コロナウイルスに伴う「保険料の特別お取り扱い」の猶予について

配信日: 2020.05.09

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コロナウイルスに伴う「保険料の特別お取り扱い」の猶予について
この度のコロナウイルスに伴い、多くの方がご苦労をなさっていらっしゃることと思われます。お見舞い申し上げます。
 
このような状況下で、経済的な苦難を少しでも緩和するべく、生命保険会社によっては「保険料の特別のお取り扱い」を行っています。本稿では「保険料の特別のお取り扱い」における「猶予期限の延長」について見ていきたいと思います。
 
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

本稿における前提条件

「保険料の特別のお取り扱い」の「猶予期限の延長」について、情報を収集したのは4月11日のことです。某社サイトには、以下のように載っていました。
 
「保険料のお払込みに関する特別お取扱い等について」
保険料をお払込み中のご契約で、お払込みが困難な場合に、お客さまからの申し出により、保険料のお払込みを猶予する期間を最長6ヶ月延長させていただきます。

最長6ヶ月ではない?

案内文には「保険料の払い込みを猶予する期間を最長6ヶ月」と書いてありますので、案内文を額面どおりに受け取り、「今月(=4月)分の引き落としを6ヶ月間猶予、つまり9月まで待ってもらえるのか?」と理解しました。しかし、それは誤解でした。
 
正しくは「2月~7月までの保険料の猶予期限を9月末まで延長する」という意味なのです。
 
ところで、なぜ「2月」なのでしょうか? もともと、2月分(2/1~2/29)の保険料は、2月26日か27日に銀行口座から引き落とされる場合が多いようです(クレジットカード払いの場合は、各社によりバラつきがありますが、今回は説明を割愛します)。
 
2月の6ヶ月後といえば、8月になりますので「最長7ヶ月の猶予」となります。しかし、そもそも2月分の保険料は翌月の3月末までが「もともとの猶予期限」なのです。
 
ということで「(もともとの猶予期限を)3月から最長6ヶ月延長する」ということになりますので、9月末までなのです。
 
ちなみに「(もともとの猶予期限から)最長6ヶ月」なのは、2月分の保険料だけです。3月分~7月分の保険料は「最長6ヶ月」ではなく、単に「9月末まで、猶予期限を延長する」に過ぎません。
 
なお8月分の保険料は、やはり翌9月末までが、もともとの猶予期限です。ということで、特別のお取り扱いにはなっていません。
 
なので、案内文は「2月分~7月分の、7ヶ月分の保険料の猶予期限を9月末まで延長してもらえるのが、保険料の特別のお取り扱い」というのが正しい解釈になるのです。

案内文に書かれた「特別のお取り扱い」の手続きと払い込みは?

さて、案内文に書かれた保険料の猶予ですが、その手続きと払い込みは、どのように行うのでしょうか?まず保険証券か、毎年届くご契約のご案内をお手元に用意し、契約している保険会社のフリーダイヤルに電話します。
 
ところで、頼みの綱であるはずの保険会社のフリーダイヤルも、受付日時が短縮されています。困っている人が多い中で、受付日時が短縮されていますから、なかなかつながりません。筆者は6分20秒待ちました。
 
電話がつながったら、証券番号の他、名前や住所などの本人確認を済ませた後、先述の「(保険料の特別の取り扱いは2月分からですが、本稿時点では4月ですので)4月分~7月分の保険料」を「特別のお取り扱い」による猶予期限の延長を希望する、ということを告げます。
 
後日、「払込票」が届きますので、その払込票で「特別のお取り扱い」により猶予された保険料を支払います。

「特別のお取り扱い」に猶予された保険料を払わないと

「特別のお取り扱い」により猶予期限が延長された保険料は、9月末まで払い込まないと、10月には保険契約が失効してしまいます。
 
また、猶予された保険料を払い込まないと通常の「保険料の口座引き落とし」が再開しませんので、「特別のお取り扱い」の対象になっていない8月と9月分の保険料も払い込む必要があるようです。
 
失効した契約は元どおりに戻すこと、つまり復活の手続きは可能ですが、「猶予された保険料+1~3ヶ月分の保険料」をまとめて払い込まなくてはなりません。加えて、復活の手続きに際し、健康告知がありますので、復活の手続き時点で健康状態がよくなければ、復活することができません。
 
もし、貯蓄タイプの生命保険であれば、解約返戻金の一定割合(=商品などによって異なる)を限度に、自動振替貸付が行われます。自動振替貸付とは、要するに「保険会社が保険料を立て替える」ものです。
 
しかし、「貸付」のネーミングのとおり、保険会社に対し弁済が必要ですし、日割りで利息が生じます。
 
参考までに、「(2012年4月以後の契約について)もともとの猶予期限が3ヶ月」、かつ「失効と復活、自動振替貸付がない」という保険会社があります。失効しない代わりに契約解除になります。

保険料の払い込み猶予は慎重に

「保険料の特別のお取り扱い」における「猶予期限の延長」とは免除ではなく、あくまでも猶予です。保険料の支払いを先送りにしているだけに過ぎません。
 
厳しい言い方ですが「支払いを先送り」にしたところで、「収入の先送り」が見込まれなければ、「苦しさを先送り」にしているだけにすぎないとも言えるので、ここで生活スタイルが変わる方は早めに対応を検討したほうがよさそうですね。
 
(参考)
日本生命の失効
日本生命の自動振替貸付
明治安田生命
日本生命
住友生命
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役


 

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