パート主婦は夫の扶養から外れない方が本当にお得なのか
配信日: 2018.02.12 更新日: 2024.10.10
しかし、それは本当にお得な働き方なのでしょうか。扶養の範囲で働くということは世帯収入の金額を限定しているということなので、夫の収入が大きく増えない限り、世帯収入も大きく増えることはありません。そう考えると、扶養の範囲で働くということは、家計にとって必ずしもお得といえないのかもしれません。
執筆者:前田菜緒(まえだ なお)
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)
家計が改善する働き方とは
扶養から外れれば、社会保険料や税金等の支出額が増え、その金額は大きいものとなります。とはいえ、それを上回るだけの収入を得られるならば、扶養から外れても家計にとってはプラスになります。
では、ここで扶養の範囲で働いた場合と扶養の範囲を超えて働いた場合の、家計への影響を考えてみましょう。扶養とは、社会保険上の扶養と、税制上の扶養の2種類がありますが、今回は、社会保険の扶養から外れた場合のケースを考えたいと思います。
例えば、下記のパターンであれば
妻:年収129万円(パート)
夫:年収700万円(会社員)
※年収が106万円あるいは130万円以上になると社会保険料の負担が発生。今回のケースは、年収130万円以上で社会保険料負担が発生するものとする。
(1)妻が129万円の年収の場合
(2)妻が180万円の年収の場合
それぞれが、家計全体の可処分所得を計算した表です。可処分所得とは、収入から税金や社会保険料を除いた、いわゆる手取りのことです。
(3)年収129万円と180万円の場合の差
こちらの表を見ると、妻の年収が180万円に増えることで税金や社会保険料の負担は、家計全体で増えているのがわかります。さらに夫は適用される配偶者特別控除の金額が減ったため、手取りである可処分所得は6万3000円減っています。しかし、それ以上に妻の収入が増えたため、家計全体としては15万2000円のプラスになっています。
しかもそれだけではありません。妻は厚生年金を支払うことになりますので将来受け取る年金額も増えるのです。
働き方で人生が変わる
厚生労働省の平成28年賃金構造基本統計調査によると、時給の全国平均は1075円だそうです。今回、年収が50万円アップしたケースを取り上げましたが、時給1000円の場合、年収を50万円アップするには、1カ月当たり40時間多く働くことになります。もし平日週5日パートをしているとすれば、1日2時間働く時間が増えるという計算ですね。
2時間が長いか短いかは、家庭の状況によって捉え方はさまざまだと思います。考え方によっては、働く時間を増やすことは決して損ではありません。パートから正社員になったという話も、最近では珍しいことではなくなってきました。正社員になれば、収入が増えることで家計が大きく改善するのはもちろんですが、自分のキャリアアップにもなります。
女性の人生には、働き方を考えるステージが何度か訪れます。家計にとって家族にとって、そして自分自身にとってベストな働き方を見つけていきたいですね。
Text:前田 菜緒(まえだ なお)
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP(R)認定者