最終更新日:2019.01.10 公開日:2018.07.15
暮らし

電車の優先席で「席を譲ってください」は法律的に効力があるのか?

公共交通機関には、高齢者や体の不自由な方、妊婦さんなどの着席が優先される「優先席」が設けられています。しかし、その定義はあいまいです。
 
松葉杖をついて、もしくはマタニティマークをつけて優先席に行ったが、誰にも席を譲ってもらえなかった…などという話も耳にします。「酷い話だなあ」と思う人もいるかと思いますが、そもそも、この「優先」は法律的に効力があるのでしょうか?
 
今回は、優先席に座る若者に「席を譲ってほしい」と頼んだしげるさんの例を見てみましょう。
 

足腰の弱い70歳のしげるさん。大学生風の男性に「席を譲ってくれませんか」と頼んだが…

70歳のしげるさん(仮名)は、小学生の孫の運動会に招待されました。
 
しげるさんの家から娘夫婦が住む町までは電車で一本ですが、1時間近くかかります。そのため、車内で立ちっぱなしだと厳しいのが正直なところです。足腰が弱いしげるさんにとって、座席に座れるかどうかは特に重要でした。
 
孫の出番が午前中にあるとのことで、しげるさんは早い時間から出かけなくてはなりませんでした。朝の9時に電車に乗ると、ピークほどではないにしても座席は埋まっており、優先席も空いていません。
 
仕方なく、しげるさんは吊革につかまりました。乗車してから30分ほど経った頃、しげるさんの足腰は痛み始めました。いつも以上に痛みます。
 
しげるさんは優先席の方に移動しました。優先席には、しげるさんくらいのご老人や妊婦さん。その中に、1人大学生風の男性がいます。見たところ、男性はヘルプマークなども付けておらず、スマホでゲームをしていました。

しげるさんは意を決して、声をかけました。「すみませんが、席を譲ってくれませんか」男性はしげるさんを見ると、きょとんとした顔で言いました。「ごめんなさい。僕も疲れているので…」
 
しげるさんは予想外の返事に驚きました。すると、近くに立っていた40代くらいの男性が、大学生風の男性に言いました。
 
「譲ってあげなよ」
 
大学生風の男性がむっとした顔をしたので、しげるさんは慌てて「大丈夫ですから、ありがとうございます」と言ってその場を離れました。
 
その後、様子を見ていた普通席の女性が席を譲ってくれましたが、しげるさんは一連の出来事でなんとも気まずい気持ちだったと言います。

*物語はフィクションです
 

高齢者の「優先席を譲ってください」というお願いは、法律的にどこまで効力があるのでしょうか。東京桜橋法律事務所の石垣美帆弁護士にお伺いしました。

今回のケースのように優先席の対象者から「席を譲って欲しい」と言われた時に、断ったとしても罪にはなりません。逆に、無理やり席を譲らせることの方が「強要罪」になる可能性があります。
 
優先席の設置自体、鉄道会社が自主的に行っているものであり、法的に拘束があるものではありません。また、老人になったら座る権利が得られるというわけではないため、「席を譲ってください」というお願いに法律的な効力は無いと考えられます。
 

優先席を譲らなくても罪にはならない

優先席を譲らなくても罪にはならないことが分かりました。
 
とはいえ、高齢者や障害のある人が困っている中で、元気な人が優先席に座っている状況には疑問を感じる人も少なくありません。
 
もちろん、「絶対に席を譲るべき」ということはありませんし、「譲ってほしい」というお願いを断る権利もあります。また、高齢者や妊婦などに当てはまらなくても、具合が悪かったり、立ち上がれないほど疲労している人もいるでしょう。そのような人に対しても、「席を譲らないなんて非道徳だ」というわけではありません。
 
ただ、席を譲る余裕のある時は困っている人に手を差し伸べる思いやりを。席を譲って欲しい時は、断られても腹を立てない思いやりを。それぞれが相手の立場になって考えることが大事なのではないでしょうか。
 
Text:FINANCIAL FIELD編集部
監修:石垣 美帆(いしがき みほ)
弁護士
中央大学法科大学院卒業後、弁護士登録。原子力損害賠償紛争解決センターでの勤務経験を持つ。「幸せになるお手伝いをする」をモットーに日々邁進中。お客様のご相談を受けるに際し、「共感力」を大切にしています。

FINANCIAL FIELD編集部

日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジェを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。

石垣美帆

中央大学法科大学院卒業後、弁護士登録。原子力損害賠償紛争解決センターでの勤務経験を持つ。「幸せになるお手伝いをする」をモットーに日々邁進中。お客様のご相談を受けるに際し、「共感力」を大切にしています。

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