長引くとかなりの金額に…不妊治療の費用と負担軽減のしくみ
配信日: 2019.06.10 更新日: 2019.06.13
不妊治療への関心が高まる中、その費用が高額だという話を聞くこともあると思います。「高級車が買えるほどの金額」などと言われる不妊治療の費用ですが、実際にはどのくらいかかるのでしょうか。
今回は、不妊治療の現状と、費用を検討する際のポイントについて考えてみたいと思います。
不妊治療とは?
一般的に、子どもを望んでも自然に妊娠しない期間が一年以上続いた場合を不妊症と言います。そこで専門の医療機関を受診して最初にすすめられるのが、排卵日に合わせて夫婦生活を行う「タイミング法」で、これは保険診療の対象となります。
次に「人工授精」といって、あらかじめ採取した精子を排卵のタイミングに合わせて子宮内に注入して妊娠させる方法で、費用は保険診療の対象外となりますが、1万円から3万円ほどです。
これらの治療を受けても妊娠しない時に、次のステップとして「体外受精」や「顕微授精」といった高額な治療を検討することになります。
「体外受精」は、女性の卵子を取り出し、あらかじめ採取された精子と容器の中で受精させてから受精卵を女性の子宮内に戻す方法で、費用は一回(一周期)あたり30万円から50万円ほどです。
「顕微授精」は、顕微鏡下で卵子に直接精子を受精させる方法で、やはり一回あたり30万円から50万円ほどと言われています。
また、不妊の原因については夫婦のどちらかにある場合、両方にある場合とさまざまですが、そのための治療が必要になるかもしれません。その治療費が別途かかる可能性も考えておく必要があるでしょう。
経済的負担を軽くする方法はある?
・助成金は制限がある
不妊治療の費用をサポートする取り組みとして、国のほか、自治体ごとに助成金が設けられていますので、不妊治療を考えている方はお住まいの自治体のホームページなどで確認してみましょう。
国の体外受精、顕微授精を対象とした助成金については、厚生労働省によると「特定不妊治療に要した費用に対して、1回の治療につき15万円(凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等については7.5万円)まで助成する。」
また、「うち初回の治療に限り30万円まで助成。(凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等は除く)」
さらに、「特定不妊治療のうち精子を精巣又は精巣上体から採取するための手術を行った場合は1回の治療につき15万円まで助成。(凍結杯移植(採卵を伴わないもの)は除く)」となっています(※2)。
ただし、所得制限は夫婦合算で730万円、対象となるのは治療初日の妻の年齢が43歳未満となっており、通算助成回数に制限があります。
こうした助成金の制度は、所得制限を超えている、受けている不妊治療が対象でないなどの理由で、「使いたいけれど実際には使えない」という人も多いようです。では、助成金のほかに不妊治療費を抑えるための対策やコツはないのでしょうか。
・費用のサポートを行っている職場
最近では、不妊治療への理解が進み、不妊治療期間中の休暇制度など、職場でサポートの制度があるところは増えています。
費用面でも、ごく少数ながら費用の補助を行う取り組みがありますので、まずは確認してみてはいかがでしょうか。使える制度がないか、まずは徹底的に情報収集してみることが重要だと思います。
・お金の計画を立ててから始める
今回は、ますます関心が高まる不妊治療の費用についてお伝えしましたが、いかがでしたか?
不妊治療の期間中、仕事と両立するつもりが体調に支障をきたしてしまった、あるいは職場のサポートを得られない、といった事情で仕事を離れる可能性があることを考える必要があるかもしれません。
治療を行う前に情報収集をしっかりすること、お金の計画を立てておくことがまずは重要だと思います。
出典:
(※1)厚生労働省『仕事と不妊治療の両立について「不妊治療連絡カード」 不妊治療について 1不妊治療の現状(国立社会保障・人口問題研究所「2015 年社会保障・人口問題基本調査」による)』
(※2)厚生労働省「不妊に悩む夫婦への支援について」
執筆者:藤丸史果(ふじまる あやか)
ファイナンシャルプランナー