更新日: 2021.01.07 その他暮らし

【親の悩み】大学の費用、どうやって用意する?学資保険?奨学金?

執筆者 : 菊原浩司

【親の悩み】大学の費用、どうやって用意する?学資保険?奨学金?
学費は人生の三大支出のひとつといわれており、計画的な準備が欠かせません。預貯金で対応する場合は、どれくらいの金額を日々貯めていけばいいのでしょうか?
 
また、預貯金以外で学費を用意しようと考えた場合、学資保険や奨学金が候補となってきます。しかし、近年は学資保険はメリットが少ない、奨学金は返済が困難といった恐怖心があります。
 
今回は、多額の学費を必要とする、大学進学への効率的な備え方について解説させていただきます。
菊原浩司

Text:菊原浩司(きくはらこうじ)

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

http://conserve-investment.livedoor.biz/

学費の準備はどれくらい?

お子さまが公立校に通っている場合、「児童手当」や「高等学校就学支援金制度」などの給付金を利用できるため、自己負担を減少させることができます。
 
しかし、大学進学時にはこうした給付金はなくなっており、多額の教育費を自己負担で賄うようになります。文部科学省の私立大学等の平成28年度入学者に係る学生納付金等調査結果についてによると大学の学費(入学金、授業料、設備使用料)は私立大に進学した場合、4年間で約450万円にもなります。
 
大学の学費は、お子さまの誕生後約20年で支払いが必要となる資金です。こうした使い道や使用時期が決まっている資金の準備に関しては、元本やリターンが変動しやすい株式などの金融商品で用意するには不向きです。満期まで保有することで元本が保証される「債券投資」や「学資保険」などの貯蓄性保険が適しています。

債券投資と学資保険

「債券投資」「学資保険」、どちらの投資方法も近年は金利低下の影響を受け、パフォーマンスの低下に悩まされています。
 
しかし、どちらも定期預金よりも高いリターンを得られ、満期まで保有することで元本が保証される仕組みを有しています。以前よりうま味は低下しているかもしれませんが、それでもメリットはまだまだ健在ですし、自己資金で学費を効率的に用意しようと考えた場合は、他に選択肢がありません。
 
「債券投資」は発行体の信用リスクにより、受け取れる利子が変動します。国債が最も高い信用力を持ちますが、利子は低め。民間会社の発行する社債は相対的に信用力が小さくなるため、利子が高くなります。債券投資は、投資条件によっては学資保険よりも高いリターンを得られる可能性があります。また、満期までの期間が学資保険よりも短いため、金利上昇に対応しやすいメリットもあります。
 
「学資保険」はお子さまの進学資金にフォーカスした保険です。満期時や進学時に祝い金が支払われます。原則として父母のどちらかが契約者、子が被契約者となり、お子さまが死亡した場合は、死亡保険金を受け取ることができます。父母のどちらかが死亡・高度障害などの一定の状態となった後は、保険料の支払いが免除されます。
加入にはお子さまの年齢に要件があります。お子さまが小さいうちから加入し、保険料の払い込みをできるだけ短期間に行うことで、リターンを高めることができます。
 
また、祝い金などはありませんが、「低解約返戻金型生命保険」を学資保険の代用とすることもできます。もしお子さまが大学に進学しなかった場合、本保険を老後資金に転用することで、老後資金の形成を効率的に進めることができます。

奨学金制度の概要

奨学金には日本政策金融公庫が実施している「教育一般貸付」と、日本学生支援機構が提供している「貸与型奨学金」「給付型奨学金」があります。各奨学金制度の違いについては以下の通りです。
 
・教育一般貸付
貸付限度額は学生1人につき350万円まで(海外に6カ月以上留学する場合は450万円まで)。有利子での貸付になります。返済期間は原則15年以内(交通遺児・母子家庭・父子家庭世帯は18年以内)です。また、学生の4親等以内の親族の連帯保証などが必要となります。
貸付に際してはお子さまの人数と世帯収入に関して上限が定められており、収入が高い・お子さまの人数が少ない場合には利用できない場合があります。
 
・貸与型奨学金
無利子の第1種奨学金と、在学中のみ無利子で卒業後は有利子となる代わりに収入や成績の要件が緩やかな第2種奨学金があります。こちらもお子さまの人数と世帯収入に上限が定められていますが、教育一般貸付よりは緩やかになっています。返済期間は貸与額によって異なり、おおむね13年~20年かけて返済を行っていくことになります。貸与型奨学金は人的保証の基準が厳しくなっており、父母の連帯保証人の他に4親等以内の親族の保証人が必要となっています。
 
・給付型奨学金
成績優秀な学生が大学などへの進学を希望しているにも関わらず、経済的な理由で進学が困難な場合に適用される、返済不要の奨学金になります。毎年資格審査が行われ、審査結果によっては奨学金の給付が中止になったり、給付した奨学金を返済するよう求められることがあります。

奨学金の返済についての注意点

奨学金を借りて大学に進学したとしても、高い給与が約束されている訳ではありません。場合によっては奨学金の返済額が過大になってしまう場合があります。奨学金の返済が困難になってしまった場合は、どのように対応すればいいのでしょうか。また、万が一、返済を滞納してしまった場合、連帯保証人と保証人にはどのような影響が及ぶのでしょうか。
 
返済困難な場合の救済策として、第1種給付型奨学金の場合は、収入に応じて返済額が変動する「所得連動返還方式」を選択することができます。この他にも、月々の返済額を減少させ、返済期間を延長する「減額返還」といった方法もあります。
こうした救済制度を用いても返済できない、奨学金の契約者に自己破産などの債務整理が発生した、死亡により返済が行えない、などの場合は、連帯保証人にどのような義務が生じるのでしょうか?
 
連帯保証人と保証人は保証の義務内容が異なっています。奨学金の契約者の代わりに返済を行った場合は、連帯保証人・保証人どちらも、契約者に対して支払った金額を請求する「求償権」を有します。
加えて、保証人には、債権者に対して自分(保証人)に請求するより先に、契約者に返済を行うよう要請する「催告の抗弁権」があります。また、契約者に財産があり、強制執行が容易であることを証明できれば、先に契約者の財産を差し押さえるように主張する「検索の抗弁権」も認められています。
 
奨学金の返済がなされない場合は、まず主たる債務者と同等の支払い義務を有する連帯保証人に、奨学金返済の催告が行われます。そして、連帯保証人が代わりに返済を行った場合、その金額を契約者に請求することになります。連帯保証人も返済できない場合は、保証人に催告が届くようになります。このように人的保証には大きなリスクも伴いますので、費用は発生しますが機関保証制度を利用することも選択肢のひとつです。

お子さまの学費の大半は、大学進学のためにあります。

奨学金は長期間にわたって返済を行っていく必要があり、住宅ローンなどの融資を利用する場合にマイナスに働くこともあります。また、お子さまが万が一死亡してしまった場合は、連帯保証人である父母や親族に奨学金の残債を返済する義務が生じます。連帯保証人に充分な資産があればいいのですが、退職などで現役時代よりも収入が低下していた場合は、生活が破たんしてしまう恐れがあります。こうしたリスクに備え、奨学金の契約者は連帯保証人を受取人とした生命保険へ加入することも検討する必要があります。
 
教育費という聖域に守られて認識を誤りがちですが、給付型以外の奨学金は全て借金です。債券投資や学資保険などの貯蓄性生命保険を用い、自己資金で学費を捻出できれば、利子や機関保証利用の費用などのコストを支払わずに済みます。効率的にお金を使えるようになり、お子さまの独立後の収支を改善することに繋がっていきます。
 

出典
文部科学省 私立大学等の平成28年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
  
Text:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級 

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