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セゾン投信・中野社長に聞く③「積立はやめない」が正しい投資行動です
Interview Guest : 中野晴啓(セゾン投信株式会社 代表取締役社長)
配信日: 2018.03.09 更新日: 2019.01.11
Interview Guest
1987年クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて資産運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金運用のほか、海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。
その後、クレディセゾンインベストメント事業部長を経て、2006年セゾン投信株式会社を設立。
現在2本の長期投資型ファンドを運用、販売しており、預かり資産は2,000億円を超える。また全国各地で年間150本以上の講演やセミナーを行い、積み立てによる資産形成を広く説き「積立王子」と呼ばれる。
公益財団法人セゾン文化財団理事、一般社団法人投資信託協会理事。
著書に『預金バカ』(講談社α新書)、『はじめての人が投資信託で成功するたった1つの方法 』(アスコム)他多数。
interviewer:山中伸枝(やまなか のぶえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)
株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役
1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。メーカーに勤務し、人事、経理、海外業務を担当。留学経験や海外業務・人事業務などを通じ、これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナーとして、講演・相談・執筆を中心に活動。
顧客ニーズに応えることは、顧客本位ではない!?
山中
いよいよ「つみたてNISA」が始まり、「積立王子」はお忙しいと思うんですけど、やっぱり株価の上がり下がりを気にして、つみたてはいつ始めたらいいんですかって質問多くないですか?
—中野 積立は、上がる下がる全く関係なく、始めるタイミングはそもそもないです。でも多くの人は実は合理的な行動をしなくて、セゾン投信のお客様でさえとあえて言いますけど、上がってくるときに積立額を増やし、下がってきて相場が低迷しているときに、不安になって積立額を減らしたり、積立を止めちゃったり、あるいは解約しちゃったり、こういう人達は多いんですね。
積立投資家を100パーセントにすること、それから、途中で間違った行動をとる人をゼロにすること、限りなく理想に近いですけど、僕らはそれを目指しています。
山中 「つみたてNISA」、始まってまだ間もないですけど、実際感触はいかがですか。
—中野 正直、業界全体としてはすごく冷ややかで、盛り上がりは欠いてますね、残念ですけど。「つみたてNISA」いい制度だよね。だけど、非課税の投資枠は年間たった40万円でしょ、20年続けたって、たった800万円しか投資できないんですよと。
こういった考え方が今の日本の金融業界のひとつの常識です。僕は、毎月1万円ずつ積み立てていくことの大変さ、それを本当に本気で、命がけに近い形で続けていこうと頑張っている普通の生活者をたくさん知ってるから、40万円がたかだかとは到底思えないです。
山中 まあ金融機関の人って、お金を持っている人がお客さまですからね。その方たちにとって800万は非常に少なくて、たった40万?って思いますよね、しかも積立でって。でも、資産形成をこれから始めようという方にとっては40万円は大きいですよね。
—中野 これまで金融業界は、そういう人達の心の声や悩みを一切見てこなかったということでしょ。さらに言うと、お客さんが求めているのは、今一番値上がりしそうなもの、今一番儲かりそうなところだ。この顧客ニーズに応えることこそが顧客本位であるというのが、今の業界全体のコンセンサスなんですよね。でも、違うの、わかります?
山中 わかりました、すごく。
—中野 顧客ニーズに応えることは、顧客本位ではないんですよ。むしろ全く違うケースの方が多い。なぜなら、情報に対して、お客さんと我々のあいだには情報の量や質、専門知識を持っているかどうかなどギャップがあるので、大概、お客さんは、間違ったことを求めてくるんだと、僕らはそういう前提にたたなきゃいけないんです。
山中 確かに。拾いやすいところ引っ張ってあげてるだけですよね。本質的なところは何も解決していない。
—中野 毎月分配型ファンドを売るのを正しいと思っている金融機関ってそれでしょ。「お客さんが求めるから売っているんです、毎月分配金をもらうことを喜んでいるお客さまがいっぱいいるんです、我々はそれに徹底してこたえてきました、これが顧客本位です。」と。
山中 求められているものを提供するだけが顧客本位って、確かに違いますね。
—中野 もっと言うと、間違いを正すっていうことも必要なんですよ、お客さん、そういう選択をしてたら、長期の財産づくりはおぼつきませんよと、これが顧客本位の業務運営なんです。
山中 なるほど、そうですね。これまでの投資の違和感って、勝手にお金預かって、勝手に運用して、なんかうまくいかなくなっちゃうとごめんなさいって記者会見をしてるイメージしかなかったんですよね。
—中野 それこそ、金融機関の「投資は自己責任」っていう逃げ道です。
山中 自己責任って言われたら、何も言えませんよね。でも運用の責任者が顔を見せてくれて、話が聞けてとなると、それはすごく存在大きいかなって思います。
—中野 大事なのは、ちゃんと自分の頭で判断、行動して決定してもらうことです。最終的に判断するのは皆さん自身ですよ、参加するもしないも自由ですよ、ここがとても大事だと思うんですよ。
つみたてNISAはすべての年齢で始めるべき
山中 2017年は老後資金作りに最適な制度としてiDeCoが、また2018年は、つみたてNISAが始まり、資産形成の環境が整ってきましたよね。でも60歳までお金がおろせないiDeCoよりはつみたてNISAの方がシンプルで使いやすいですね。
—中野 iDeCoって、躊躇する一つの理由は、60歳まで自分が出したお金が手の届かないことろにいっちゃうっていう、なんとなく不安がある。だから、投資は始めなきゃいけないけど、iDeCoはちょっとっていう人は多い。
山中 コミットするのが大変みたいな。
—中野 そう、だったら先につみたてNISAからってありですよね。
山中 何歳でもできることがつみたてNISAのいいところですよね。。
—中野 ただ年配の方は、あと20年も生きるわけないだろうって言って敬遠する傾向にあるようです。でもね、これってもう挨拶みたいなもので、私はあと5年で死ぬんだよって言いながら死ぬ人いないですからね。
山中 一つには保険会社や銀行は個人年金を売りたいわけですよね。自分の20年後に先送りするお金ってことであれば、個人年金もつみたてNISAも同じなんですけど、「年金」って言葉の方が安全な感じがするんですよね。
でも個人年金保険って年金収入だから受け取る際に課税されるし、社会保険料の対象にもなるんですよね。年収が高くなると医療や介護の自己負担もあがりますし。でもつみたてNISAなら年収にならないので、むしろつみたてNISAの方が良いんですよね。
—中野 確かにそれもそうですね。
山中 夫婦で800万円、お金の先送りをして、20年後に大きく育ったら、それを生活にあてたらいいじゃないですか、年金と同じ仕組みですよね。つみたてNISAは年代に関わらずやるべきなんですよ。
(セゾン投信・中野社長に聞く④に続く)
Interview/Text :山中伸枝 (やまなか・のぶえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)
人生100年時代のビジョンマップ:心もお財布も幸せに生きよう!
- 1: セゾン投信・中野晴啓社長に聞く①知って欲しい!産地直送の投資信託
- 2: セゾン投信・中野社長に聞く② 投資を自己責任と丸投げするのは金融業界の傲慢だ
- 3: セゾン投信・中野社長に聞く③「積立はやめない」が正しい投資行動です
- 4: セゾン投信・中野社長に聞く④ ずっと運用のプロとして走ってきた