会社がほとんどですので、パートで働く場合は「130万円の壁」を意識することが大切です。この場合、健康保険の被扶養者の「収入(所得ではない)」は、「今後1年間の収入見込み額」で考えます。退職の場合は、「退職後の見込み額」で考えます。
見込み額には、非課税の収入や手当も含みます。会社を辞めたあと、再就職が決まっていなくても、雇用保険の失業給付を受給しているときや退職後、「傷病手当金」などを受け取り、またアルバイトやパートなどの収入が月額10万8333円(年間130万円)を超える見込みの場合、被扶養者から外れる場合がありますので注意しましょう。
出典
全国健康保険協会 被扶養者とは?
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー