会社を退職し「国民健康保険」に切り替えたら、保険料「月2万円超」にビックリ! まだ30代で持病もないし、このまま保険に入らなくても大丈夫? リスクや“保険料の軽減措置”を解説

配信日: 2025.04.16

この記事は約 5 分で読めます。
会社を退職し「国民健康保険」に切り替えたら、保険料「月2万円超」にビックリ! まだ30代で持病もないし、このまま保険に入らなくても大丈夫? リスクや“保険料の軽減措置”を解説
国民健康保険の納付書を受け取って「えっ、国保の保険料ってこんなに高いの?」と驚いた人は少なくないと思います。「どうせまた就職するから、国保は入らなくてもいいや」と思ってしまった人もいるかもしれません。しかし国民健康保険の手続きを怠ると、後で困った事態になる可能性があります。
 
本記事では、国民健康保険の手続きをしないリスクや保険料の軽減措置などについて紹介します。
橋本典子

執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)

特定社会保険労務士・FP1級技能士

国民健康保険に入るのは義務?

退職し、健康保険の任意継続をしない場合は、必ず国民健康保険に加入する必要があるのでしょうか?
 

法律で決まっている

会社を退職し、任意継続をせず、家族の扶養にも入らない75歳未満の人は、国民健康保険法により、国民健康保険への加入が義務付けられています。
 
国民健康保険法の第5条と第6条を要約すると、次のようになります。

・都道府県の区域内に住所を有する者は、国民健康保険の被保険者である
 
・ただし、会社の健康保険や各種の共済組合、船員保険などの被保険者または被扶養者は、国民健康保険の被保険者とならない
 
・後期高齢者医療制度の被保険者や生活保護受給者も、国民健康保険の被保険者とならない

要するに、他の医療保険の保護下にない人は、皆、国民健康保険に入ると決められているのです。
 

ただし加入手続きは必要

しかし他の医療保険を脱退しても、自動的に国民健康保険に入るわけではありません。国民健康保険の被保険者になるには、自ら加入手続きをする必要があるのです。会社を辞めて国民健康保険の手続きをしていないと「加入義務があるのに手続きをしていない」状態になります。
 

国保の加入手続きをしないとどうなる?

国民健康保険の加入手続きをしないまま放置すると、どのようなリスクがあるのでしょうか?
 

保険診療が受けられない

リスクの1つは、医療機関にかかったとき保険診療が受けられず、10割負担になることです。加入手続きをしない限り、国民健康保険の被保険者ではないからです。
 
「まだ若くて持病もないから大丈夫」と思う人もいるかもしれませんが、不慮の事故に遭う可能性は否定できません。交通事故で大けがをして入院・手術が必要になったとき、医療費は全額自己負担となり高額療養費制度も利用できないため、大変な出費になってしまいます。
 

後から支払うことになる

運よく医療機関にかからなかったとしても、2つ目のリスクがあります。それは、後から多大な保険料を請求されることです。自治体の調査で未加入期間が判明すると、会社を退職した翌日付で遡及加入することとなり、最大2年分(国民健康保険税の場合は3年分)の保険料や延滞金を支払う事態になります。
 
また、国民健康保険の加入手続きが遅れた場合、保険料は遡及して請求されますが、保険給付は原則として遡及適用されません。そのため無保険期間に医療費を10割支払っていても、保険分の7割が返還されることはありません。
 

保険料が軽減されることも

それでもやはり、高い国民健康保険料が払えないこともあるでしょう。そうしたときのために、国民健康保険には保険料の軽減措置があります。
 
退職の理由が非自発的であり、雇用保険の特定受給資格者や特定理由離職者に該当する場合は、国民健康保険料の軽減措置が受けられます。
 
また世帯全体の所得が一定以下の場合にも、均等割などの7割~2割の軽減措置が設けられています。さらに自治体によっては独自の軽減措置を設けているところもあります。
 
軽減措置を受けようとするときは、自治体の窓口に雇用保険受給資格者証など必要書類を持参し、軽減措置を受けたい旨の相談をしてください。
 

任意継続も検討する

国民健康保険に入らず、退職した会社の健康保険に任意加入する選択肢もあります。任意加入の場合、保険料は会社負担分も請求されるため在職中の倍になりますが、任意継続の標準報酬月額には「32万円」の上限があるため、在職中の給与が高かった人は任意継続のほうが保険料を抑えられることが多いでしょう。
 
なお任意継続をするには、退職後20日以内に手続きをする必要があるため注意が必要です。
 

まとめ

高いといわれる国民健康保険料ですが、未加入状態を続けると、保険医療を受けられないばかりか、後から多額の保険料を請求されることになります。将来の自分に負債を残さないために、加入すべきときに加入して被保険者資格を持っていたほうが、医療保険に守られている安心感を含め、結局は「得」ではないでしょうか?
 
なお退職から次の就職までのブランクが極めて短期間の場合でも、国民健康保険の加入手続きを要します。自治体の窓口に相談しながら、計画的に切替手続きをしましょう。
 

出典

e-Gov法令検索 国民健康保険法
厚生労働省 国民健康保険の保険料・保険税について
東京都保健医療局 保険料(税)額について
 
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士

【PR】
夫の家事への不安に関するアンケート FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集