定年後「無職なのに月8万円」!? 元・会社員を襲う“国保の通知”に絶句!「現役時代より高いなんて…」貯金が秒で溶ける“前年所得”の残酷な罠とは
中に入っているのは「国民健康保険料」の納入通知書。そこに印字された金額を見て、多くの元・会社員が目を疑います。「無職になって収入がゼロなのに、どうして現役時代より高い保険料を払わなければならないんだ!?」と。
実は、これは退職1年目の国民健康保険料の計算方法の仕組みによるものです。
本記事では、定年退職の翌年に支払うことになる国民健康保険料について解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、第一種/第二種電気工事士、医療情報技師、2級ボイラー技士、ボイラー整備士
無職の財布を狙い撃ち? 前年所得で決まる国保の仕組み
会社員時代、毎月の給与明細から天引きされていた健康保険料は、「今の給料(標準報酬月額)」を基準に計算されていました。給料が下がれば、保険料も比較的すぐに下がります。また、会社が保険料の半分を負担してくれていたため、実際の負担感はそこまで大きくなかったはずです。
しかし、会社を辞めて国民健康保険(国保)に加入すると、そのルールは一変します。 国保の保険料は、今の収入ではなく「前年の1月から12月までの所得」を基準に計算されるのです。
つまり、60歳で定年退職した場合、無職になって収入が途絶えた退職1年目に、最も給料が高かったであろう「現役バリバリの最終年の所得」をベースにした保険料が請求されることになります。
自治体によって保険料の計算式は異なりますが、年収が比較的高かった会社員の場合、年間で最高100万円近い保険料(月額約8万円強)が請求されることも珍しくありません。収入がない中でこの出費は、まさに「貯金が秒で溶けていく」恐怖そのものです。
退職金はセーフでも、現役時代の「稼ぎ」が牙をむく
ここで「高額な退職金をもらったから、それが所得に加算されて国保の保険料が跳ね上がるのではないか?」という疑問が浮かぶかもしれません。
結論から言うと、通常の退職金は「分離課税」として扱われるため、翌年の国保の計算には含まれません。
しかし、退職する前にもらった「ボーナス」や「給料」は、前年所得として合算されるため注意が必要です。「最後だから頑張ろう」と残業を重ねて稼いだお金が、翌年の首を絞める結果になることもあるのです。国保には会社のような「労使折半(会社が半分払う)」がないため、全額が自己負担となります。
任意継続という防衛策、ただし「20日以内」のタイムリミット
この「退職1年目の国保地獄」を回避するための対策として、会社員時代の健康保険にそのまま残り続ける「任意継続」という選択肢があります。
任意継続の場合、会社が負担していた半分も自分で払うことになるため、現役時代と比べると保険料は「約2倍」になります。
ただ、任意継続の保険料は、全加入者の平均的な給与額(月額30万円程度)を基準に上限が決まるという独自のルールが用意されています。
一方、国保にも「上限額(賦課限度額)」は設定されていますが、年々引き上げられており、年間で100万円を超える高額な天井となっています。
前年の所得がどんなに高くても、この上限額を超える額は請求されません。そのため、一定以上の年収があった人は、国保に加入するよりも任意継続を選んだほうが、年間で数十万円、保険料が安くなるケースが多いのです。
ただし、この任意継続には「退職日の翌日から20日以内」に手続きを済ませなければならないというタイムリミットがあります。退職後の手続きでバタバタしているうちに期限が過ぎ、高額な国保を払うことになったというケースは多くあります。
まとめ
退職を控えている人は、今のうちに「自分の場合は国保と任意継続、どちらが安いか」を各自治体のホームページ等でシミュレーションしておくことをおすすめします。知識の差が、老後の資金残高を決定づけることになるかもしれません。
出典
厚生労働省 国民健康保険の保険料・保険税について
厚生労働省 国民健康保険の保険料・保険税について(PDF)
全国健康保険協会 任意継続被保険者の保険料について
厚生労働省 国民健康保険の賦課限度額について
執筆者 : 西村和樹
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、第一種/第二種電気工事士、医療情報技師、2級ボイラー技士、ボイラー整備士