身近な電気の話 エアコン節約術
配信日: 2017.08.20 更新日: 2019.01.08
熱中症とは高温の環境下で、体内の水分、塩分(ナトリウム)などのバランスが崩れたり、体内の調整機能が働かないことによる様々な障害が起こることを言います。病院で点滴を受けただけで回復することもありますが、手当てが遅れ重症化すると生死にかかわることもありますから要注意です。そんなときはエアコンを積極的に活用し室内環境を整えてほしいですね。
フリージャーナリスト
中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。
エアコンの使い方の誤解や勘違い
東日本大震災後、夏場の電力不足でエアコンの使用を控えた時期もありましたが、その後状況は変わり、現在は、夏場の電力不足はほぼ解消されています。電力の供給にゆとりがあります。テレビの天気予報番組などでも猛暑の警報が出されるような日は、お天気キャスターもエアコンの使用を促していますね。良いことだと思います。
そうはいっても「エアコンは使っていません」という高齢者が多いのも事実ですね。「昼は使うけど、夜は使いません」と言う人もいますし、エアコンの風にあたると冷えすぎて体調を崩すという人もいます。エアコン嫌いの人は結構います。その背景にはエアコンの使い方に関する誤解や勘違いもあるのではないでしょうか。快適な暮らしを支えてくれる上手なエアコンの使い方を調べてみましょう。
スイッチのこまめなオン・オフはお得?
エアコンは家庭の中で一番電気を使う製品の一つです。多くの人は電気代が高くつくと感じているためか、使う場合でも、もったいないので初めから微風運転や弱風運転にしていますという話をよく聞きますが、実は、その運転方法が逆に電気代を高くしてしまっているのですよ。エアコンを使う際は自動運転機能を利用して、設定温度(例えば28℃)まで一気に下げてしまう方が、電気代はかからず安くつくのですね。これはエアコンの仕組みにヒントがあります。詳しく見てみましょう。エアコンの冷房機能は室温を設定温度に下げるまでが一番電気代がかかります。ですから自動運転モードにして、できるだけ短時間に強風運転で設定温度まで下げてしまえば、あとは自動的に微風運転に切り替わりますから、あまり電気代はかかりません。自動運転機能は、設定温度に下げるまでは強風運転、その後は微風運転をして電気代を一番安く抑えられる効率的な運転を行うように設定されています。エアコンは自動運転がお勧めです。
もう一つの勘違いは省エネのためには、スイッチのこまめなオン・オフ操作をする、です。部屋が涼しくなったからと言ってスイッチを切り、しばらくして暑くなってきたからと言って、再びスイッチを入れるというオン・オフの繰り返しも結果として電気代が高くついてしまいます。一度涼しくなったらそのまま自動運転で室内温度を一定にしておく方が電気代は安くつきます。それは、冷房はスタート時に一番電気を消費するからですね。
冷房より除湿の方が電気代は高い?
意外に知られていないのが冷房と除湿の関係です。室内が暑いと感じるのは室温の高さだけではありません。湿度も大いに関係しています。梅雨時の蒸し暑さが典型ですね。室温が低くても湿度が高いと蒸し暑く感じ、設定温度以上に暑さを感じることがあります。逆に、室温が高くても湿度が50%以下だとさらりとし涼しく感じることがあります。除湿機能の使い方もポイントの一つですね。
エアコンは冷房より除湿の方が電気代は高いとの声があります。本当にそうでしょうか。やや専門的になりますが、エアコンの除湿機能には「弱冷房除湿」と「再熱除湿」の二つの機能がることをご存知でしたか。電気代が高くつくといわれているのは、その内の「再熱除湿」機能を使った場合なのですね。
エアコンには暖房機能の下記3つの機能があります。
1)温度を下げることを優先した「冷房機能」
2)湿度を下げ部屋をドライにすることを優先した「除湿機能」
3)冷房しながら除湿する「弱冷房除湿」
この機能を電気代の安い順に並べると、弱冷房除湿<冷房<再熱除湿―となり弱冷房除湿が一番安いのです。運転機能の違いによって違うのですね。理由は下記の通りです。
1)冷房は、エアコンが室内の空気を取り込み、空気中の「熱」を取り除き、冷たくなった空気を室内に戻します。熱を取り除く際に水滴ができるので除湿の効果もあります。
2)弱冷房除湿は、エアコンが室内の空気を取り込み、吸い込んだ空気を冷やして「水分」を取り除き、水分が取り除かれた空気を室内に戻します。
3)再熱除湿は、エアコンが室内の空気を取り込み、吸い込んだ空気を冷やして「水分」を取り除きますが、水分を取り除くために冷やされた空気を、温め直してから再び室内に戻します。
再熱除湿は、取り込んだ空気を冷やすことで空気中の「水分」を取り除いたのちに、そのまま室内に戻しますが、そうすると部屋が冷えすぎてしまうデメリットがあります。このため空気を温め直してから室内に戻しているので、空気を温め直す分だけ電気代が割高になるのです。
運転機能別に電気代はどのくらい違う?
運転機能別に電気代はどのくらい違うのか、ある比較サイトの試算を紹介しましょう。
一般的な10畳用の2・8kWクラスのエアコンで比較します。次のようになります。冷房運転をした場合の消費電力は770Wで、1日8時間使って1ヶ月の電気代は4620円ですが、暖房運転すると消費電力は冷房運転の1.13倍の870Wとなり1ヶ月の暖房運転の電気代は5220円と試算されています。暖房の方が割高です。
除湿運転には二つの方法があることを紹介しましたが。弱冷房除湿運転だと1ヶ月の電気代は1663円で、冷房運転の3分の1程度で済みます。しかし再熱除湿運転すると6283円かかり、冷房運転の場合の1.35倍になります。ただ冷房除湿は、電気代は安のですが、温度を下げすぎてしまう難点があります。気を付けたいですね。電気代がかかる再熱除湿にもメリットもあります。湿気が多く肌寒い梅雨の季節やエアコンをつけっ放しだと寝冷えが心配という人たちにとっては有効な運転方法です。このようにエアコンには機能別に目的が違いますから、どのような冷房をしたいのかを考えて運転方法を選択すれば費用対効果の高いエアコン生活が楽しめますね。
またエアコンの性能や電気代などはダイキン、パナソニック、シャープなどエアコンメーカーによっても、また同じメーカーでも機種によって異なります。具体的な目安を知りたい場合は、PCでメーカーのHPを開くと様々な比較データが一覧できます。参考にすると良いでしょう。
買い替えモ電気代の節約の方法のひとつ
日本の家電機器はエアコンに限らず省エネ性能や経済性が年々向上しています。技術の進歩には目覚ましいものがあります。これは日本政府が進めている省エネ制度によるものと思われます。例えば、エアコンの消費電力を比べるとこの10年間でおよそ40%の省エネを達成しています。その省エネ制度とは「トップランナー制度」と「省エネラベリング制度」です。トップランナーとは、電気機器に関わる性能向上に関するメーカーの判断基準(省エネ基準)を、現在商品化されている製品のうち、エネルギー消費効率がもっとも優れているもの(トップランナー)の性能、技術開発の将来の見通しを勘案して定めるというものです。
その上で、省エネラベリング制度は、家庭で使用される製品を中心に省エネ法で定めた省エネ性能の向上を促すための目標基準(トップランナー基準)を達成しているかどうかを事業者が製品にラベル表示する制度です。
消費者が製品を選ぶ際の省エネ性能の比較などに役立ちます。省エネラベルの内容は資源エネルギー庁のHPに細かく表示されています。壊れてもいないのにエアコンを買い替えるのはもったいないと思うこともありますが、省エネによる運転経費の削減効果を考えると、買い替えをした方が電気代の節約ができることがあります。加えてCO2の削減に貢献できることがあります。ぜひ省エネラベルの比較検討してみてはいかがでしょうか。