更新日: 2019.03.12 その他暮らし
経済的と言われるディーゼルエンジン。ガソリンエンジンとの違いは何?
目次
エンジンは大きくガソリンエンジンとディーゼルエンジンに分けられる
ガソリンエンジンの基本的な動きは、アクセルペダルでスロットルバルブを開くことで、空気をエンジン内に取り入れ、その途中で空気にガソリンを混ぜて混合気を作り、エンジン内部のピストンで圧縮したところにスパークプラグで着火させるというものです。スパークプラグで着火した混合気の膨張力によって動きます。
対するディーゼルエンジンは、エンジン内部に入ってきた空気をピストンで圧縮したところに、アクセルペダルで燃料(軽油)を噴射することによって着火し、その燃焼による膨張力で動きます。ガソリンエンジンがアクセルペダルで吸気をコントロールするのに対して、ディーゼルエンジンはスロットルバルブがなく、アクセルペダルは燃料の調整のためのものです。ちなみにガソリンエンジンはスロットルバルブがあるために、アクセルを全開にしない限りは、エンジンが吸気するときの抵抗(ポンピングロス)が発生します。ディーゼルエンジンはこれが少ないのも好燃費となる一因です。
ガソリンエンジンはスパークプラグで着火するが、ディーゼルエンジンは自然着火
ディーゼルエンジンにはスパークプラグもありません。これは燃料の軽油がガソリンに比べて着火点が低いという性質を利用して、自然着火させているからです(エンジン始動時だけはグロープラグという始動用のプラグを使います)。ただ、いくら軽油の着火点が低いといっても、火を使わず燃料を噴射しただけで着火するためには、圧縮する空気をガソリンエンジンに比べるとかなり高温にしなければなりません。空気は体積を小さくすれば高温になりますから、エンジンの内部のピストンで空気を強く圧縮します。
この圧縮比はガソリンエンジンの倍近くなります。そこまで圧縮して高温になった空気に燃料を噴射してはじめて着火できるわけです。高圧縮のため燃焼力(膨張力)が強くなり騒音も増えますし、それに耐えるためにエンジンには頑丈さが求められます。そのためガソリンエンジンにくらべてエンジン重量も重くなるというのがデメリットですが、この辺は後述するマツダの技術などで改善されています。
ディーゼルエンジンのデメリットを消すために多くの技術が開発されてきた
もうひとつの問題が排ガスです。ディーゼルエンジンは、燃費が良い(=使用する化石燃料が少ない)のでCO2(二酸化炭素)の排出は少ないのですが、燃料と空気の混合が難しいために不完全燃焼をするとPM(粒子状物質、スス)が発生しやすく、逆に完全燃焼をするとNOx(窒素酸化物)の濃度が高くなり、光化学スモッグの原因となります。PMを抑えようとするとNOxが、NOxを抑えようとするとPMが発生するというトレードオフの状態でもあり、なかなか解決が難しい問題です。それに対応するために、コモンレールと呼ばれる装置に一時燃料をためておいて、コンピューター制御で細かく燃料噴射することで燃焼状態を理想に近づけ排ガスの発生を抑えるなどの改良がおこなわれてきました。これはディーゼルエンジンの普及の大きな一歩となりました。
<マツダの技術>
また、マツダでは、圧縮比をぎりぎりまで低くすることで、空気とガソリンをよく混合する機会をつくってやることによってPMを減らす方法をとっています。こうすると、燃料噴射だけでの着火が難しくなる面はあるのですが、着火できる下限を狙ったところがミソと言えるでしょう。圧縮比が低くて済むということは、エンジンパーツ自体の強度も従来ほど強くなくていいということになりますから、エンジン自体が軽量にできるというメリットも生まれます。
<その他の技術>
その他にも排気ガス規制に対応する技術を開発されています。DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)は、黒煙やススとなるPMを吸着させるフィルターで、PMを吸着処理して排ガスをクリーンにします。NOxに関しては、NOx急増還元触媒という装置を使って対処するとともに尿素SCRというNOxと尿素を反応させて排ガスの浄化ができる装置も開発されています。プジョーやシトロエンなどの「Blue HDi」もこうした技術を総合的に用いて、クリーンディーゼルとしています。
ガソリンを作ると軽油もできてしまう。それを効率的に使うというエコロジー的発想
現在は、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)などが普及しはじめており、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンという旧来のエンジンを使用したクルマは、消えていく方向というという認識になっているように見えます。もちろん、大局的にはそうなのかもしれませんが、現実的にはしばらくは共存の時代が続くでしょう。とくにガソリンエンジン車が走り続けているということは、化石燃料をガソリンにする精製段階でディーゼルエンジンの燃料となる軽油も精製されます。それを効率的に国内で消費するというのもまたエコロジーという考え方もできるでしょう。