費用を頭割りするのが「わりかん」。飲み会ではなじみがあるけれど、こんなサービスにも導入されていた!?

配信日: 2020.06.12

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費用を頭割りするのが「わりかん」。飲み会ではなじみがあるけれど、こんなサービスにも導入されていた!?
「わりかん」(割り勘)は、飲食などの際に参加者が費用を頭割りで均等に負担することです。新型コロナウイルス問題が早期に収束して、わりかんなどでの飲み会を心配なく楽しめる世の中に戻ることが待ち望まれます。

ところで、わりかんのやり方を導入したユニークな保険が今年1月下旬から発売されています。どんなものなのでしょうか。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

「わりかん保険」とは

新興の保険会社ジャストインケース(株式会社justInCase)が発売したのが「わりかん保険」(※1)です。対象はがん保険で、次のような概要です。
 
<ポイント>
1.保険期間1年間で、保険料は毎月後払い(加入時の支払いはなし)
2.がん・上皮内がんの診断時に一時金80万円(別途、死亡保険金あり)
3.保険料は、保険金支払いが発生したときに契約者数で「わりかん」にして負担する
 
<保険料の計算イメージ>
・ある月に保険契約者数[1万人]、がんになった人数[2人]とすると、支払保険金は[160万円](80万円×2人)となる。
・引受保険会社の管理費(経費利益など)を[保険料の30%]とすると、「わりかん」の対象額は[228.6万円][160万円÷(100-30)%]となり、がんになった人を除いた保険契約者数[9998人]で翌月に[229円]ずつ後払いで負担する。
 
<こんな点にも注目>
◇加入できるのは、20歳から74歳。
◇保険料は3つの年齢グループごとに次の上限があり安心。
(20歳から39歳)  月額500円
(40歳から54歳)  月額990円
(55歳から74歳)  月額3190円
 
◇管理費の率は35%からスタートして契約者数に応じて低下する構造。1万人で30%、2万人で25%と人数が増えるほど保険料は安くなる。
◇実際の保険料は、年齢グループごとの契約者数(+管理費)で計算される。
 
飲み会では「わりかん」でも、飲み放題などでなければ勘定がどれだけふくらむか不安です。しかし、この新しい保険には上限額が設定されているので心配はありません。
 
加入手続きも、スマホやパソコンで健康状態の告知も含めて簡単にできます。これだけでがんに対する不安や備えが全部カバーされるとは限りませんが、今までのがん保険よりも身近で手軽な存在になったといえるでしょう。

「P2P保険」と「サンドボックス制度」

こうした保険のシステムは「P2P保険」といわれ、実は中国や欧米ではすでに普及しています。「P2P」は「Peer-to-Peer」で、もともと同等の立場どうしの通信を意味する専門用語でした。
 
これまでの保険商品が年齢や性別に応じて決められた保険料を「前払い」するのに対して、P2Pは保険金の支払い実績に基づいて「後払い」で精算するのが特徴です。
 
前月にもしも保険金が支払われていなければ、当月の保険料負担はゼロとなります。保険金の支払い実態や保険会社の経費利益が“ガラス張り”になって、より割安な保険料が実現できるものだと評価できるでしょう。
 
実はP2Pの保険商品形態は、日本では販売は認められていません。では、「わりかん保険」はどうやって登場できたのか。それは政府の「サンドボックス制度」を適用されたから。
 
これは「生産性向上特別措置法」(2018年6月6日施行)に基づき、期間や参加者を限定したうえで一時的に規制を緩和して、新しい技術やビジネスモデルの実用化を推進する実証実験制度です。
 
規制緩和の認定期間は保険商品販売開始から1年間ですが、実証実験が打ち切りになっても、すでに加入した契約は契約1年後の期間満了まで続きます。またこの保険の仕組みが問題ないと検証されて実証実験が成功した場合には、事業が継続して既存の契約も更新可能です。

まとめ

保険は、身の回りにあふれています。自動車保険、火災・地震保険、旅行保険、傷害保険、医療保険、介護保険、年金保険、そして、死亡(生命)保険など。取り扱う保険会社もさまざまですが、保険料が「後払い」でその明細にも透明性を持たせた商品は今までなかったのが実態です。
 
今回は、とりあえず実証実験のレベルですが、大手を含む業界関係会社が募集代理店などの立場で支援協力し、業界としての関心の高さも感じられます。
 
「保険の契約者同士がリスクをシェアし、もしものことが起こった際に助け合う仕組み・・・(中略)・・・保険の原点とも考えられ、日本古来からある、頼母子講(たのもしこう)や無尽(むじん)をテクノロジーで蘇らせ」た(※2)このシステム。
 
古いようで新しく、そしてさまざまなモノやコトに浸透しつつあるシェアリングエコノミーの裾野をさらに広げていく可能性を感じさせます。
 
[出典]
(※1)株式会社justInCase「わりかん保険」
(※2)株式会社justInCase「ニュースリリース」~「日本初「P2P保険(わりかん保険)」をパートナー企業8社にて1月28日から順次取扱開始」
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士


 

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