更新日: 2019.07.04 その他暮らし
起業は3年目が分岐点?そのとき陥りやすい3つの落とし穴とは
しかも、ステージが上がる度に、その経営課題の内容も変化していくことを感じます。
事業においても、人と同じように、ステージがあり、創業期、成長期、成熟期、衰退期というライフサイクルがあるといわれています。成長期、成熟期を少しでも安定的に、そして寿命を長くするためには、創業期が重要です。特に、3年目あたりが大きな一つの分岐点になってくることが多いです。
そこで、今回は、起業して3年目に陥りやすい3つの落とし穴をお伝えします。
執筆者:小泉大輔(こいずみ だいすけ)
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役
公認会計士・税理士
1970年東京都生まれ。上智大学経済学部卒業後、公認会計士となり、朝日監査法人(現在:あずさ監査法人)で監査実務、及び、M&A,株式上場支援に携わる。
2003年に、独立し、(株)オーナーズブレインを立ち上げ、現在は代表取締役であるとともに、2社の上場会社の役員も兼任する。共著著書に『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)』DVD『できるビジネスマンDVD+財務諸表チェックのキモ』 200年7月(創己塾出版)がある。
http://ownersbrain.com/
1.マンネリ化
一つ目のポイントは、マンネリ化です。起業した初年度、2年目は、時間を忘れてがむしゃらに頑張ることから、売上も利益も急成長しますが、3年目にもなると、ある程度、状況も見え、売上、利益の成長率が止まったり、緩やかになったり、一度、踊り場を迎えるタイミングを迎えることがよくあります。
ここで、経済産業省の「ベンチャー起業の経営危機データベース~83社に学ぶつまずきの教訓~」を見てみましょう。
http://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/kikidatabase/index2.html#ven10
スタートアップ期から、成長期に向かう過程での失敗の原因の多くには、「経営管理能力の欠如」、「商品・マーケティング 戦略のミス」が挙げられています。
ここで大事になることは、商品力と売り方を磨き続けるということです。特に、商品を磨くためには、一目見て、そして、使ってすぐ、誰にでもわかる優れた差別化を常に意識すること。
そして、お客様に商品・サービスを1回提供して満足せずに、一人で多くのリピーター、そして、自社を口コミで宣伝していたであろう優良顧客を増やすことが大事です。一般的には、売上は、売上=単価×数量で示されますが、同じお客様にも何度も利用していただくために、これに、回数を加え、売上=単価×数量×回数で考える必要があります。
1,2年目で、うまくいったことを過信せずに、事業がマンネリ化しないように、常に、イノベーションや改善を意識しなければなりませんね。
2.カネ回り
2つ目のポイントは、カネ回りです。売上が増加し、利益も増えているのにも関わらず、会社の経営が年々苦しくなっている…という悩みをお持ちの方が少なくありません。
それは、まさにカネ回りの問題。
これは、モノを仕入れ購入代金を支払う、あるいは、社員に給与を払うタイミングよりも、売上で代金が入金されるタイミングが遅いことから発生する問題です。
事業規模が拡大すればするほど、金額も大きくなり、この支払と入金のタイミングのズレは深刻です。
このタイミングを改善するために、代金の一部を早めに回収する、売掛金をファクタリングする、あるいは、不足する部分のお金を前もって調達するなどなどさまざまな方法があります。
事業の規模が拡大する前に、是非、カネ回りの工夫を検討してみてください。
3.社員を増やし拡大路線に向かうか、向かわないか?
最後のポイントは、人です。
ここで、経済産業省の中小企業白書を見てみましょう。
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/PDF/chusho/03Hakusyo_part1_chap2_web.pdf
いずれの成長タイプも、ステージが進むにつれて課題は資金調達から人材確保へと移行します。
(1)創業期:資金調達の課題(60.0%)、質の高い人材確保の課題(28.3%)、販路開拓の課題(26.4%)
(2)成長初期:資金調達の課題(47.8%)、質の高い人材確保の課題(47.5%)、量的な労働力の確保(34.4%)
(3)安定・拡大期:質の高い人材確保の課題(57.6%)、組織体制の課題(36.4%)、量的な労働力の確保(32.1%)
起業してからもずっと、規模を拡大せずに、個人事業のまま、あるいは、法人設立しても一人会社のままの方もいらっしゃいます。
しかしながら、事業の規模を大きくするためには、人が必要になります。3年目は、まさにその分かれ目。今後ご自身の事業をどのように伸ばしていくか。その方向性によって、事業計画を見直す必要があります。
事業を拡大するのであれば、早い段階で、人の採用も検討するともに、現場業務は、他の人に任せ、トップは、組織設計、業務の仕組化を検討するなど、経営トップが行うべきことに集中する必要があります。
4.最後に
3年目あたりで、誰しもが経験する踊り場。そこで、飛躍できるかどうかは、現状の課題をしっかり認識して、次のステージに向かって戦略を立てる必要があります。その際には、上記の3つのポイントを考え、今後の事業をどのようにするか、改めて会社のビジョン、理念、事業計画を見直すとよいでしょう。
それでも、ぶち当たった壁を乗り越えるためにはどうしたらよいか…
私のメンターの一人から素晴らしい言葉を教わりました。
“人に会え、人に話せ、人につくせ”
3年目には、まさにこれからの分岐点、そんな時期だからこそ、大事にしたい言葉ですね。
Text:小泉 大輔(こいずみ だいすけ)
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役 / 公認会計士・税理士