更新日: 2020.08.14 損害保険

【FP解説】新築の火災保険の補償は手厚く考えたほうがいいの?

【FP解説】新築の火災保険の補償は手厚く考えたほうがいいの?
家の新築にあわせて火災保険に入る場合、補償の内容はどのように設定するのが最適解なのでしょうか。今回は新築物件の火災保険の選び方についてFPが解説します。
 
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

火災保険とは?

火災保険とは、住宅が火災の被害に遭った場合に補償を受けられる損害保険の一つです。内容や特約によっては落雷や水災、盗難など幅広い損害に対応するものもあります。火災保険には、大きく分けて次の2つの補償があります。
 
(1)火災だけでなく、風災・ひょう災・雪災や水災など、さまざまなリスクを総合的に保障する「住宅総合保険」
(2)火災・落雷などを補償する「住宅火災保険」

火災保険の必要性

住宅の購入は、人生で一番大きなお買い物といえるでしょう。一番大きなお買い物である住宅をさまざまなリスクから守ることができるのが火災保険です。
 
住宅は、生活を送る場所として最も大切な場所です。住宅を守ることはライフプランを考えていくうえでとても大切なことです。

住宅ローンと火災保険

先述のとおり、住宅の購入は人生で一番大きなお買い物であり、高額な資金が必要となります。そのため多くの方が、住宅の購入にあたって住宅ローンを利用されます。住宅ローンを利用して住宅を購入する場合、火災保険の加入が条件となっています。
 
一般的に住宅ローンは30年や35年など長期にわたって返済をしていきます。返済期間中に、火災や自然災害により住宅が損壊するおそれがあります。
 
しかし、住宅が損壊したからといって、「住宅ローンも残債はゼロ!」というわけにはもちろんいきません。住宅ローンと住宅の再建にかかる費用が二重でのしかかることになるのです。
 
このような事態にならないよう、住宅ローンを利用する場合には火災保険への加入が必須とされています。
 
それでは、新築の住宅を購入した場合、どのタイミングで火災保険に加入すればよいのでしょうか?火災保険は、物件の引渡しをされる日(引渡日)から補償がスタートするよう加入します。
 
したがって、新築の戸建ての場合は、建物が完成したら引渡日前までに加入の手続きを行います。新築のマンションや建売住宅の場合は、契約後すぐに引渡しをされるため、購入後すぐに加入の手続きを行うことになります。
 
実際のところ、住宅を購入したら、住宅ローンの借入先となる金融機関や住宅会社から火災保険の加入についての提案を受けることが多いでしょう。後述しますが、この提案をそのまま受け入れるのではなく、他社の火災保険についても比較検討してみましょう。

新築物件で火災保険に加入する場合のポイント

火災保険に加入する場合、住宅が新築物件か賃貸物件かによって考え方が大きく異なります。新築物件の場合、自分の住宅に万が一のことがあった際に備えるという意味合いが強いのに対し、賃貸物件では大家さんへの補償という側面が強いからです。
 
新築物件で火災保険に加入する場合のポイントは、主に次の3つです。
 

(1)保険金額の基準
実際の損害額を基準に保険金が支払われるのか、それとも見舞金として一律の金額が支払われるのかといった点は非常に重要です。保険金の算定基準によっては、実際に受け取れる保険金の額が想定より大幅に低くなってしまうこともありえます。

 

(2)補償の範囲
一般的な火災保険は、火災をはじめ落雷や水災など幅広く対応しており、特約などによってさらにその範囲を広げることができます。とはいえ、やみくもに補償範囲を広げるのも賢い選択とはいえません。
 
住宅の形態や立地などに応じ、想定されるリスクについてどの範囲までカバーする必要があるのかをしっかり検討する必要があります。

 

(3)保険会社
新築物件で加入する火災保険の内容は保険会社によって異なります。補償の内容や保険料の額、緊急時の対応など保険会社によって特徴があるのです。加入後に後悔しないよう、少なくとも3社以上から見積もりを取ったうえで決定することをおすすめします。

火災保険の保険料はどうやって決まるの?

火災保険の保険料はどのように決められているのでしょうか?火災保険の保険料は、将来の保険金などの支払いの財源となる「純保険料」と保険会社の経費や利益となる「付加保険料」の2つから成り立っています。
 
火災保険の「純保険料」については、建物の構造(コンクリート造、鉄骨造、木造)や建物の所在地、専有面積、補償内容などによって計算されます。
 
ここでは、建物の構造について詳しく見てみましょう。火災保険では、コンクリート造や木造など建物の構造の違いによるリスクについて区分が設けられています。これを「構造級別」といいます。
 
建物の構造の違いによるリスクとは、建物の壊れやすさ・燃えやすさなどのリスクをいいます。「構造級別」は、次の3つに分けられています。
 
(1)M構造(コンクリート造マンションなど)
(2)T構造(鉄骨造の戸建ての建物など)
(3)H構造(木造の戸建ての建物など)

 
火災保険は、建物のリスクが高くなるにしたがって保険料が上がっていく仕組みとなるため、(1)M構造(コンクリート造マンションなど) → (2)T構造(鉄骨造の戸建ての建物など) → (3)H構造(木造の戸建ての建物など)の順に保険料が上がっていきます。
 
一方、「付加保険料」については、各保険会社が独自に算定します。

新築物件の火災保険料を安くするためのポイント

火災保険が新築物件に必要な保険とはいっても、やはり保険料は低く抑えたいものです。そこで、以下の2点に着目して火災保険を選んでみてください。必要な補償内容を保ちつつ、保険料を低く抑えられる場合があります。

(1)新築専用の割引

火災保険は新築建物専用の割引を用意していることがほとんどです。新築物件(新築後10年未満)の保険料が最大10%割引される火災保険もあります。

(2)長期契約による割引

建物や補償の範囲などが全く同じ条件でも、保険期間の長さによって保険料が変化します。基本的には保険期間が長ければ長いほど保険料は安くなる傾向にあります。先に述べた新築の割引とあわせると、保険料を大幅に節約することもできます。

地震保険はどうする?

火災保険では、地震・噴火・津波を原因とする損害については補償されません。地震・噴火・津波を原因とする損害に対する補償が必要であれば、地震保険の加入を検討しましょう。地震保険は単体で加入することはできず、火災保険とセットで加入しなければなりません。
 
一般社団法人日本損害保険協会の調査によると、年々地震保険への加入率が増加しています。これは、東日本大震災など大きな災害が影響していると考えられます。
 
ただし、地震保険に加入する場合、当然地震保険の保険料も必要になります。「住宅の補償をどこまでにするか?」について、よく検討する必要があるでしょう。

火災保険は自分で探した方がお得?

新築物件の購入には大多数の方が住宅ローンを利用するでしょう。そうした場合、住宅ローンの借入先となる金融機関から新築物件に火災保険をかけるようすすめられることがあります。
 
金融機関から提案される火災保険は、新築物件に必要とされる補償内容が十分に網羅されており、かつ、金融機関独自の割引があることも多く、補償内容は手厚く、保険料は割安となることがほとんどです。
 
しかしながら、手厚いがゆえに必要以上に補償範囲が広がっていたり、保険料が想定よりも高かったりと必ずしも求める保険の条件に一致するとも限りません。火災保険に必要な補償範囲や最適な保険料は、物件や契約者個々の条件などにより異なります。
 
提案されたものをそのまま受け入れるのではなく、いったん保留にして複数の保険会社から見積もりを取ってみたり、他に取り扱える保険商品はないか聞いてみるなどして比較検討することが大切です。

まとめ

火災保険は新築物件にとって重要な損害保険です。火災保険への加入を決める際は必ず見積もりを取り、比較検討してから決めるようにしてください。また、なかなか決められないという場合は、火災保険に詳しいFPに相談するとよいでしょう。
 
[出典]一般社団法人日本損害保険協会「地震保険の契約件数・世帯加入率・付帯率の推移」
 
※2020/7/20 内容を一部修正させていただきました。
 
執筆者:柘植輝
行政書士


 

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