入院したら1人部屋に 差額ベッド代を払わなくていい場合とは
配信日: 2018.02.13 更新日: 2019.01.10
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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差額ベッド代とは
差額ベッド(特別療養環境室)代が徴収されるのは、個室(1人室)に入ったときだけではありません。差額ベッド代を徴収できるのは、1部屋のベッド数が4床以下、1人当たりの面積が6.4平方メートル以上で、仕切りカーテンなど病床のプライバシーを確保する設備(個人用の私物収納設備、照明、小机、椅子等)があることが必要です。
厚生労働省の「主な選定療養に係る報告状況」によると、平成27年(7月1日現在)の差額ベッド代の1日平均額は6155円です。差額ベッド代は最低で1日50円、最高で1日37万8000円となっています。
部屋別の平均差額ベッド代(1日当たり・税込)
1人室 7828円
2人室 3108円
3人室 2863円
4人室 2414円
仮に、1日1万円として30日入院したら、差額ベッド代が30万円にもなります。もし、高額の差額ベッド代を請求されたら、厚生労働省の通知を活用することで、差額ベッド代を払わなくて済む場合や、いったん支払った差額ベッド代を取り戻すことが可能です。
差額ベッド代を徴収していい場合、悪い場合
厚生労働省の通知(平成26年3月26日保医発0326第1号)に、差額ベッド代を請求するに当たって病院が行うべきことや、請求してはいけないケースについて記されています。
まず、病院が患者に対して行うべきこととして、
(1)特別の療養環境の提供は、患者への十分な情報提供を行い、患者の自由な選択と同意に基づいて行われる必要があり、患者の意に反して特別療養環境室に入院させられることのないようにしなければならないこと。
(2)特別療養環境室へ入院させた場合においては、次の事項を履行するものであること。
1.保険医療機関内の見やすい場所、例えば、受付窓口、待合室等に特別療養環境室の各々について、そのベッド数、特別療養環境室の場所及び料金を患者にとってわかりやすく掲示しておくこと。
2.特別療養環境室への入院を希望する患者に対しては、特別療養環境室の設備構造、料金等について明確かつ懇切丁寧に説明し、患者側の同意を確認のうえ入院させること。
3.この同意の確認は、料金等を明示した文書に患者側の署名を受けることにより行うものであること。なお、この文書は、当該保険医療機関が保存し、必要に応じ提示できるようにしておくこと。
次に、患者に特別療養環境室に係る特別の料金を求めてはならない場合としては、具体的には以下の例が挙げられています。
1.同意書による同意の確認を行っていない場合(当該同意書が、室料の記載がない、患者側の署名がない等内容が不十分である場合を含む)。
2.患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合。
3.病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合。
意に反して差額ベッド代を請求されないためにすべきこと
入院中、治療計画書や手術の同意書などさまざまな書類にサインします、そのなかに、差額ベッドの同意書が紛れ込んでいる可能性があります。
サインしなければならない書類については病院からよく説明を受けましょう。また、契約書はよく読んでからサインしてください。差額ベッドの部屋を希望しないとき、治療上の必要がなければ、差額ベッドの部屋は希望しないことを病院にはっきり伝えることが大切です。
意に反して差額ベッド代を請求されたら
希望していないのに差額ベッドの部屋に入れられ、設備構造、料金等について明確かつ懇切丁寧に説明を受けていなければ、差額ベッド代を請求するのは厚労省の通知に反しますので、この通知を示して交渉してみましょう。それでもらちがあかないようであれば、地方厚生局に相談してみましょう。
高額な差額ベッド代を支払ったあとでも取り戻せる可能性があります。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。