最終更新日: 2019.01.10 公開日: 2018.09.11
暮らし

【いつでもICカードのほうが切符よりも安い】と思い込んでいる方も少なくないと思いますが、それって、本当なの?

執筆者 : 上野慎一

交通系ICカード(スイカやパスモほか)が使える鉄道やバスでは、運賃が二重体系になっているところが多いでしょう。
 
つまりICカードと切符(現金)では運賃が違う場合があるということです。
 
【いつでもICカードのほうが切符よりも安い】と思い込んでいる方も少なくないと思いますが、それって、本当なのでしょうか?
 
 
上野慎一

Text:

Text:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

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上野慎一

執筆者:

Text:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

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二重体系の運賃制度が導入された経緯

このような二重体系の運賃制度が導入されたのは2014年4月1日。つまり消費税率が5%から8%に引き上げられた時でした。
 
運賃は内税ですから、税別運賃の改定はないとして、消費税率の上昇だけを反映すると次のような計算になります。
 

 
ICカードは1円単位で徴収できるので新運賃AやBになり、切符は自動販売機が1円玉や5円玉には対応できないため、新運賃CやDへと分化しました。
 
この消費税増税に伴う運賃改定がされてから、約4年半が経過したことになります。当時の増税前の世の中では「鉄道やバスの運賃が二重体系になる」ことに加えて、「ICカード運賃は1円単位の改定なので切符よりも安くなる」ということが大きく喧伝されていたような気がします。
 

確かにICカードのほうが手間いらずのはずなのに・・・

ICカードは切符のように紙媒体をいちいち発行したり、回収したりする手間がないのですから、運賃が少し割安に設定されることは感覚的にも納得できるものだったと思います。上記の設例でも確かに【新運賃AやBは、新運賃Cよりも安い】です。
 
しかし、設例をもう一度よくご覧いただくと【新運賃AやBは、新運賃Dよりも高い】のです。このようなケースは現実にも見られます。
 
例えば、JR線で千葉駅から東千葉駅に1駅移動した場合、次のとおりです。[千葉駅 → 東千葉駅] ICカード運賃 144円 > 切符運賃 140円
 
さらにややこしいのが、JR線で同じ千葉駅から西千葉駅に1駅移動した場合。今度はICカード運賃のほうが安くなります。
 
[千葉駅 → 西千葉駅] ICカード運賃 133円 < 切符運賃 140円
 
これは一体どういうことなのでしょうか。
 

少額の積み重ねなので、トータルで調整することになっているようです

その背景を教えてくれるのが、消費税増税に先立って国土交通省が公表した「消費税率引上げに伴う公共交通運賃(鉄道、バス)への1円単位運賃(ICカード利用)の導入について」です。その末尾で次の指針が示されています。
 
・ICカード運賃は現金運賃と同額ないしそれより安価となることを基本。
・端数処理の技術的な方法については、事業全体として108/105以内の増収を前提に、各交通モードの利用特性を踏まえて現実的に対応。
 
鉄道・バスの運賃は、1件1件は少額ですが、トータルではおびただしい量の取引件数となります。
 
消費税増税後の計算上の新運賃について、小数点以下や1円単位の端数を一律に全部切り捨てにしてしまうと、運賃収入全体では、増税分の徴収に相当不足してしまうことになります。逆に、ICカードも切符も全部端数切り上げでは、増税以上の大きな値上げとなってしまいかねません。
 
そのため、ICカード・切符及びその他の運賃・料金のトータルで増額改定の数字(108/105の増収=改定率2.857%)を合わせればよいこととしました。距離きざみに(さらにエリアを分けるなどして)設定される運賃テーブルの個別細目の中で、四捨五入・切り捨て・切り上げをある程度弾力的に運用できるようになっているようです。
 
その結果、例えばJR東日本では、山手線内・電車特定区間などの首都圏中心部において、ICカードの料金を切符と同額かそれ以下に必ず抑えています。一方で、首都圏外延部や地方エリアの幹線・地方交通線では、距離別テーブルの中で切符のほうがICカードよりも安くなる設定が少なからず見られるようになりました。
 

まとめに代えて

このように、ICカードと切符の運賃逆転現象はそれなりにあるのです。
 
いずれも数円くらいの差なので騒ぎ立てるほどのものではありませんが、【総論としての思い込みの中に、例外が存在する場合がある】ことの一例として頭の片隅に入れておいてもよいでしょう。
 
余談ですが、【JR東日本の在来線で新横浜駅から小田原駅まで乗車】した場合、ICカード運賃1144円に対して切符運賃は970円。こちらでは174円も差がつきます。
 
その理由は、「選択乗車規則でより安くなる経路での運賃算定が、ICカードではされないため」です。今回触れた消費税増税時の調整措置とはテーマが異なるものですが、鉄道運賃の設定ルールは複雑多様で奥が深いものだと思いました。
 
出典:国土交通省「消費税率引上げに伴う公共交通運賃(鉄道、バス)への1円単位運賃(ICカード利用)の導入について」
Text:上野 慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士



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