更新日: 2019.06.14 その他暮らし
入院時の医療費は5年で10%弱増えている。健康保険の給付実績からみる医療費
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/
健康保険の医療費が5年で4兆円も増えている
厚生労働省の医療給付実態調査では、健康保険に加入している人の受診状況を診療報酬明細書等から詳細に調査し、受診件数や医療費等を性別・年齢階級別等にまとめています。その中から医療費が昔に比べて増えているのかどうかを男女別に確認し、グラフにしてみました。
健康保険は、全国健康保険協会管掌健康保険や組合管掌健康保険、後期高齢者医療制度等に分かれていますが、ここでは各制度の合計値を載せています。医療費のうち歯科と調剤に関する費用は含まれていません。
男性の場合、2016年(平成28年)の医療費は入院が6兆8294億円、入院外(通院)が5兆9448億円、食事・生活療養が3077億円で、3つの医療費を合計すると13兆819億円になります。5年前の2011年時点では10兆9363億円なので、5年間で2兆1456億円も増えています。
女性の場合、2016年(平成28年)の医療費は入院が7兆526億円、入院外(通院)が6兆4368億円、食事・生活療養が3768億円で、3つの医療費を合計すると13兆8662億円になります。5年前の2011年(11兆8295億円)から5年間で2兆367億円も増えています。
男女共に特に増加率が高いのは入院の費用で、5年間で2割以上増えています。男性と女性とを比べるといずれの費用も女性の方が多く、特に食事・生活療養は女性の方が2割以上多くなっています。
医療費が大きく増えているのは、やはり高齢化が大きく影響しているのではないでしょうか。
入院した時の医療費は5年で10%弱増えている
次に医療費(入院・入院外・食事・生活療養)をそれぞれ件数で割って、1件(1回)あたりの医療費を求めて表にまとめてみました。
1件あたりの入院医療費は男性542,273円、女性502,801円となっています。5年前の2011年と比べると、男性は8.5%増、女性も9.1%増とかなり増えています。
入院外(通院)も男性15,231円、女性12,614円で、2011年より増えています。食事・生活療養は男性26,418円、女性29,342円で5年前より6%程減っています。
医療費全体では入院、入院外、食事・生活療養のいずれも女性の方が多いですが、1件あたりでみると、入院と入院外は男性の方が多くなっています。
なお、表に記載の額は医療全体(10割)の額なので、健康保険加入で自己負担割合が3割であれば、表の額を0.3倍した額が自己負担額となります。例えば542,273円なら542,273×0.3で、自己負担額は約16万円となります。高額療養費制度によって負担額はさらに軽減できます。
病気等で入院して実際に負担する費用をイメージすると、医療費は高額療養費制度によって1ヶ月あたり10万円弱で済みますが、治療中に月が替わる可能性もあります。
入院時の食事・生活療養等の費用や身の回り品の購入費等も考えると、1回の入院費を賄うために20万円くらい準備しておくと良さそうです。ただ、差額ベッド代がかかる個室等を希望するのであれば、もう少し多く備えておいた方が無難です。
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者