ウクライナショックで木材価格が高騰 今住宅を建てても大丈夫ですか?
配信日: 2022.05.25
このような木材価格の高騰は「ウッドショック」と呼ばれています。この記事では、ウッドショックの原因と、現在の状況、さらに、いま注文住宅を建てるべきかどうか考えてみましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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ウクライナショックによる第2次ウッドショックの懸念
最初のウッドショックは、2021年春に起きました。住宅建設に多用されるスギ乾燥材価格が、2021年3月には6万円台だったものが、その年の8月にはほぼ2倍の13万円台になったのです。
そして、2022年の2月の段階でも13万円台を維持しています。この価格急騰の原因としては、米国でのコロナ禍の落ち着きによる需要回復で住宅着工戸数が増加したことや、輸送用コンテナの不足が指摘されています。結果として、輸入材料の調達量が減ったために、第1次ウッドショックといわれる価格急騰を招いたのです。
この状況が沈静化しないまま、第2次ウッドショックの懸念が高まっています。2022年2月末のロシアによる「ウクライナショック」と呼ばれるウクライナ侵攻に対して西欧諸国は経済制裁を行っています。
その流れに歩調を合わせたPEFCやFSCという国際的森林認証機関が、ロシア産とベラルーシ産の木材に対しての認証を停止しました。これ以降、両国の木材は「紛争木材」という扱いになり、それを原料としていた木材製品の製造・加工・流通が止まっているのです。
一方、ロシア政府は日本を含む「非友好国」に対し、この動きに対する報復措置を取りました。チップや粗木材など一部の木材の輸出を停止したのです。そもそも、世界の2割の森林がロシアにあるため、その輸出が規制されると、需給が逼迫して価格が高騰していきます。
特に、日本向けの木材は品質チェックが厳しいため、諸外国に買い負けることが予想されているのです。そうなると、国内の需給バランスがさらに崩れて、価格が上がることになります。
住宅価格への影響は?
ロシア産の木材は品質が高いとされ、近年、住宅に使う木質材料のかなりの割合を占めていました。今後はその入手が不透明なため、国産の代替材料に置き換えが進むといわれています。ただし、木材の調達がうまくいっても、その他の材料も高騰してきています。
例えば、住宅設備材料のアルミなども、円安とロシアからの供給量低下により価格が上がっているのです。そして、このような材料費に加えて建設費自体も10%ほど上昇すると指摘する専門家もいます。
一方で、新築住宅購買層の所得が伸びているわけではなく、市場金利も上昇傾向にあるのです。そうなると、この状況で価格を上げると売れなくなる可能性が高くなります。大手住宅メーカーなどでは自らの利益を低く抑えて、価格が据え置かれるのではないかと見る専門家もいるようです。
経済的余裕があれば早めに建てたほうがよい
結論から言えば、どれだけの資金力があるかによって、決断が分かれると考えられます。十分な経済的余裕があれば、国内にある木材やその他の素材の在庫分を割高な価格で買い取れば、住宅建設は可能でしょう。
一方で、なるべくコストを抑えたいのであれば、様子を見た方がいいかもしれません。ただし、ウクライナ問題も含めて今後の情勢は不安定なので、将来的に安く住宅が建てられるようになる保証はありません。
出典
農林水産省「木材価格統計調査」
朝日新聞2022年04月19日朝刊 ロシア・ウッド・ショック木材高騰、住宅値上がりの影
日経アーキテクチュア 2022/04/14号 高騰のカラクリ木材終わらないウッドショック長期化の理由を供給網でひもとく
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部