養育費をしっかり払ってもらうために、離婚前にしておくべきこと
配信日: 2021.01.29
養育費をしっかり払ってもらうために、離婚前にどのような手順を踏めばよいか、金額の相場はいくらくらいか、などをお伝えします。
執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。
また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。
感情が高ぶっている場合は落ち着いてから
離婚を考えている人には、さまざま事情があってのことと思いますが、夫婦喧嘩の延長で突発的、感情的にまかせて離婚するということは避けていただきたいです。特に未成年の子がいる人ならなおのことです。
後先考えないで行動することは、後にトラブルになったり、後悔したりする要因となります。一度、深呼吸をして落ち着いてから、離婚後の生活を考えてみましょう。
子どものいる人が離婚を考えるとき、養育費のことを誰かに相談できる人はいますか。最終的な決断は自分でしますが、専門家でも友人でも家族でも、まずは相談できる人に話を聞いてもらうことをお勧めします。話を聞いてもらうだけでも、落ち着いて物事を考えることができます。
実際に離婚した人の51.2%が誰かしらに養育費の相談をしています(離婚後を含む)。また、相談した人の47.7%(母子世帯)が親族に相談している調査結果がでています(厚生労働省 平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告より)。
子どもの親権と養育費
未成年の子がいる人が離婚を考えるとき、離婚する前に子どもの親権と養育費の取り決めをしておくことが必要です。親権は離婚届の記載が必須で、決まっていなければ、離婚届は受理されません。
しかし、養育費は離婚届にチェック欄がありますが、取り決めをしていなくても離婚はできます。離婚届のチェック欄にチェックしたか不明と回答している人が49.6%(母子世帯)となっています。
2011年(平成23年)の民法改正により、離婚の際に夫婦が取り決める事項として面会交流および養育費の分担が明文化されました。しかしながら、養育費の取り決めをしていないと回答している人が54.2%となっています。
民法第766条において、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父または母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。
この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない」とされ、話し合って決めるよう定められています。
養育費の取り決め方
養育費の取り決めは、話し合いで納得いくように決めましょう。その際、金額、支払時期、支払期間、支払方法など細かい点まで取り決めます。
万が一、話し合いで決まらないときは、家庭裁判所にて養育費請求の調停の申し立てもできます。さらに、調停での話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所において審判で養育費を決めることになります。
養育費の金額については、裁判所の「司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」に養育費算定表があります。この算定表には、子の人数(1~3人)と年齢(0~14歳と15歳以上)に応じ19の表に分かれています。お互いの年収によって、養育費はいくらが妥当なのか参考になります。
養育費を取り決めた内容について、後日、トラブルが生じないように、口約束ではなく、書面に残しましょう。法務省が作成したパンフレットにおいて、「子どもの養育に関する合意書」のひな形があります。できれば公証役場で公正証書にしておくと、万一、不払いになった場合、強制執行(差し押さえ)ができます。
また、取り決め事後に、決めた養育費の増額や減額を他方の親に求めることができる場合もあります。それぞれの経済的事情や、子どもの進路などによって金額の変更が必要となることもあるからです。
まとめ
養育費の取り決めをしていない理由として、相手と関わりたくないからという理由が、31.4%となっています。養育費は子どものためのものです。親としての最低の義務であり、離れて暮らす親との絆であるとも考えられます。
養育費は、いつまでという決まりはありませんが、一般的に養育する子どもが成人(20歳)するまでと考えますが、高校卒業して就職する場合や大学に進学し、教育費が成人後もかかる場合、自立、就職するまでという考え方もあります。
さまざま事情で離婚を決意し、できるなら離婚後は関わりたくない気持ちも分かりますが、子どもの健やかな成長を第一に考え、書面、もしくは公正証書にしておくことが子どもためであり、親同士のトラブルを回避する方法といえるでしょう。
(参考資料)
厚生労働省「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」
裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、三藤FP社会保険労務士事務所 代表、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士