最終更新日:2019.09.03 公開日:2019.07.16
暮らし

電力の全面自由化から3年 市場にどのような変化が起きたのか

電力の小売市場が全面自由化されて3年が経ちました。値下げ競争、サービス競争が激化していますが、市場にどのような変化がでてきたのか、新電力のシェアに焦点を当てて様子を見てみましょう。
 
藤森禮一郎

執筆者:

執筆者:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

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藤森禮一郎

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執筆者:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

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供給力を持つ事業者が進出してきている

10電力による独占供給体制が終焉し、電力市場には500社以上が新規参入して乱戦模様です。しかし、徐々に供給力を自前で持っている事業者、お客様ネットワークを持っている事業者が上位に進出してきています。
 
経済産業省の最近の資料によると、「全販売電力量(kWh)」に占める新電力のシェアは全面自由化直後は約5%でしたが、2017年5月には10%を超え、2018年12月時点では15%に達している、とのことです。
 
これを契約「電圧別」でみてみると、大口生産工場などの「特別圧」は6%前後でほぼ横ばいで推移、オフィスビルやスーパーなど「高圧」は時期的に変化はあるものの、全体としては上昇傾向で約25%に達しています。
 
家庭や商店などの「低圧」は、昨年6月に10%を超え、12月現在では12.1%となり堅調に上昇傾向を見せています。
 

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供給区域別の動向は?

供給区域別の動向を契約電圧で見てみましょう。特別高圧分野における新電力シェアは北海道、北陸地域などで進展しているが、関西、九州、東京など、いわゆる自由化先進地域では下降傾向が見られます。
 
高圧分野は昨年夏以降、関西地域に過去傾向がみられますが、その他地域はおおむね上昇傾向にあります。
 
低圧分野は東京、関西が16~18%、北海道、中部、九州、東北、四国が6〜10%、中国、北陸、沖縄が5%以下で大きく3分類できますが、2016年度全面自由化以降、おおむね堅調に推移しています。
 

新電力など、他の電力へのスイッチングは?

新電力のシェアに大きく関係するのが、新電力などの他電力への契約切り替え(スイッチング)の動向です。
 
大手電力(旧一般電気事業者)から新電力(大手電力→新電力)へのスイッチング件数は、2016年4月は約57万件でしたが、2017年4月には約327万件、2018年4月には約652万件、同12月には890万件と、倍増ペースで増加しています。
 
また、大手電力の自社内切り替え(規制料金→自由料金)も同様に増加しており、2018年12月には約532万件に達しています。両方を合わせると約1421万件です。
 
特徴的な動きも見ておきましょう。1〜2年目は大手電力→新電力へのスイッチングが主流でしたが、3年目に入ると新電力→大手電力、新電力→新電力の動きが活発になってきています。とりわけ新電力→新電力の増加が目立ってきています。新電力同士の競争が激化してきています。
 

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なぜ競争が激化しているのか?

電力需要が総体としては縮小に向かっているのに、競争が激化している背景には事業者数の増加があります。
 
2016年4月の小売全面自由化スタート時の小売り電気事業者数は291者でしたが、2019年3月の最新データでは583者で2倍に増えましたね。そのうち供給実績が確認できているのは415者とのことです。登録だけの事業者も多いですね。
 
競争の結果どうなったのでしょうか。新電力のシェア推移、上位10社を12月時点で見てみます。特別高圧、高圧、低圧の全電圧の合計です。
 
<2016年>
(1)エネット、(2)F-Power、(3)丸紅新電力、(4)JXエネルギー、(5)東京ガス、(6)テプコカスタマーサービス、(7)オリックス、(8)サミットエナジー、(9)日本テクノ、(10)伊藤忠エネクス
 
<2017年>
(1)エネット、(2)F-Power、(3)テプコカスターサービス、(4)JXTGエネルギー、(5)丸紅新電力、(6)東京ガス、(7)KDDI、(8)オリックス、(9)サミットエナジー、(10)日本テクノ
 
<2018年>
(1)エネット、(2)テプコカスタマーサービス、(3)F-Power、(4)東京ガス、(5)JXTGエネルギー、(6)KDDI、(7)丸紅新電力、(8)大阪瓦斯、(9)エナリス・パワーマーケティング、(10)オリックス
 
首位をキープしているエネットは、NTT、東京ガス、大阪ガスの3社が共同出資して作った会社で、電力小売り事業では老舗会社です。
 
(6)→(3)→(2)と急伸しているテプコカスターサービスは、大手電力の東京電力HDの子会社で供給区域外の関西、九州など他地域での営業をしています。
 
最新の情報では、今年に入って首位の座が入れ替わり、テプコカスターサービスが首位になりエネットは2位になったようです。
 
F-Powerも小売り事業では実績を持つ老舗ですが、電力を卸市場からの調達に依存してきたため、市場価格の高騰により経営が悪化、事業を縮小しています。
 
KDDI(auでんき)、東京ガス、大阪ガスは、店舗網や顧客網がしっかりしていて家庭用など低圧部門に強みを持つ新電力で、営業の足腰がしっかりしているのでしょうか、業績を伸ばしていますね。
 

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自社電源を持たない新電力は生き残れないのか

小売市場全体でみれば依然、旧一般電気事業者の大手電力が大半を占めています。どの程度のシェアが適切なのか、定説はありませんが、輸入燃料に依存している電力市場にあって、電源構成に大きな変化がなければ、原価に価格差がないので価格競争にもおのずと限界はあります。
 
効果による劇的変化は期待できません。地道なサービス努力、営業力が問われることになりそうです。また、これまでの推移をみていると、自社電源を持たない新電力が価格競争を前面に押し出して生き残るのは厳しい状況ですね。
 
執筆者:藤森禮一郎
フリージャーナリスト
 

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