失業したときに雇用保険から受けられる基本手当っていくらなの?その計算方法は?
配信日: 2020.04.10
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
基本手当を受け取るためには?
雇用保険は、週20時間以上勤務し、継続して31日以上勤務することが見込まれる人が加入対象となります。その雇用保険に加入していた人が離職し、失業していると基本手当が支給されることになりますが、原則として離職以前の2年間に被保険者期間が12ヶ月以上ある人で、離職日時点で65歳未満の人が対象となります。
この「被保険者期間」とは、雇用保険の実際の加入期間ではなく、離職日からさかのぼって1ヶ月ごとに区切って、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上あった月のことを指します。過去2年で当該期間が12ヶ月以上必要になります。
改正により、2020年8月以降は、11日なくても賃金の支払の基礎となった時間が80時間以上の月も被保険者期間に含まれることになります。会社の倒産、退職勧奨等を理由に離職した人(特定受給資格者)は、離職以前の1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あれば受給が可能となります。
実際に基本手当を受給するためには、離職後、公共職業安定所(ハローワーク)で求職の申し込みをし、失業していることの認定を受ける必要があります。
基本手当の計算方法
受給の要件を満たすことで受けられる基本手当ですが、基本手当の額の計算に当たっては、まず離職前の6ヶ月間の賃金の総額を180で割り、賃金日額を算出します。
賃金の総額には、臨時に支払われる賃金や3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)は除かれます。そして、この賃金日額に、給付率をかけて基本手当の日額を算出します(【図表1】)。
給付率は60歳未満と60歳以上65歳未満で、それぞれ賃金日額によって異なります。賃金日額には年齢ごとに上限額があり、その結果、基本手当の日額についての上限額もあります。
基本手当は、失業が認定された日について支給の対象となります。日額で計算される基本手当の最大で受けられる日数(所定給付日数)については、雇用保険の加入期間で変わります。
通常は【図表2】(1)のとおり、加入期間が10年未満の場合は90日分、10年以上20年未満の場合は120日分、20年以上の場合は150日分となります。例えば、35歳で雇用保険加入期間が12年で、賃金日額が1万5000円である場合、基本手当の日額は7500円となり、120日分90万円を上限として受けられることになります。
基本手当は原則離職日から1年以内の失業が認定された日について受給することができます。ただし、ハローワークに求職の申し込みをして7日間は待期期間となり、失業していても支給されず、また、自己都合で退職すると、その後3ヶ月間は給付制限がかかります。
【図表2】の(2)の会社の倒産、退職勧奨等によって離職した人(特定受給資格者)、(3)のように就職が困難と認められる人の離職など、離職する理由によっては受給できる日数が増えることがあります。
基本手当を受けると60歳台前半の年金が調整される
60歳台前半で老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)を受けられる人が基本手当を受けると、当該年金がその間受けられなくなります。
日額で見た場合、多くの場合は基本手当の額が年金の額より高くなりますが、60歳台前半で退職する場合、両者の額を比較した上で求職の申し込みを行う必要があるでしょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー