奨学金破産、どこに相談したらいい?
配信日: 2018.03.19 更新日: 2019.05.17
自己破産は自分でもできますが、弁護士などの専門家に頼むのが現実的です。そんなときは「法テラス」を活用しましょう。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
奨学金を延滞し続けるとどうなるか
「返還期限の猶予」や「減額返還制度」などの手続きをせず、3カ月延滞すると個人信用情報機関に延滞情報が登録(いわゆるブラックリスト化)されます。
4カ月目からは、債権回収会社に回収が委託されます。9カ月を過ぎると、裁判所から「支払督促申立書」が届きます。
また、返還未済額等の一括請求がされます。最終的には給料の差し押さえなどの法的措置がとられます。分割返還が難しい場合、最後に残された選択肢の1つが自己破産です。
延滞すると「返還期限の猶予」などの利用が難しくなりますので、返還が難しいと感じたら、延滞する前に早めに日本学生支援機構に相談しましょう。
自己破産の相談は法テラスへ
自己破産は、「法テラス」に相談しましょう。法テラスの正式名称は、日本司法支援センターといいます。
法テラスは“全国どこでも法的トラブルを解決するための情報やサービスを受けられる社会の実現”という理念の下に、国民向けの法的支援を行う中心的な機関として設立された公的な機関です。
経済的に余裕のない人を対象に、無料の法律相談や弁護士費用の立て替えを行っています。立替えられた費用は、分割して返済します。
法テラスを利用するための条件
法テラスを利用するには、(1)資力が一定額以下であること、(2)勝訴の見込みがないとはいえないこと、(3)民事法律扶助の趣旨に合致すること、が必要です。
無料相談では、(1)および(2)を満たす必要があります。無料相談の結果、弁護士・司法書士費用等の立て替え制度(代理援助・書類作成援助)の利用を希望する場合、審査では(1)~(3)の条件をすべて満たす必要があります。
それぞれの条件について詳しく見てみましょう。
(1)資力が一定額以下であること
夫婦間の紛争を除き、原則として本人と配偶者の収入・資産を合算した金額で判断されます。なお、医療費、教育費などの支出がある場合は、相当額が控除されます。
・収入基準
収入(賞与を含む手取り年収の12分の1)が一定額以下であることが必要です。収入の目安は以下のとおりです。
単身者:182,000円(200,200円)以下
2人家族:251,000円(276,100円)以下
3人家族:272,000円(299,200円)以下
3人家族:299,000円(328,900円)以下
※( )内の金額は東京・大阪などの大都市の場合です。
※家賃・住宅ローンなどを負担している場合には、以下の限度額の範囲内で、その金額が上記収入基準額に加算されます。単身者41,000円、2人家族53,000円、3人家族66,000円、4人家族71,000円。
・資産基準
保有する資産が一定額以下であることが必要です。資産は相談援助の場合は現金・預金の合計額ですが、代理援助・書類作成援助の場合は不動産(自宅や係争物件を除く)・有価証券なども資産に含めます。資産の目安は以下のとおりです。
単身者:180万円以下
2人家族:250万円以下
3人家族:270万円以下
3人家族:300万円以下
(2)勝訴の見込みがないとはいえないこと
和解、調停、示談成立などによる紛争解決の見込みがあるもの、自己破産の免責見込があるものなども含みます。
(3)民事法律扶助の趣旨に合致すること
報復的感情を満たすだけや宣伝のためといった場合、または、権利濫用的な訴訟の場合などは援助できません。
法テラスを利用した場合の弁護士費用
弁護士費用には、着手金、実費、報酬があります。着手金は事件依頼時に支払う弁護士への手数料です。実費は、交通費、通信費、コピー代など弁護士が実際の事務処理に必要な費用です。報酬は成功報酬金です。
例えば、奨学金などのほかにヤミ金業者からも借り入れてしまい、法外な金利を支払っている場合、回収した過払い金があるとき、報酬は入手した額の15%~20%となります(上限額あり)。過払い金がなければ報酬はありません。
法テラスで無料相談を受けた結果、弁護士に依頼する場合、債権者10社までの自己破産を申し立てるケースでは、平成29年度標準額(税込)は、着手金129,600円、実費23,000円となっています。奨学金に関しては、報酬は必要ありません。
費用は法テラスが本人に代わって弁護士に支払い、本人は原則として法テラスに毎月10,000円ずつ、もしくは5,000円ずつと分割して支払うことになります(無利息)。
※以上は法テラスのホームページを参考にしました。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。