更新日: 2019.06.28 その他暮らし
マイホームの出口戦略。自宅を貸す場合のポイント
大きく分けると4つの方法がありますが、(1)「そのまま住み続ける(建て替え含む)」、(2)「取り壊す」、(3)「売る」、(4)「貸す」のうちどれを選ぶかによって、その後のマイホームへの対応が異なります。
今回は(4)の「貸す」についてお伝えしていきます。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
自宅を貸すために、まず考えること
ファイナンシャル・プラニングにおいては、自宅をだれかに貸すというのは、いわゆる「不動産の有効活用」に当たります。この分野では、以下の点がポイントになります。
○どんな人に貸したいか
○どのように借り手を見つけるか
○リフォーム・リノベーションの内容をどのようにするか
○リフォーム・リノベーション時にローンを組むかどうか
○家賃の設定をいくらにすべきか
○年間のランニングコストはいくらになるか
○空室リスクにどのように対応するか
○何年間、貸すことになるか
○賃貸期間が終了した後はどうするか
ほかにも検討課題はありますが、貸す際は、このような点を考えながら対策を練るようにします。
自宅を貸すことは、不動産経営をすること
よくある例としては、住み慣れた家をだれかに貸し、自分たち夫婦は駅近のマンションに移り住むというイメージです。
このような場合、家計にとっては家賃収入が定期的に入ってくるため、老後の収入の基盤づくりになると考えられます。一方、だれかに自宅を貸すことは「プチ不動産経営」を行っていることになるため、一定のランニングコストが発生します。
つまり、毎年、不動産収入からランニングコストを差し引いた残りのお金が不動産所得となるのです。そうなると、確定申告をする必要があります。
このようなことから、収益予測を立てたうえで、不動産経営者として、だれかに貸すことを実践していくことになります。段取りとしては面倒なイメージを抱くかもしれませんが、マイホームの出口戦略において「自宅を貸す」を選んだ場合、「空き家防止策」になるというメリットがあります。
空き家防止は、マイホームの出口戦略として最重要課題
空き家防止策とは、言いかえると、「マイホームを空き家にしないための方策」です。空き家にしないことで、どんなメリットがあるのでしょうか?自宅をだれかに貸し、夫婦はどこかに移り住む。この時点では、自宅は空き家になっていません。
そして、夫婦がともに亡くなった後、相続によりお子さんたちが財産を引き継ぐ場合も、賃貸している自宅にはだれかが住んでいるため、この時点でも空き家にはなりません。
空き家防止策のポイントは、その自宅にだれかも住まなくなってから発生するさまざまなリスクや経済的な負担が、お子さんに引き継がれることを防止することにあります。
仮に、空き家になってしまうと、屋根に穴が開く、壁がはがれる、ネズミが発生するなどの老朽化を防ぐためのメンテナンス費用や、泥棒などの侵入を防ぐための防犯費用、地震や台風などの災害リスクに対応する費用(火災保険・地震保険)、固定資産税・都市計画税といった税負担などが、自宅を引き継いだお子さんにかかってきます。
このようなことを防ぐ観点から考えると、自宅をだれかに貸すという選択肢は、マイホームの出口戦略としては有効と言えます。マイホームの出口戦略は、老後において最も重要なマネープランニングですが、長期の計画が必要になります。
次回は、ここ数年、注目されている「マイホーム借り上げ制度」についてお伝えしていきます。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)