知人に貸したお金を返してもらいたい。どうしたら返してもらえる?
配信日: 2020.04.12
知人間とはいえ、お金の問題はトラブルに発展しやすいものです。そうなってしまったとき、どうすればよいのか? どうしたらトラブルを事前に防げるのか?
紛争を防ぐ行政書士としての立場から、分かりやすく解説していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
契約書がなくても契約は成立する
まず、お金の貸し借りについて法律的な側面から考えていきましょう。お金の貸し借りという契約関係は、契約書が存在しなくとも、返す約束をしてお金を受け取った時点で成立します(民法587条)。
そのため、「契約書を取り交わしてないから」という理由でお金を返さないことは認められません。また、「返済期限を定めてないから、返したくなったときにいつか返す」といったように、期限を定めていないことを理由に何度も返済を拒むことも許されません。
民法上、期限を定めなかったときは、貸主が相当の期間を定めて返還の催告をすることができるとされており、貸主が「来月でいいから貸した1万円を返してね」といったように、相当な期間を定めて請求してきた場合は、それを拒めないのが原則なのです(民法591条1項)。
お金を返してくれないときはどう催促するべき?
貸したお金を返してもらうには、基本的に本人同意のもとというのが原則です。暴力や脅迫を用いたり、本人に無断で借りた分のお金を返してもらうような行為はNGです。そういった行為は脅迫罪などに該当し、刑法に基づく処罰を受ける可能性があります(刑法222条など)。
なお、相手の財産を差し押さえるには、確定判決の取得など一定の法的手続きに基づくことが必要です。貸したお金を返してもらうためにとる適切な手順は以下の通りです。
●まずはよく話し合う
最も理想的な方法は、双方がよく話し合い、そこで返済してもらうことです。「分割でいいから少しずつ」「いつ頃からなら返済できそうか」「どうして返済できないのか」「どうしたら返済できるようになるか」など、具体的な話をお互い冷静になって話し合いましょう。
場合によっては中立の第三者を交えて話し合うことも効果的です。話し合いがまとまれば、内容を書面にまとめてお互いにサインをし、同じものを双方で保管しておくとよいでしょう。
●内容証明を送る
話し合いでもどうにも進展しないという場合は、内容証明郵便を活用してみましょう。内容証明郵便とは、「いつ、誰が、誰に対し、どんな内容の書面を送ったか」を日本郵便が証明してくれる文書です。
到着日付を証明する配達証明も付けることで「いつ内容証明が到着したか」も証明することができます。料金は配達証明分を付けても1枚で810円程度です。
これ自体に強力な法的拘束力はありませんが、郵便局員から対面で手渡しされる内容証明を受け取ると、多くの人が「相手は本気なのか」と感じるため、返済を促すのには充分な効果があります。
●それでもだめなら法的手続き
ここまでしても返してもらえないとなれば、いよいよ法的手段となります。法的手続きには、実際の裁判以外にも少額訴訟や支払い督促など簡略化された手続きもあります。ただし、今後の知人との関係を考えるのであれば、法的手続きは可能な限り避けたいところでもあります。
貸したお金をちゃんと返してもらうにはどうすればよかった?
貸したお金を穏便に返してもらうには、貸す際の取り決めが大切です。いつお金を返すのか、一括か分割か、返済期日に遅れそうなときはどうするかなど、条件をしっかり取り決めておきましょう。
可能であれば取り決めの内容を書面にしてお互いにサインし、同じ書面をお互いに保管しておくとより確実です。万全を期すのであれば、公証役場へ赴き、公正証書を作成しておくとなおよいでしょう。公正証書は公証人が作成する公文書であり、強力な拘束力をもっています。
安易なお金の貸し借りはしない。トラブルの回避にはこれが一番効果的
お金の貸し借りによって起こるトラブルを回避するには、安易にお金の貸し借りはしないことが一番です。どうしても貸すというのであれば、事前にしっかりと条件を定めておくべきです。
内容証明郵便や法的手段を使って回収できたとしても、のちの人間関係に不安が残ります。知人間でのお金の貸し借りはよく考えて行うようにしてください。
執筆者:柘植輝
行政書士