更新日: 2019.01.08 その他暮らし

管理費などの滞納問題 本人の「配偶者」「父母」などに支払い請求できるのか?

執筆者 : 高橋庸夫

管理費などの滞納問題 本人の「配偶者」「父母」などに支払い請求できるのか?
マンションにおけるトラブルのひとつに、管理費・修繕積立金(管理費等)の滞納問題が挙げられます。

滞納が長期化し、滞納金額が大きくなると回収が困難になるとともに、マンション全体の収支を圧迫することとなり、計画的な修繕工事等の実施に影響を与えることとなります。

それでは、滞納管理費等がある場合に、その滞納をしている滞納者(区分所有者本人)に滞納管理費等の支払義務があることは当然ですが、それ以外の人に滞納管理費等を請求することは可能なのでしょうか?
高橋庸夫

Text:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

【滞納者の配偶者に支払義務はあるか?】

まず最初に思いつくのは、管理費等を滞納している区分所有者の配偶者かもしれません。
 
マンションの所有名義は夫の個人名義であっても、同居しているのであれば、妻も支払義務を負うべきではないかと考えるのはごく自然な考えであるともいえます。
 
実際に、民法761条は「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う」と定めており、この条文が使えるのではないかとの考えもあり得ます。
 
しかし、マンションの管理費等は、マンションの部屋を所有することによって管理規約に基づいて支払義務が発生する債務であり、第三者と法律行為をしたときには当たらず、管理費等支払債務はこの条文の債務には当たらないと考えられます。
 
したがって、管理費等を滞納している区分所有者の配偶者には、原則として滞納管理費等の支払を請求することはできません。
 
ただし、配偶者もマンションの共有持分を有している場合は、全く話は別です。マンションの管理費等の支払義務は、金銭債務であっても所有する専有部分の財産的価値、利用価値の維持、向上という各持分権者が共同不可分に受ける利益を得るための費用負担であることから、その性質上、不可分債務とされています。
 
そのため、共有者は不可分的に管理費等の支払義務を負うこととなり、たとえ持分割合が少ない場合でも滞納管理費等全額の支払義務を負うことになります。
 
また、仮に離婚した場合に、マンションの帰属については双方で合意していたとしても、所有権の移転登記を怠っていると、双方が支払義務を負うこととなる場合があるので注意が必要です。
 

【滞納者の父母、子に支払義務はあるか?】

世間一般的には、子どものしたことは親の責任などといわれます。法律でも親の責任を認める条文があったりします。(民法714条1項不法行為など)
 
しかし、マンションの滞納管理費等については、区分所有者本人が滞納管理費等の支払義務を負い、父母や子ども、親戚などに支払義務はありません。法的に支払義務のない親族などに滞納管理費等の支払を迫った場合、その督促行為が不法行為に当たることもあり得ますので注意が必要です。
 
ただし、滞納している区分所有者本人がすでに死亡し、相続が発生している場合には、原則として滞納管理費等の支払義務も承継することとなりますので、全く話は別です。
 

【滞納のあるマンションの部屋の賃借人(占有者)に支払義務はあるか?】

賃貸人(区分所有者)が管理費等を滞納しているマンションの部屋を借りて住んでいる賃借人(占有者)には滞納管理費の支払義務があるのでしょうか。
 
賃借人が「管理費」や「共益費」などの名目で毎月支払を行っていることがありますが、それはあくまでも賃貸人と賃借人との間の契約によるものであって、マンション管理組合と賃借人との間の権利義務に影響を及ぼすものではありません。
 
つまり、マンションの部屋を借りて住んでいるだけの賃借人には、原則として滞納管理費等の支払義務はありません。
 

【滞納のあるマンションの部屋を買い受けた新所有者に支払義務はあるか?】

区分所有法第8条には、滞納のあるマンションの部屋を購入した新所有者は、前所有者の滞納管理費等の支払義務を承継すると定められていますので、マンションの管理組合は新所有者に対して、滞納管理費等の支払を請求することができます。
 
以上結論としては、原則として滞納管理費等の支払義務があるのは、区分所有者本人(新所有者含む)のみであり、第三者に請求することはできないということになります。
 
Text:髙橋 庸夫
ファイナンシャル・プランナー,住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士