2019.02.03 暮らし

借金を返してもらうために内容証明を送ったのに時効を援用された。この時効は有効なのか?

執筆者 : 柘植輝

返済の滞っているお金も、内容証明郵便を送ったらすぐに全額キッチリ返済されたということは珍しくありません。
 
しかし、民法には時効という仕組みがあり、一定期間放っておかれた債権は消滅してしまいます。内容証明郵便を送ることで、この時効を止めることはできるのでしょうか。
 

内容証明郵便で借金返済を促したAさん

Aさんは9年ほど前、知人であるBさんに100万円のお金を貸していました。知人のため、返済期限は特に定めていませんでした。その間、AさんはBさんからの返済を待ち続けていましたが、Bさんは一向にお金を返済する気配がありません。
 
しびれを切らしたAさんはBさんに対し、借金を返済するよう内容証明郵便を送りました。お金を貸し付けてから9年目の時でした。しかし、その後も音沙汰がないまま時は流れ、11年目のある日、Bさんから次のような連絡がありました。
 
「お金を借りてから10年を超えているため、時効によってお金を返す義務はなくなったはずだ。時効の制度を利用させてもらう」それに対しAさんは次のように反論しました。「9年目の時点で、私は内容証明を送っている。それによって時効は止まっているはずだ」さて、この場合どちらの言い分が正しいのでしょうか。
 

内容証明郵便だけでは、時効をリセットできない

結論として、本事例においては時効が成立しており、AさんはBさんからお金を返してもらうことができません。
 
そのような結論に至ったポイントは以下の2点にあります。
(1)お金を貸してから10年が経過していること
(2)内容証明郵便でしか支払いの請求をしていないこと

 
まず(1)ですが、基本的に債権は10年で時効により消滅します。(民法167条1項)本事例ではお金について返済期限を定めていないため、AさんからBさんへの債権は期限の定めのない債権となります。
 
期限の定めのない債権の時効は債権を行使できる時からカウントされます。(民法166条)本事例でいえば、お金を貸した瞬間がまさに債権を行使することのできる時であり、時効のカウントが進みはじめる瞬間です。
 
次に(2)について、基本的にお金の返済を求めることは時効の中断(リセット)に該当しますが、これには裁判上で行うなど、一定の様式に沿った「請求」であることが必要とされています。(民法147条)内容証明郵便などによって返済を求めることは「催告」と呼ばれています。
 
催告は6ヶ月以内に裁判上で請求などを行わない限り、時効の中断の効果が発生しません。(民法153条)本事例でのAさんは内容証明郵便を送ったあと、裁判上での請求などを一切行っていません。そして、お金を貸してから11年経った頃にBさんから時効の主張をされています。
 
よって、時効は中断しておらず、Bさんの主張する時効によって債権は消滅し、AさんはBさんにお金を返してもらうことができない。という結論に至るのです。
 

内容証明郵便は万能ではありません

内容証明郵便は受け取り手の心理に作用し、自ら行動させるよう促すのに有効な手立てではありますが、それ単体では時効を完全に止めることまではできません。
 
時効をしっかり中断させるためには、内容証明を送ったあと6ヶ月以内に裁判上での請求など、別の策を講じるようにしてください。
 
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
 
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柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。