65歳以上なら知っておきたい。“安心”と“スキルアップ”のための「高年齢被保険者」って?
配信日: 2020.08.06
65歳以上の雇用保険料は2020年3月31日まで、事業主、労働者とも雇用保険料の徴収は免除されていました。2020年4月1日からは免除されていた保険料を納めなければなりません。
給与明細書を見て、今まで引かれて(控除されて)なかった保険料が引かれていてびっくりされた人も多いのではないでしょうか。
執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。
また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。
おさらい、雇用保険法改正
2017年1月、雇用保険法改正により65歳以上の労働者も一定の要件を満たすことにより「高年齢被保険者」として雇用保険の適用対象となりました(1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用見込みがあること)。
例えば65歳以上の人が、転職などにより新に就労した場合、雇用保険に加入することができるようになりました。もしその人が失業した場合、失業手当にあたる高年齢求職者給付金が受給できます(法改正前は、65歳以上の労働者は一度雇用保険からはずれてしまうと新規に雇用保険に加入できませんでした)。
法改正により高年齢被保険者になった人はどんな人?
要件に該当している65歳以上の労働者の人は次のような人が該当しています(厚生労働省ホームページ参照)。
1.2017年1月1日以降、新たに65歳以上の労働者を雇用した場合
2.2017年1月1日より前から65歳以上の労働者を雇用し、2017年1月1日以降も継続して雇用している場合
3.高年齢継続被保険者(※1)である労働者を2017年1月1日以降も継続して雇用している場合
※1:65歳に達した日の前日から引き続いて65歳に達した日以後の日において雇用されている被保険者のこと。
高年齢被保険者になって変わったことは?
65歳以上の労働者は高年齢被保険者として雇用保険料を納めることで、「高年齢求職者給付金」(※2)「育児休業給付金・介護休業給付金」「教育訓練給付金」が支給対象となります。
※2:高年齢求職者給付金は一時金であり、被保険者期間が通算して6カ月以上ある場合、支給されます(年金と併給できます)。
・6カ月以上1年未満・・・基本手当の日額の30日分に相当する額
・1年以上・・・基本手当の日額の50日分に相当する額
高年齢求職者給付金とは、高年齢被保険者が離職した場合、一定の要件を満たすことで被保険者であった期間に応じた金額が支給されます。給付金を受けるには、離職後に住所地の管轄するハローワークにて求職の申し込みをし、受給資格の決定を受けると、失業の認定を受けることにより、高年齢求職者給付金が支給されます(要件を満たせば何度でも受け取ることができます)。
育児休業給付金・介護休業給付金とは、高年齢被保険者が育児休業、介護休業を取得した場合、要件を満たすことで育児休業給付金・介護休業給付金の支給対象となります。
教育訓練給付金とは、一定の受給要件を満たす人が、「厚生労働大臣の指定」を受けた教育訓練を受けた場合に、その費用の一部を支援するものです。
まとめ
事業主の立場では、以前は当たり前だった60歳定年が、労働者が希望すれば再雇用、定年延長など、65歳まで働くことができるようになりました。さらに65歳を過ぎても若手の人材育成、人材確保など、シニア層の労働力を求める事業主は多くなっています。
また労働者の立場では、日本の公的年金は原則65歳からの受け取ることができますが、年金で賄えない、不足する部分は自助努力が必要となります。平均寿命が延び老後の生活の不安や生きがいのため、健康寿命を延ばしつつ、長く働きたいと考える人が増えています。
働き方の多様化から65歳以上の労働者の雇用保険の加入は、労働者が安心かつスキルアップしながら働くことができ、また事業主の立場においても人材確保など、メリットにつながると考えられます。
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、三藤FP社会保険労務士事務所 代表、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士