好待遇の求人、どうしても受かりたくて履歴書に嘘を…ばれたらどうなるの?
配信日: 2018.09.01 更新日: 2019.01.10
そこで魔が差してしまい、履歴書などに嘘の記載をしてしまったと仮定しましょう。
幸か不幸かそこで採用されてしまいました。さて、この状態で履歴書などに記載した嘘がばれたらどうなってしまうのでしょうか。
4つの観点から考えていきましょう。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
疑問(1) 懲戒処分になる?
採用後、履歴書などに嘘の記載があったと発覚すると懲戒処分の対象となる可能性があります。
なぜなら、ほとんどの会社において就業規則や服務規程などにおいて、履歴書などの書類に嘘を記載したことが発覚した場合の処分について規定されているからです。
職場の就業規則を確認してみましょう。
もし、そのようなルールが定められていれば、それにしたがって何らかの処分を受けることになります。
最悪の場合、解雇となるおそれもあるでしょう。
ただし、常に解雇が有効とされるわけではなく「重要な経歴」の詐称に該当することが必要だと考えられます。重大な経歴とはどのようなものを指すのかについては個別具体的な事例によって異なります。
重大な経歴の詐称に該当するとして懲戒解雇が有効とされた事例としては次のようなものがあります。
・職務経験について虚偽の記載をした事例
・経験のない業務について経験者であると虚偽の申告をした事例
・8年余りの間に10数回の転職歴を隠していた事例
疑問(2) 給料を返さなければならない?
仮に嘘の記載によって採用されたとしても、既に受け取った給与を返還する必要はありません。
なぜなら、給与は労働契約にもとづく労務の提供の対価として支払われるものだからです。
既にその労務が提供された以上、会社は賃金の返還を求めることができません。
能力不足により、給与に見合う労務の提供とならなかったときや、懲戒解雇が有効とされた場合においても同様です。
問題(3) 損害賠償の問題になる?
履歴書などにした嘘の記載によって会社に損害を与えてしまった場合、その損害を賠償しなければならない可能性があります。
たとえば、虚偽の経歴を申し出ただけでなく、それをもとに、積極的に賃金の上乗せ交渉を行ったような場合です。
実際に虚偽の経歴をもとに給与の増額を繰り返し求め、約20万円の増額をさせた事例において、増額分に相当する額の損害賠償請求を認めた事例も存在します。(東京地裁27年6月2日)
文書偽造の罪に問われる?
単純に履歴書や職務経歴書に嘘の記載をした程度では、私文書偽造や公文書偽造といった文書偽造の罪に問われることはないでしょう。
しかし、履歴書などに嘘の記載をするにとどまらず、卒業証書や免許証などを偽造したような場合には文書偽造の罪に問われるおそれがあります。(刑法155条・159条)
嘘の記載はNG
「どうしても受かりたい」そんな求人があったとしても履歴書などに嘘の記載をしてはいけません。
仮に嘘の記載によって採用が決定したとしても、いつか嘘がばれるのではないかと怯えながら働き続けることになります。
また、嘘が発覚してしまうと、信用が失墜してしまうだけにとどまらず、会社の規則にもとづく懲戒処分や損害賠償、場合によっては刑事罰を受けることにもなりかねません。
自分はもちろん応募する会社のためにも、履歴書などに嘘の記載をすることは絶対にしないようにしてください。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士