奨学金返還を延滞してしまう人は、返還できる人と何が違うのか? 延滞の原因を探ってみた
配信日: 2018.05.30 更新日: 2019.01.10
新年度のスタートとともに、新社会人の約半分が奨学金返還を始めることになりますが、これまでの返還者には途中で延滞して破産に至った人もいます。
延滞に陥る原因を探ってみましょう。
Text:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
延滞する人としない人の違いは?
日本学生支援機構では、毎年、奨学金返還者を延滞している人としていない人に分けて、アンケート調査しています。以下の3つの調査結果を見ると、奨学金を申し込むときから、延滞する人としない人には差があるのが分かります。順番に見ていきましょう。
1.奨学金を申請したとき、誰が書類作成をしたか?
ずっと返還している人のうち52%は、自分一人で書類を作成したと回答しています。延滞している人でも33.2%は本人が書類を作成しているのですが、一番多いのは親だけで作成してしまった人の39%で、「分からない」と回答した人が6.3%いるのも気になります。
やはり、できるだけ学生が自分で書類を作成するほうが、しっかりした返還につながるようです。
2.奨学金を申請しようと決めた時期
延滞せず返還している人では、63.7%が高校卒業までに奨学金申請を決めたと回答しているのに対し、延滞者は41.2%が高校を卒業してから申請を決めたとしています。
進学先が決まり、学費を納入することになってから奨学金の手続きをするのでは、行き当たりばったりという印象です。
ただ、親がきちんと伝えていなかったのであれば、高校生が自分の家庭の経済状況をよく分かっていなかったとしても、仕方ないことかもしれません。学費を含め、進学について親子でしっかり話し合っておくことが重要です。
3.奨学金は返還しなければならないと知った時期
延滞していない人では、奨学金の申し込みをする前に奨学金は、返還しなければならないと知っていたのが89.1%であるのに対し、延滞者では50.5%にとどまっています。
延滞督促を受けて返還義務を知ったという人が11.5%もいるのには驚かされます。もし、親が勝手に奨学金を申し込んだのであっても、奨学金の受給が始まるときには「返還誓約書」にサインをしなければなりません。
関心を持っていれば、郵便物などで返還義務を知る機会があったのではないでしょうか。
延滞している人の特徴は
もちろん、延滞している人の中には、病気や家族の事情などやむを得ない理由で返還できなくなった人もいるでしょう。一概に言えませんが、調査結果からは延滞する人に次のような傾向が見られます。
(1)計画的にものを考えるのが苦手
(2)自分のことを人任せにしてしまう
(3)大事なことでもよく調べずに決めてしまう
奨学金返還というハンディを背負って、新生活をスタートさせるのは大変だと思いますが、しっかり計画を立てて返還を続けることで社会的信用を得られ、自らの自信にもつながります。
将来の自分についてしっかり考え、奨学金返還と併せて、少しでも貯蓄ができるようなマネープランを立てることが大切です。
Text:蟹山 淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表