更新日: 2019.01.10 その他暮らし

何気ないネット掲示板の書きこみが、インサイダー情報漏洩になるって本当?

執筆者 : 小泉大輔

何気ないネット掲示板の書きこみが、インサイダー情報漏洩になるって本当?
最近、「誰々がインサイダー取引で逮捕」というニュースをよく目にします。しかし、「インサイダー取引」が実際にどのようなことなのか詳しく知らない人は多いかと思います。

実は、インサイダー取引は誰もがしてしまう可能性がある行為です。特に知識が無い人は、犯罪だと知らずに行ってしまうことも。知らなかったでは済まされないインサイダー取引。ここでしっかり確認しておきましょう。
小泉大輔

Text:小泉大輔(こいずみ だいすけ)

株式会社オーナーズブレイン 代表取締役

公認会計士・税理士
1970年東京都生まれ。上智大学経済学部卒業後、公認会計士となり、朝日監査法人(現在:あずさ監査法人)で監査実務、及び、M&A,株式上場支援に携わる。
2003年に、独立し、(株)オーナーズブレインを立ち上げ、現在は代表取締役であるとともに、2社の上場会社の役員も兼任する。共著著書に『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)』DVD『できるビジネスマンDVD+財務諸表チェックのキモ』 200年7月(創己塾出版)がある。
http://ownersbrain.com/

増えるインサイダー取引。平成28年度の取引勧告件数は過去最多

インサイダー取引の件数は増加しています。
 
平成17年4月から平成29年3月末までにインサイダー取引違反で課徴金勧告を行った累計件数は268件(違反行為者ベース)。年度別の平成17年~平成29年の推移でみると、インサイダー取引の勧告件数、課徴金額共に増加傾向です。
 
平成28年度の勧告件数は43件(19事案)。前年度の22件(16事案)に比べて大幅に増加し、年度別で過去最高の件数となりました。
 
また、平成28年度の課徴金額合計は8979万円。こちらも前年度(7550万円)を上回り、過去最高の金額です。

参考URL:http://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/torichou/20170829/01.pdf

インサイダー取引ってなに?こっそり一儲けはアウト!

インサイダー取引は簡単に言うと会社関係者をはじめとした内部者が、株価に影響する情報を一部の人しか知らない段階で、金もうけに利用する行為のことです。
 
株価に影響する情報とは、業績向上につながりそうな事実、悪化につながりそうな事実、こんなビジネスはじめます、さらには自分の会社が買収されそうなどという内容です。
これらの情報はネットに流してもインサイダーになります。
 
例えば、自分の会社が「業務提携」すると分かった社員が、業務提携公表前に株を買い付け、公表直後に全て売却し利益をあげたとしたらインサイダー取引に当たります。(利益が出たかは関係なくインサイダー取引になりえます)
 
会社関係者などのインサイダー取引規制の概要は次のようになっています。

○規制の概要

・「会社関係者」または「第一次情報受領者」が、上場会社等に関わる「業務等に関する重要事実(以下「重要事実」という。)」を知りながら、その公表前に、当該上場会社等の株式等の売買等を行うことを禁止している。

○規制の対象者

・会社関係者:上場会社や主幹事証券会社の役職員など
・元会社関係者:会社関係者でなくなった後1年以内の者
・第一次情報受領者:会社関係者から重要事実の伝達を受けた者
 
参考URL:http://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/torichou/20170829/01.pdf

インサイダー取引は5年以下の懲役・500万円以下の罰金

インサイダー取引とみなされた場合は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が課せられる可能性があります。

要因はお金の誘惑と会社の管理体制の不備

インサイダー取引については、これまで多数の告発、勧告が行われてきましたが、違反行為は後をたちません。
 
金融庁の証券取引監視委員会資料「公式不正取引編 Ⅱインサイダー取引」には、インサイダー取引の要因・背景において「違反行為者の問題」と「上場会社等の問題」の2つの問題があることが取り上げられています。
 
まず「違反行為者の問題」は、重要事実に基づいて株式を売買すれば確実に儲けられるだろうという誘惑があること、膨大な取引の中で自分の取引は見つからないだろう・他人の名義口座を利用すれば大丈夫という誤解、そして親しい友人に儲けさせてあげたいという思惑です。
 
「上場会社等の問題」は内部管理体制や情報管理体制などに不備があり役職員のインサイダー取引を誘引すること、経営陣の認識不足によって取引先などに重要事実を伝達することが付き合いだという誤解があることです。

お金儲けの誘惑に負けず、犯罪であることを忘れないように

インサイダー取引について自分には関係ないと思っていた人も、内容を知ると絶対に関係ないとは言い切れないことが分かったのではないでしょうか。
 
株の売買をしなくても、上場している企業やその子会社に勤務している人、もしくは、その関係者が、業績を左右する未公開の情報を、インターネットの掲示板で、悪意なく、書きこんでしまっても、インサーダー情報の漏洩になりますので注意しましょう。
 
会社の同僚から、取引先から、家族から、友人から、会社の重要事項を耳に挟む可能性はあります。その情報管理を注意するのと、ばれないだろうとこっそり取引するのは決して行わないでください。お金儲けの誘惑に負けず、犯罪であることを忘れないようにしましょう。
 
また、管理体制に不備がある会社はインサイダー取引を誘引します。一人ひとりが仕事とプライベートの線引きをしっかりし、インサイダー取引が起きにくい環境を作っていくことも必要なのではないでしょうか。
 
 
Text:小泉 大輔(こいずみ だいすけ)
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役 / 公認会計士・税理士 

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