更新日: 2020.09.03 その他保険
【パート・アルバイトの方必見!】社会保険の加入拡大により、扶養内の働き方はどうなる?
短時間労働者の場合も、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務をしている一般社員の3/4以上である人は被保険者になります。3/4に満たない場合でも、平成28年10月1日からは、特定適用事業所等に使用されていて、かつ以下の条件をすべて満たす場合は被保険者になります。
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上ある
(2)継続して1年以上使用されることが見込まれる(現行)
(3)報酬が8万8000円以上である
(4)高校生、大学生でないこと
特定適用事業所とは、現行、被保険者数の合計が1年で6ヶ月以上、500人を超えることが見込まれる事業所、国・地方公共団体に属する事業所。または、500人以下でも労使合意で申し出た任意特定適用事業書をいいます。
これが令和2年の年金法改正によって、適用事業所の規模要件の引き下げ、従業員の勤務期間要件が見直されます。他にも、非適用業種の見直しがされます。
さらに、健康保険についても厚生年金保険と一体として適用拡大がされ、国や地方公共団体で働く時短労働者に、公務員共済の短期給付が適用になります。
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
企業規模の引き下げ、非適用業種見直し
今回の改正では、短時間労働者を被用者保険の適用対象とする企業規模の要件を、段階的に引き下げられるスケジュールが明らかにされました。
現在500人規模の適用が、2022年10月に100人超規模の企業まで適用となり、2024年10月に50人規模の企業まで適用となります。これにより、100人超に引き下げた場合45万人、50人超に引き下げた場合65万人が新たに保険適用されます。
ここで、企業規模要件の従業員数は適用拡大前の被保険者数で、フルタイムの労働者・通常の労働者の3/4以上労働時間の短時間労働者をいいます。月ごとに従業員をカウントして、直近12ヶ月のうち6ヶ月で基準を上回ったら適用の対象になります。
法人事業所で常時1人使用される者がいる、法定16業種に該当する個人の事業所で常時5名以上使用される者がいる場合は強制適用になります。しかし、5人以上使用される者がいても、16業種以外の業種(非適用業種)であれば強制適用外です。
令和2年の法改正によって非適用業種の見直しが行われ、非適用業種のうち、弁護士・税理士・行政書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁護士・公証人・開示代理人の、法律・会計事務を取り扱う士業が適用業種に追加されます。
壁の位置は変わらない
ところで、従業員の加入については、前述したように現行以下の条件をすべて満たす必要があります。
(1)【労働時間要件】1週間の所定労働時間が20時間以上ある
(2)【勤務期間要件】継続して2ヶ月超使用されることが見込まれる(1年以上から2ヶ月超に改正)
(3)【賃金要件】報酬が8万8000円以上である
(8万8000円には残業代や賞与などの臨時的な賃金は含みません)
(4)【学生除外要件】高校生、大学生でないこと
今回の年金法改正で、(2)の勤務期間要件が2ヶ月超とされます。フルタイム等の被保険者と同様の要件ですが、勤務期間要件が短くなった分、時短労働者が早い時期に厚生年金に加入しやすくなります(厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要」より引用)。
また、今回の法改正では、勤務期間要件以外の見直しはされません。よって、「◯◯円の壁」の位置は変わりません。社会保険の被扶養者の判断は年間収入130万円未満ですが、範囲内でも、雇用先が特定適用事業所等であり被用者要件をすべて満たせば、被用者となり扶養から外れます。
しかし、週20時間未満、月8万8000円未満、学生であることに1つでも当てはまれば、被用者にはなりません。例えば月8万8000円以上の賃金要件を満たしていても、要件をすべて満たさなければ被用者とはなりません。
そのまま、向こう1年の年収が130万未満に収まれば被扶養者のままですが、130万円以上に見込まれる場合は、自分で国民年金・国民健康保険に加入しなければなりません。
少ない収入で社会保険に加入するメリット
105万6000円(月8万8000円)の壁と130万円の壁では大きな違いがあります。加入する年金、健康保険の制度が違ってくるからです。
105万6000円で扶養から外れる場合、厚生年金・健康保険に加入しますが、社会保険加入要件に適用しないまま収入が130万以上の場合は国民年金・国民健康保険に加入になります。令和2年度の国民年金保険料は1万6540円、年金額78万1700円です。
一方、厚生年金保険料は標準報酬月額8万8000円で1万6104円(保険料率18.3%)ですが、労使折半のため8052円です。他に健康保険料4364円(介護保険を含まない)の負担が発生します。130万円の場合、1月あたりの標準報酬月額が11万円になり、1万65円の厚生年金保険料、1ヶ月働くと基礎年金に上乗せされる年金が約600円増えます。
ちなみに、万が一の時に受け取れる障害厚生年金・遺族厚生年金もあります。健康保険も厚生年金保険と一緒に適用拡大となりますが、自分がケガや病気で働けない場合に給与の2/3が給付される傷病手当金があります。
105万6000円については、「壁」と言うよりも、本来ならば加入できなかった保証制度へ加入できるメリットと見るのが良いでしょう。
(参考・引用)
厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要」
厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律 参考資料集(令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布)」
厚生労働省「平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています(社会保険の適用拡大)」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者