最終更新日:2019.01.10 公開日:2018.12.28
暮らし

退職したら増える費用もある・・退職する前に知っておこう!

長いサラリーマン生活を終え、退職して年金生活に入ったら何が変わるでしょうか?また何に気を付けないといけないでしょうか? 社会保険や税金のことは、サラリーマンの間は会社任せにしているため、意外と自分では分かっていないものです。
 
今後の進路を考えるうえでも、給与生活者と年金生活者の基本的な違いを理解することは重要です。以下に、要点を説明したいと思います。
 

退職後に支払う現役時代の住民税

所得税は毎月の給与をベースに一度源泉徴収を行い、その後、年末調整で算出されたその年の所得税額をもとに調整します(それでも調整し足りない分は翌年2月、3月の確定申告で最終決定されます)。要するに、その年の所得税はその年に支払いが完了します。
 
これに対し、住民税は最終的に決定した税額が翌年6月から翌々年5月までの給与から源泉徴収=差し引かれます。つまり、住民税は所得税に比べ、支払時期が1年半遅いのです。
 
あなたが2019年1月から5月に退職する場合、最終年度の1年前の年度にあたる2017年分の未納分の住民税は、最後の給与または退職金から一括徴収されます。そして、最終年度である2018年の住民税は、退職した年にあたる2019年の6月から支払いが始まります。
 
普通徴収を選んだ場合は、2019年の6月、8月、10月、2020年の1月の、4回に分けて支払わなければなりません。この時点で支払う住民税は、退職直前の年度である2018年の課税所得の約10%に相当します。課税所得は人により異なるので一概には言えません。
 
目安としては、現役時代、年収500万円くらいだった人が退職した場合、課税所得を215万円とすると、22万円。年収1000万円の人が退職した場合は、課税所得を600万円とすると、60万円の住民税を支払う計算です。
 
4回に分けてとはいえ、ある程度まとまった金額が必要になります。現役の間に、「翌年退職したら、住民税をいくら支払わなくてはならないか」ということを、確認しておきましょう。
 

健康保険が国民健康保険になる

給与生活者時代は健康保険、大企業の方は組合健保、中小企業の方は協会健保に属していたはずです。退職後は、都道府県が所轄する国民健康保険になります。
 
そして、保険料計算のベースが変わります。健康保険では、当該年度に会社からもらう給与をもとに算出した「標準報酬月額」をベースに、保険料を計算していました。
 
これが、国民健康保険になると、前年度の合計所得金額をベースにした「賦課基準額」から保険料が計算されることになります。国民健康保険の被保険者は、健康保険の被保険者と比べ高齢化が進んでおり、財政が苦しいため、保険料は一般的に高くなります。
 
ただし、住む地域によっても保険料に差があります。平成28年度では、市町村レベルで最大8.3倍、都道府県レベルで最大1.8倍の差があると言われています(応能割率による比較)。
 
また、企業管轄の健康保険では、企業=事業主が総保険料の50~60%を負担することもあります。そのことから考えても、国民健康保険に変えると保険料は上がります。
 
一例として、大企業の健康保険組合から退職し、神奈川県川崎市の国民健康保険に入った場合の概算年間保険料比較を以下に記します。
 
(年収500万円、合計所得金額346万円、夫妻2人暮らし、妻専業主婦)
健康保険組合年間保険料: 20万5000円(夫婦2人分の介護保険料含む)
(事業主負担:健康保険料60%;介護保険50%)
 
川崎市国民健康保険料: 40万円(妻の介護保険料含む)
 
国民健康保険加入以外の選択肢として、健康保険の任意継続被保険者になる方法があります。最終年の標準報酬月額をベースにした保険料を支払えば、健康保険組合の被保険者を続けることができる制度です。
 
この場合、今まで企業が負担してくれていた保険料も自分で負担することになるので、保険料は倍近くになります。それでも、国民健康保険料と比べて安いこともあるようです。健保組合と市区役所に保険料を確認のうえ、最終決定してください。
 
また、上記以外にも、もう1つ保険料が増える要因があります。国民健康保険料は前年度の合計所得金額をベースに算出されると申し上げましたが、実際の算式は次の通りになります。
 
賦課基準額=合計所得金額+山林所得+譲渡所得等※-基礎控除額(33万円)
 
※譲渡所得等=短期譲渡所得+長期譲渡所得+上場株式等にかかる配当所得等+上場株式等にかかる譲渡所得等+一般株式等にかかる譲渡所得等+先物取引等にかかる雑所得等
 
上記の通り、前年度に土地や株式等を売却して利益を上げていると、賦課基準額が増え、保険料も増えることになるので要注意です。
 

65歳からの介護保険料

40歳から64歳までの第2号被保険者であった時の介護保険料は、健康保険料に上乗せして支払います。しかし、65歳から介護保険の第1号被保険者になると、企業勤務者であれ退職者であれ、市町村の管轄の介護保険に加入することになります。
 
保険料は前年度の合計所得金額をもとに算出されますが、第2号被保険者であった64歳までの時より、保険料はかなり増えます。
 
国民健康保険と同様、退職後、65歳になって神奈川県川崎市の介護保険に入った場合の概算年間保険料は次の通りです。
 
(年収500万円、合計所得金額346万円、夫妻2人暮らし、妻専業主婦)
介護保険料(第1号被保険者=65歳以上、夫分のみ): 11万2000円
 

まとめ

64歳まで企業に勤務し、65歳で退職した場合、健康保険料および介護保険料がかなり増額することになります。
 
【現役時代】
健康保険組合年間保険料: 20万5000円(100)
 
【退職後】
川崎市国民健康保険料: 40万円
介護保険料年間保険料(第1号被保険者): 11万2000円
退職後計: 51万2000円(250)
 
この例では退職後の保険料は現役時代の2.5倍になっています。年金生活者になれば、住民税はそれ相応のレベルに下がります。
 
ですが、社会保険料は、国民健康保険料自体が、現役時代の健康保険料にくらべて高いことと、第1号被保険者としての介護保険料が加わることから、現役時代のレベルまでには下がらないようです。老後はお金がかかることを肝に銘じなければなりません。
 
※上記の保険料は概算で、金額の大体のイメージを持っていただくために記載したものです。川崎市は、健康保険料で全国政令20都市の15番目で平均値より5%低いレベル、介護保険でも同様に、平均値より5%低いレベルです。いずれにしても、皆さんが居住している市町村に退職後の保険料を確認されることをおすすめします。
 
出典:厚生労働省ウェブサイト>市町村国民健康保険における保険料の地域差分析
 
Text:浦上 登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
 

浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
 
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
 
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
 
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。

https://briansummer.wixsite.com/summerarrow



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