更新日: 2021.07.02 その他暮らし

二世帯住宅は住居費を抑えることだけで選ぶと失敗する?

二世帯住宅は住居費を抑えることだけで選ぶと失敗する?
1つの建物に親世帯と子世帯が共同で暮らす二世帯住宅は、土地や設備の共有、補助金の受給などで、子世帯が単独で家を建てるよりも住居費が抑えられます。
 
人生の3大支出は住居費、教育費、リタイア後の費用。住居費を抑えられる二世帯住宅を選べば、よりよく暮らせるのでしょうか?
正田きよ子

執筆者:正田きよ子(まさだ きよこ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者

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建て方を選ぶ

二世帯住宅は親世帯、子世帯の共有する範囲の違いで、「完全同居」「部分共有」「完全分離」の3パターンの建て方があります。家の建築費用は、同じ広さであれば設備の数が多いほど高くなるため、共有する範囲が多いほど費用が抑えられます。
 

■生活空間のすべてを共有する「完全同居」タイプ

キッチンやお風呂などすべての設備を共有するため、建築費が抑えられ、光熱費も節約できます。子世帯は、親世帯からの家事、子育ての協力が得られやすく、より安心です。親世帯は、老夫婦2人(もしくは1人)での生活よりも子世帯や孫と一緒に暮らすことで、防犯上や具合の悪いときに安心であるとともに、にぎやかでハリのある生活が送れます。
 
ただし、お互い頼りすぎ、協力しすぎには注意が必要です。
 
子世帯が共働きであると、食事の用意や孫の世話と親世帯に家事、子育てを頼ることが多くなりがちです。親世帯は無料の家政婦、シッターさんではありません。子世帯は、平日の夕食は親世帯にお願いして、休日は自分たちが作るなど、家事の積極的な分担と協力に心がけたいものです。
 
また、親世帯が家事、子育てを協力しすぎたり、親世帯の価値観を子世帯に求めすぎたりするとお節介、過干渉と角が立ちます。世代が違えば生活スタイル、考え方の違いがあることを理解し、同居でも適度な距離感を持つことが大切です。
 

■生活空間の一部を共有する「部分共有」タイプ

玄関、キッチン、リビング、浴室などの設備を一部共有します。共有が多いほど建築費を抑えられますが、親世帯、子世帯それぞれの生活スタイルにあわせた生活を送りにくくなります。
 
逆に分離を多くすると、それぞれの生活スタイルにあわせた生活を送りやすくなりますが、限られた空間を分離して2つ作るため、例えばリビングが手狭になってしまうなどということも。
 

■すべての空間を分離した「完全分離」タイプ

建築費は高くなりますが、親世帯、子世帯それぞれの生活スタイルで独立して暮らすことができます。独立して自由な暮らしができる反面、二世帯が1つ屋根の下に暮らしていてもほぼ接触しない状態になることも。
 
親世帯より、子世帯の生活音がうるさくて眠れないといった不満を耳にすることもあります。外出するときはひと声かける、二世帯一緒に食事をする日を設けるなど、何かあったときに協力しあえるほどよい関係性を保つ努力が必要です。
 

補助金の活用

国や地方自治体では、二世帯住宅の取得にも利用できる補助金を用意しています。補助金は直接個人が受け取れず、業者を通して申請し間接的に受け取るものだったり、構造や性能に条件があったりと難解です。住宅を建てる前に最新情報を調べる、あらかじめ業者に相談するなどをして準備をしましょう。
 

■地域型住宅グリーン化事業

木造住宅を新築する人、新築木造住宅を購入する人、木造住宅を省エネ改修(リフォーム)する人向け。構造が木造であることが必須です。認定された「中小住宅生産者」が申請手続きを行います。
 

■自治体別三世代同居・近居支援事業

地域ごとに設定されていて、定住を促進するもの。申請は個人で行います。
 

■長期優良住宅化リフォーム推進事業

リフォームする人、中古住宅を購入してリフォームする人向け。住宅の性能を高めるためのリフォーム工事が対象です。リフォーム業者が申請します。
 

■すまい給付金

消費税率の引き上げによる負担を軽減するため現金を給付する制度。年収制限があり、年収によってもらえる補助金の金額が変わります。給付申請書を作成し、確認書類を添付して個人で申請します。
 

二世帯住宅で失敗しないために

二世帯住宅は住居費を抑えられるだけではなく、親世帯、子世帯が協力しあえるところにも良さがあります。よりよい協力関係を保つには、お互いのプライバシーに配慮しながら気遣うことも必要です。住居費の負担とバランスを取りつつ、どこを共有、分離するかをよく話し合い、二世帯住宅を建てましょう。
 
二世帯住宅ではなく、近くに住む、同じ敷地に家を建てるといった近居という選択肢もあります。親世帯、子世帯がこれからよりよく暮らすにはどういった住まいの形が良いのか? 二世帯住宅で失敗しないためには、お金(住居費)の面だけではなく、よく考えて決めたいものです。
 
執筆者:正田きよ子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者

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