高齢者は“優遇されてる”から「医療費3割」払うべき? 現役世代からは「税金キツくて病院行けない」「高齢者は貯金多いのに」の声も…今後“高齢者の医療費負担”はどうなる? 不公平感の理由とは
「これだけ天引きされて手取りが減っているのに、病院に行けば自分たちは3割負担。後期高齢者は1割~2割負担なんて、優遇されすぎではないか。全員、病院の窓口負担は3割払うべきだ」
というような声が、現役世代を中心に徐々に大きくなりつつあります。今後、高齢者の医療費負担はどのようになっていくのでしょうか。
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
これまでの「医療費自己負担率」を振り返ってみると
これまでの社会保障に関する経緯を振り返ると、「医療費自己負担率」は時代とともに大きく増加してきており、高齢者の負担率も例外ではありません。
厚生労働省のまとめた基礎資料(図表1)によると、国民の医療費自己負担率は以下のように推移してきました。
図表1
厚生労働省 第124回社会保障審議会医療保険部会 基礎資料
・1961年(国民皆保険スタート時)
会社員(本人)は「定額負担」、その家族や国民健康保険の加入者は「5割負担」でした。
・1973年(老人医療費無料化)
70歳以上の高齢者医療費が「無料」になりました。同時に、会社員の家族の負担は「3割」に軽減され、これは現在も変わっていません。
・1983年(老人保健法導入)
高齢者医療費の無料化による医療費増大が問題となり、高齢者も「月額数百円」の定額負担が導入されました。
・1984年
被用者保険本人の自己負担率が「1割」となりました。
・1997年
被用者保険本人の自己負担率が「2割」となりました。
・2001年~2003年
高齢者の負担が定額から「原則1割負担」に変更される一方、2003年には現役世代(会社員本人)の負担が2割から現在の「3割負担」に引き上げられました。
・2006年~2008年(後期高齢者医療制度の創設など)
現役並み所得のある高齢者については、「3割負担」に引き上げられました。70~74歳は法律上2割負担とされましたが、特例措置として1割に据え置かれます。
・2014年~現在
70~74歳の負担が、段階的に「2割負担」へ引き上げられました。さらに2022年10月からは、75歳以上でも一定以上の所得がある人は「2割負担」となりました。
現役労働者の医療費自己負担率は、1961年時点の「定額負担」から約40年かけて2003年に「3割」まで増加しました。一方で、高齢者医療費についても1970年代には「完全無料」という極端な優遇があったものの、約50年間かけて徐々に負担率が増加し、現在は所得額に応じて「1割から3割」の負担になりました。
現在の状況だけを抜き取ってみれば、「高齢者は現役世代にくらべて医療費が優遇されている」ように見えますが、歴史的な経緯を見てみると、「高齢者も現役世代も、徐々に負担率が増加してきている。ただし、どの時代においても、高齢者の医療費負担は現役世代に比べて優遇されている」と表現するのが正確だと言えるでしょう。
「現在の収入額」ではなく「現在の資産額」で負担率を決める時代が来るかもしれない
現役世代が高齢者世代に対して持つ「不公平感」は、
「現在の後期高齢者が現役世代だったときは、医療費自己負担率や厚生年金の負担率が低かったのに、老後の医療費負担率まで現役世代より優遇されているのはおかしい」
という感情の面が大きいように、筆者には思えます。
実際には、後期高齢者は年金以外の収入がほぼない場合が多く、高齢になったことでかさむ医療費を3割負担することが厳しいという人は多いでしょう。ただそれは、「年金収入も資産額も乏しく、どうしても医療費を3割負担できない」という人に限るはずです。
後期高齢者の現在の医療費負担率(1割~3割)は、主に「その年の所得(収入)金額」によって決められています。
そのために、銀行預金で1億円所有しているような富裕層の高齢者でも、年金収入しか手元に入ってこなければ「低所得者」とみなされて医療費負担が1割で済んでしまうケースもあります。これが、現役世代の感じる「不公平感」の大本なのではないでしょうか。
近年、国の財政制度等審議会などでも、「所得(収入)」だけでなく金融資産(貯金や投資資産など)の保有状況も勘案して、負担能力を判定すべきではないか、という議論が活発に行われています。
筆者は1人の現役世代として、「高齢者でも医療費は一律3割負担にせよ」と主張して高齢者と現役世代が対立するのではなく、「年齢に関わらず、資産も収入も十分に持っている人にはしっかり3割負担してもらい、本当に困窮している人を助けていこう」という方向の制度改革へ声を上げていくことが、現実的でフェアだと考えています。
まとめ
少子高齢化の進展などが理由で、国民の医療費負担率は現役世代・高齢者世代ともに数十年かけて徐々に上昇してきました。
どの時代でも、高齢者世代は現役世代よりも医療費負担率は優遇されていますが、高齢者世代の場合は「その年の収入額」によって医療費負担率が左右されており、年金収入のみの高齢者は大きな資産を持っていても「1割負担」になることが多く、これが現役世代の感じる不公平感につながっています。
さらに少子高齢化が進み、国民の医療費負担が重たくなる将来は、「収入額」だけでなく「資産所有額」によって、医療費負担率が左右される時代が来るかもしれません。
出典
厚生労働省 医療費の一部負担(自己負担)割合について
厚生労働省 第124回社会保障審議会医療保険部会 基礎資料
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
