更新日: 2021.09.20 子育て

児童養護施設の子どもたちの大学等進学で活用したい支援制度

児童養護施設の子どもたちの大学等進学で活用したい支援制度
児童養護施設の子どもたちが大学等進学希望する場合、の経済的な負担を軽減する制度を紹介します。これら制度を活用すれば、児童養護施設の子どもたちも学ぶ意欲があれば大学等進学を諦める必要はありません。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

大学進学率の現状

高校卒業後、専門学校や大学などに進学する児童養護施設の子どもたちは多くありません。
 
厚生労働省「社会的養護の推進に向けて(令和3年5月)」を見ると、令和元年度末に高等学校を卒業した児童1752人のうち、令和2年5月1日現在の進路は、大学等進学17.8%、専門学校等進学15.3%となっています。
 
これは全高卒者112万6000人の大学等進学52.7%、専門学校等進学21.5%に比べると低くなっています。
 
一般に、児童養護施設の子どもたちは18歳になると退所しなければなりません。住居の確保、学費、生活費について自分で賄う必要がありますので高校卒業後進学せず、就職せざるを得ないのでしょう。
 

退所後の支援制度

高校卒業後大学等に進学を目指す児童養護施設の子どもたちが活用したい制度の中から、国の「高等教育の修学支援新制度」と東京都の「自立スタート支援事業貸付」「児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業貸付」について紹介します。
 
他の自治体でも同様の支援事業があると思いますので、社会福祉協議会に相談してみましょう。
 

■高等教育の修学支援新制度

2020年度にスタートした制度です。給付奨学金と大学等の入学金・授業料の減免がセットになったものです。高校3年生の春に高校で予約申し込みできます。対象は「住民税非課税世帯およびそれに準じる世帯」です。収入基準のほか、資産基準や学力基準も満たす必要があります。
 
学力基準は、高校等における全履修科目の評定平均値が5段階評価で3.5以上、あるいは3.5未満でも高校等の面談やレポートにより学修意欲の確認がとれればよいことになっています。児童養護施設の子どもたちは、これらの条件を満たす可能性が高いでしょう。
 
給付額(返済不要)は、児童養護施設の子どもたちでは、児童養護施設等から国公立の学校へ自宅通学する場合は月額3万3300円、自宅外通学する場合は月額6万6700円です。私立の学校へ自宅通学する場合は月額4万2500円、自宅外通学の場合は7万5800円です。
 
入学金・授業料減免に関しては、大学の場合、国公立の入学金は28万2000円、授業料は53万5800円減免になります。私立大学に通う場合は入学金26万円、授業料は70万円減免されます。
 
専門学校の場合は、国公立の入学金は7万円、授業料は16万6800円減免になります。私立大学に通う場合は入学金16万円、授業料は59万円減免されます。給付や減免を受けられるのは進学後ですので注意しましょう。合格時に支払う入学金等には間に合いません。
 
なお、この制度が利用できるのは、令和3年4月9日現在、大学・短大は98%、高専は100%、専門学校は73%の学校ですので注意してください。
 

■自立生活スタート支援事業貸付制度(東京)

児童養護施設等の利用者の退所後の自立生活の支援を行うことを目的に、東京都社会福祉協議会が施設等と連携して相談援助を行うとともに必要な資金の貸し付けを無利子で行うものです。
 
進学に関連した貸付金には、「就学支度資金(50万円以内))があります。学校を卒業した場合、申請により全額免除になります。高等教育の修学支援新制度は進学後に利用できます。進学前に支払う入学金等には利用できないので「就学支度金」が活用できます。
 

■児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業(東京)

進学に関連した貸付金(無利子)には、大学等に在学している方を対象に、「生活支援費(月額5万円以内)」「家賃支援費(月額4万900円~5万3700円)」「資格取得費(25万円以内)」があります。
 
大学等卒業後1年以内に就職し、5年間(資格取得費は2年間)業務に従事した場合、返済免除になります。
 

その他の支援制度

進学のお金についての支援のほかにも、さまざまな支援制度があります。いくつか紹介しましょう。詳細は、厚生労働省「社会的養護の推進に向けて(令和3年5月)」をご参照ください。
 

■児童養護施設での措置延長

現在、児童養護施設で過ごせる年齢は原則18歳までとなっていますが、引き続き必要と判断された場合(例えば、大学等に進学したが生活が不安定で継続的な養育が必要とされる場合)、20歳未満まで措置延長できるとされています。
 

■身元保証人確保対策支援事業

児童養護施設等を退所後、自立に向けてアパートの賃貸や就職する際に保証人が必要になってくる場面があります。そこで、施設長等が保証人になる場合の損害保険契約の保険料が補助されます。大学等入学の保証限度は200万円で補助単位は1人1万560円となっています。
 

■施設入所児童大学等進学支援事業

福岡県では、大学等進学にかかる受験料および入学金を、30万円を上限に支給する事業を実施しています。
 
出典
【令和3年4月1日発送】令和3年度の国民年金保険料納付書をお送りします
文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
文部科学省「支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧
東京都社会福祉協議会「児童養護施設退所者等への自立生活支援」
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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