更新日: 2020.05.21 その他暮らし
新型コロナに感染して働けない…国民健康保険でも傷病手当金が受給できるって本当?
しかし、国民健康保険や後期高齢者医療に傷病手当金はありません。
保険者である市町村の保険財政上余裕がある場合に、条例を制定して行うことができるとされていますが、実際には行われてないのが現状です。休むと収入が途絶えてしまうため、病気でも休んでいられないのが実情でしょう。
新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐには、感染した労働者が休みやすいような環境が必要であると、令和2年3月10日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、国民健康保険加入者、後期高齢者医療加入者が新型コロナウイルス感染症に感染した場合に、保険者である市町村等が「傷病手当金」を支給した支給額全額を、国が特例で財政支援を行うこととなりました。
国民健康保険、後期高齢者医療に加入していても、新型コロナウイルス感染症で働けなくなった場合は傷病手当金が受けられます。
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
健康保険の傷病手当金
会社員などの健康保険の被保険者は、ケガや病気で仕事を休まなければならなくなったときに、傷病手当金を受けることができます。支給される日額は、
【支給開始の前12ヶ月の標準報酬月額の平均額】÷30日×2/3
で計算されます。開始前が12ヶ月ない場合は、その期間の平均額と30万円(支給開始が平成31年3月31日までは28万円)の低いほうの金額で計算します。受け取るためには、以下の条件をすべて満たすことが条件です。
・業務外の病気やケガで療養中であること
・療養のための労務不能であること
・4日以上仕事を休んでいること
・給与の支払いがないこと
(協会けんぽ「傷病手当金について」より引用)
ただし、健康保険の給付対象とならない治療のための療養は対象になりません(業務上や通勤時のケガは労災保険の対象です)。
休み始めで連続した3日間(待期期間)は支給されません。療養期間中も給与が一部支給されている場合は、給与支給分を減額され支給されます。最長で、受給開始から1年6ヶ月受け取ることができます。
国民健康保険の傷病手当金
では、新型コロナウイルス感染症による国民健康保険や後期高齢者医療の傷病手当金は、どんな条件で受給できるのでしょうか。
【対象となる人】は、国民健康保険や新型コロナウイルス感染症に感染した者や、発熱などの風邪の症状がある感染の疑いのある者です。新型コロナウイルス感染の目安として、以下の症状があります。
・風邪の症状が続いている
・強いだるさや息苦しさがある
【適用される期間】は、令和2年1月1日~9月30日の間で、療養のために労務に従事できない期間です。ただし、入院が続く場合は、健康保険と同様に最長1年6ヶ月まで。
【支給対象となる日数】は、療養のため労務不能になって3日間過ぎた日から、療養で労務に従事できない期間のうち、就労を予定していた日です。
【支給額】は、以下のように計算します。
1日当たりの支給額(直近3ヶ月の給与収入の合計額÷就労日数×2/3)×支給対象となる日数(ただし、標準報酬月額等級の最高等級の標準報酬月額の1/30の2/3に相当する金額を超える場合は、その金額とします)。
国民健康保険の傷病手当金注意点
労務に従事できないとは、基本的に医療機関で労務不能と認められた日付で判断します。ただし、体調不良等により受診できなかったまま体調が改善した場合、事業主による証明により保険者に労務不能と認められる場合には、傷病手当金の支給はされます。
結果的に新型コロナウイルスに感染してなくても、取り扱いは同様です。
また、傷病手当金の受給前に死亡した者については、相続人からの申請ができます。申請書は被保険者本人記入用、事業主記入用、医療機関記入用のほか、世帯主記入用の4枚の申請書を提出します。
国民健康保険の支給申請者は「世帯主」なので、世帯主以外の者が支給を受けるには委任が必要になります(世帯主記入用申請書に委任の記入欄があります)。
(参照・引用)
全国健康保険協会「傷病手当金について」
首相官邸「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策 ―第2弾-」
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に感染した被用者等に対する傷病手当金の支給について【令和2年3月10日】」
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に感染した被用者等に対する傷病手当金の支給について【令和2年3月24日】」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者